第18話 暗殺者の風評被害
「ちょいちょいちょいちょい!」
背後から声が近付いてきたと思ったら、がしっと腕を掴まれた。
「え?」
引っ張られるままに振り向くと、ハルトだった。
「おお。ハルト、おはよう」
そのまま半ば強引に連れ去られ、遠巻きに様子を見ていた冒険者たちの壁の向こう側まで来る。
ハルトは周囲を気にしながら、俺に向き直った。
「おはようじゃねーよ……
ユーヤ、本気か?」
「何が?」
ハルトはちら、とカイラの方を見てから、声を落とす。
「あれ、ポートリースじゃ有名な地雷女だぞ。
俺は組んだことないけど、
『ずっと毒づいてて嫌になる』とか、
『急に止まってぶつぶつ言い出したり、倒した魔物を笑いながら斬り続けたりで、連携にならない』とかで、
みんな組みたがらない」
思わず振り返る。
テーブルでは、身を乗り出して目を見開くカイラに、リナが引きつった笑顔を向けていた。
「そ、そうなのか……まぁ確かに一癖ありそうだけど」
「これからタンクとヒーラー探すんだろ?
でも、多分断られるぞ」
「……そっかぁ」
まぁ、聞くだけ聞いてみるさ。
「恨まれない追放理由、考えといたほうがいいぜ」
「今からそんなこと……」
「……ま、そういうタイプじゃない、か」
呆れるハルト。
軽く手を振って別れ、俺はいつも通り、臨時で入ってくれそうな冒険者に声をかけていく。
「すみません、今日一緒にどうですか?」
「今日はちょっと」
「悪いが、遠慮する」
「……カイラを入れたのか?!
……他を当たってくれ」
などなど、中にははっきり名が出る人もいた。
「ハルトの言う通り、か」
一通り当たってから、テーブルへ戻った。
「どうも、今日はみんな、都合が悪いみたいだ」
できるだけ何でもない調子で言う。
カイラは猫背のまま、ギルドの中を睨み回していた。
「誤魔化さなくていいわよ。
あたしを入れたからでしょ」
「そ、そういう人もいたにはいた、けど」
ぎり、と歯ぎしりの音がした。
うっ、ぞわっとする。
「……夜のうちに、あいつら全員の靴を片方盗むって依頼を出したら、あなたたちは請けてくれるかしら」
「た、多分、受理されないと思うけど……」
カイラは周りを睨んだまま、指の間にダガーをとん、とん、と刺し始めた。
……見ていて怖い。
そこで、リナが一歩前に出る。
「ユーヤ、さっき聞いたんだけど、カイラも私と同じBランクなの。
実戦経験は申し分ないはず」
「おお、それは心強いね」
となると……色々とあったんだろうなぁ。
「だから、Dランクくらいまでなら三人でも大丈夫だと思うわ。
FとかEの依頼から、馴らしていきましょ」
「おっけー。じゃあ、そこから始めようか」
決めると、カイラがガタっと立ち上がった。
そして、どこか呆けたような笑みを浮かべる。
「三人でキャッキャウフフするのね……
悪い男だわ……フフフ……」
「え、あぁ……まぁ、楽しくやろうね……はは」
リナと顔を見合わせて、苦笑い。
何はともあれ。
カイラの加入は、笑いと共に始まった。




