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第16話 こういう感じでいこうか

第2章 調和

 森の中のキャンプ地は静かで、虫の声やフクロウの鳴き声だけが届いている。


 焚き火の上で鍋をかき混ぜる。

 最後に塩をひとつまみ。少しだけ胡椒。


 味を見る。


 ……悪くない。


「ロウエンさんが空いていて助かりました」


 鍋をかき混ぜながら声をかける。


「いや、護衛依頼が無い時に、仕事があるのは助かる」


 焚き火の向こう側で、ロウエンが短く答える。


「フィルナさんも、今日はありがとうございました」


「いえ。


臨時パーティというのは少し緊張しましたが、

終わってみると随分とあっさりで、ほっとしてます」


 穏やかな声。

 緊張していたようには見えなかったけど。


 シチューを皿に盛る。


 ロウエンが手を伸ばす。

「俺が」

 それだけ言って、席を立つ。


 代わりに鍋の前に戻ってきたのはハルトだ。


「いい匂いだー。


ユーヤのシチュー、美味いんだよなぁ」


 屈託がない。


「まだ味見してないだろ」


「外れたことないからな。自慢したっていい」


 ……胸の中でこっそりしておくよ。


 自分の皿を持って立ち上がる。

「じゃあ、俺も交代してきますね」

 リナのほうへ向かう。


 背後から、二人の会話が聞こえる。


「軽装騎士さんと、魔法剣士さんが前線で立ち回るのは、なんだか華やかですね」

 フィルナの声。


「でしょー?

魔法剣はロマンの塊……


あ、いや治癒術師のフォローあってこそ、ですよ」


「ふふっ」


 楽しそうだ。


 

 見張りに立っているリナの背中が見える。

 チラチラと、こちらを伺っているのが分かった。


「お待たせ」


「いい匂いー!

じゃ、よろしくね!」


 鍋のほうへ向かおうとする足音が、ぴたと止まる。

 振り向くと、リナは機嫌が良さそうだ。


「どうしたの?」


「私、理由もなく、焦ってたみたい」


 夜の森に、静かな声が落ちる。


「高ランクじゃなくても、日々、依頼は出るし、町の役に立てる。


上を目指す必要なんて、無かったのかも」


「そっか」

 俺は頷くだけだった。


「それに、ユーヤといると、やっぱり調子いい。


もしかしたら、他の人も……そうかも」


「それは……たまたまじゃ」

 つい、口に出る。


「自分やお互いを責め合うような空気が全然ない。


不思議」


 答えのないことを、二人で空に見つめる。

 星は、よく見える。


 そのとき、ふと我に返る。


「鍋、煮えちゃうよ」


「そ、そうだね!

お腹すいたー!」

 リナは慌てて鍋のほうへ戻る。


 ……そしてまた、一瞬だけ足を止める。


「今の感じ、楽しいね♪」


 

 キャンプを背に、辺りを見渡す。


 背中からは三人の笑い声。

 時折差し込まれる息。

 きっと、リナがシチューをふーふーと冷ましている。


 俺も、ひと口。


 温かい。


「うん、今日も悪くない」


 それだけで、十分な気がした。

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