第17話 そういう感じでいくの?
その日も、リナと二人で依頼を請けにギルドへ入った。
扉を開けた瞬間、なんとなく空気が偏っているのが分かる。
冒険者たちが、ある一角から距離を置いている。
そこに、ぽつんと一人。
テーブルに着く女性。
暗色のボディスーツ。
長い黒髪。
妖艶……というより、近寄りがたい。
目が合った。
……見てなかったふりをした。
いや、知らない人を避けるのも変だな。
普通に隣を通ろうとした、その時。
「年頃の男と女……」
独り言が、急に飛んできた。
ぎょっとする。
「ギルドにデートでもしにきたのかしら。
いいわねぇ。羨ましいわ。
羨ましい。
妬ましい。
恨めしいわ……」
語彙が、どんどん強くなっていく。
なにこの人。
「わ、私たちはパーティを組んでるだけよ」
あ、リナ反応しちゃ……
「パーティを組んでる!
……そう、冒険者なのね。
でもおかしいわ。私も冒険者なのよ。
なのに、あなたたちはキャッキャウフフと冒険者同士で乳繰り合って、私はぼろ雑巾みたいに、食べ終わった骨みたいに、獣の皮から削いだ脂カスみたいに捨てられて、今はひとり。
……なんでこんなに違うのかしら」
語彙の暴力。
そして、キマった眼でテーブルの一点を見ている。
……まばたき、してくれ。
横でリナが、そっと俺の袖をつまむ。
確かに。
俺たちも、追い出された側だ。
完全に他人事でもない。
一瞥して遠ざけるのは、気持ちよくないな。
「パーティを組んでいたってことだよね。
何があったのか聞いても?」
声をかけると、彼女がぐいっと身を乗り出してきた。
近い。
思わずのけ反る。
「別に何もないわ。
私みたいな暗い女を好きな人なんて、この世にいないのよ。
みんな、『明るく前を向いて』が好きなんでしょ。
……全員、右側半分ハゲればいいのに」
恨みつらみが正直。
エグいキャラだな。
リナに袖を引かれ、少し離れる。
「……彼女、誘ってみない?」
「え?!
えー……」
確かに同情はできる。
でも。
「一回、組んでみる、っていう形で、『やっぱり、なし』はもっと刺さるよ……?」
「あ、そうか……」
リナの表情が沈む。
……この優しさは、否定したくないな。
「俺は構わないよ。誘ってみよう」
「…うんっ」
彼女の元へ戻る。
「あんまり高いランクを目指してるわけじゃないんだけど、
それでも良ければ、俺たちと組まないか?」
彼女はスン、とした表情に戻る。
「あなた……変わり者ね。
いえ、変態ね。
イカレ野郎ね」
そこまで言う?!
「私はカイラ。
捨てたら、
その首を薄切りにして、
ピザみたいに伸ばして焼いて、
遠くに投げて遊んでやるわ」
発想が怖い!!
……でも。
本気でそんなこと思ってる感じは、しない。
ただ、言葉の選び方が極端なだけだ。
コミュニケーションが下手な人だっている。
俺だって、上手いほうじゃない。
リナも、抱えてるものがある。
それぞれ事情があって、ここにいる。
「まあ、捨てる予定はないよ」
カイラは、少しだけ目を細めた。
笑ったのかどうかは分からない。
でも。
寄り合っていけば、いい。
それでいいじゃないか。
「そういえば」
後ろからリナが顔を出す。
「カイラのジョブはなに?」
すると、カイラは二本のダガーを抜いてみせた。
「暗殺者よ」
薄く笑う。
……似合い過ぎ。




