8、秋元未来の才能
俺は家に帰って来た。
途中で出逢った美弥の友人の秋元未来さんと一緒に、だ。
秋元さんは控えめな笑みを浮かべながら周りを見渡していた。
美弥は秋元さんを見ながらニコニコしていた。
因みに母さんは仕事に戻った。
「秋元さん。せっかくだから何かしないか?」
「あ、そうですね。なら私は絵が描きたいです」
「そっか!未来ちゃんはそういうのが好きだしね。どんな絵を描こうか」
俺達はそんな会話をワイワイする。
すると秋元さんが俺に向いてから柔和に笑みを浮かべてきた。
優しげな笑みにドキッとする。
「お兄さん」
「な、なんだ?」
「私、お兄さんにとっても興味があります」
「え?」
その言葉に困惑する。
美弥も「は?」と目を丸くした。
興味って!?
俺は汗を流しながら秋元さんを見る。
「一生懸命なその感じに。優しそうな感じが気になります」
「そ、そうなんだね」
「そうです」
秋元さんは微笑む。
すると美弥が思いっきり俺を頬を膨らませて見てきた。
な、なんだ。
俺は顔を引き攣らせた。
すると美弥は「お兄ちゃんの馬鹿」とだけ言ってから眉を顰めた。
何だってんだよ。
「美弥ちゃんも嫉妬しているんだね」
「嫉妬じゃないもん」
「絶対嘘。アハハ」
その言葉に美弥は「ふん」と言ってからそっぽを向いた。
美弥の癖は変わらない。
相変わらず、だな。
そう考えながら俺は苦笑いを浮かべた。
「そういや絵を描くって言ったけどそんなに絵が上手いのか?秋元さんは」
「そうだよ。一応コンクールで金賞取ったしね」
「え?マジかよ」
「小学生コンクールです」
秋元さんが優しく言う。
俺は試しに幼い頃に使用していた画用紙、色鉛筆、鉛筆などを用意した。
それから秋元さんは「じゃあお兄さんの似顔絵でも今から描きましょうか」と言う……いやそれは。
美弥の視線が痛いから。
「クス。冗談です。じゃあ適当に猫とか」
「そ、そうだな。そういうのを描いてくれ」
俺は試しにスマホのネットで猫の画像を調べて出してみた。
すると秋元さんは「分かりました」と言って下書きをし始めた。
俺は「す、すげぇ」と言いながら秋元さんを見る。
本格的なぼかし、下書きなどなど。
それらを活用して描いている。
「一応、お試しに描いた感じです」
その猫の絵は本格的な猫の絵だった。
表情からして今にも動き出しそうな感じの絵だ。
油絵とかにしたらヤバそうだ。
俺は愕然としながら観る。
すると美弥が「上手いね」と言ってから秋元さんを見る。
いや上手いとかそういう次元ではない。
「どうしてこんなに絵が?」
「父と母の英才教育です」
「ああ、成程な。そういうのか」
「……そうですね」
何だか秋元さんの様子からしてあまり嬉しそうではない感じだ。
寧ろ困った様な感じである。
俺は一呼吸置いてから「秋元さん」と言う。
秋元さんは俺をゆっくり見てきた。
それから「はい」と言う。
俺は言葉を考えてから率直に伝えた。
「この家では何も考えなくて良い」
「え?」
「この家では何も考えなくて良いよ。君は君らしく居たら良いんだ。これも母さんの言葉を丸パクリしているだけだけどね」
「お兄さん……」
「俺は君の才能は素晴らしいと思った」
その言葉に秋元さんは頷いてから涙を滲ませる。
それから「実は両親に認められないんです」と告白してきた。
俺は深刻な言葉に「そうなんだね」と言う。
傾聴をすると秋元さんは「テストで90点取っても褒められません。100点じゃないからって。疲れたんでしょうね。私」と言う。
「そうだったんだね。未来ちゃん」
「そうだよ。私の家は成績が全てだから」
「……」
俺は考える。
それからあの事を思い出した。
水難事故で亡くなったじいやが言っていた言葉を。
「お前はお前らしく育ちなさい。偉大なやり方なんて分からない。だけどこの世の全ての人がワシは偉大と思っているからな」と。
俺はそんなじいやが好きだったんだが。
漁師船が転覆して死んでしまった。
俺は目を閉じてから開ける。
「……未来」
「え?」
「俺はお前の才能は凄いと思っている」
その言葉に俺を見る未来。
集中力も人並みではないしこんな真似は培って出来るものではない。
そう思いながら俺は未来を見た。
真剣な眼差しで、だ。
「俺はお前の才能は凄いと思っている。だから誇って良いんだ」
未来は「!」となってから涙を浮かべる。
それから泣き始めた。
俺はその未来の頭を撫でて良いものかどうか分からなかったが。
撫でてしまった。
☆
未来から話をあれこれ聞いた。
幼い頃からの英才教育。
それに失敗しての普通の小学校という話を。
それで美弥と一緒の学校なのか。
そう思いながら俺は話を聞いていた。
「未来は凄いな」
「そうですね」
でもその。
凄いのは良いけど懐き過ぎだと思う。
何故なら胡坐で座っている俺の下に丁度、未来が収まっている。
つまり俺の中で体操座りをしている。
これはどういうこった。
「未来ちゃん!」
「良いじゃない。美弥ちゃん。だって散々甘えてきたんでしょ?」
「めっ!そ・こ・は私の居場所なの!」
「私にとっても居場所だから」
とんでもない事で喧嘩するな。
俺が狼だったらどうする気だよ。
もし俺が狼で赤ずきんちゃんのお前らを食べてしまう様なさ。
そんな事を考えながら「未来さん。取りあえず退いてもらえますか。足が」と言う。
すると「あ、すいません」と未来は潔く退いた。
それから何を思ったか俺の横に腰かけて俺に寄り添ってきた。
それはまるでカップルの……いやいや。
年の差があったとしてもありえない。
「未来ちゃんぅ!じゃあ私が反対に来る!」
「お前ら!ちょっと落ち着け!女子小学生だぞ!俺は思春期の男子なんだぞ!」
「え?関係あります?」
「あるわ!」
男子高校生に優しくする女児!?
変態の極みか!
そう考えながら俺達は。
というか俺は苦笑いできゃいきゃいはしゃいだ。




