16、唯華の決意
それから俺達は車から降りる。
そして俺は唯華と一緒に歩いてから秘密の場所に来た。
この場所は本当に俺しか知らない。
「唯華」
「何?お兄」
「ここから実は町が一望出来るんだ」
その言葉に唯華が前に歩み出す。
そして眼前に広がる景色に見開く唯華。
そこには100万ドルの夜景の景色みたいにはいかないが素晴らしい煌びやかな世界が広がっていた。
唯華が「凄い」と言いながら絶句している。
俺は「俺とお前しか知らない景色だ」と告げる。
唯華は「え」となる。
「悩んでいる事が多かったからさ。たまには気晴らしでな」
「この場所にお兄は来た事があるの?」
「じいやとばあやに連れてこられてな」
「そうだったんだね」
そんな話をしながら唯華は髪の毛を抑えながら眼前の景色を見る。
まさに美しい景色だった。
唯華は赤面する。
「じゃ、じゃあ美弥ちゃんも未来ちゃんも知らないの?」
「そうだ。俺達しか知らない」
「そうなんだ。えへへ」
唯華は独占したい様な感じを見せながら俺に笑みを浮かべる。
俺は「良い景色だな」と言う。
その言葉に唯華は「うん。美しい」と言ってから眼前の景色を写真に撮った。
そして唯華は「やっぱり好きだな」と俺に告げる。
俺は「それは俺の事がか」と聞く。
「当たり前じゃん」
「全くな。俺なんか意味無いだろ。彼氏作れよ」
「私はお兄じゃなくちゃ駄目。お兄じゃなくちゃ意味が無い」
「……」
俺は唯華を見る。
唯華は「あのさ」と切り出した。
その言葉に俺は唯華に視線を向ける。
すると唯華は「お兄と私って似てるよね」と言う。
俺は「確かにそうかもな」と話しながら前に向いた。
☆
「お兄って煙草吸わないの?」
「いや。吸ってたんだが忙しくて吸えなくなった」
「そうなんだね」
車の中で俺達は話す。
現在、車は隣町に向かっている。
隣町でハンバーガーでも食うかという話になったのだ。
そして車はそこに向かっている。
「でも楽しいなぁ。デート」
「デートって」
「私はお兄とデートって思ってる」
その言葉に俺は苦笑いを浮かべながらミラーから視線を外す。
そして運転をしていると唯華のスマホが鳴った。
唯華は「あ。美弥ちゃんからだ」と言う。
俺は「マジか」と話す。
「もしもし。美弥ちゃん?」
どうやら電話だったらしい。
俺はその姿を見ながら車を運転してからハンバーガー屋の駐車場に停める。
そしてサイドブレーキをかけてから唯華を見た。
「美弥ちゃんが怒ってる」
「なんでだよ」
「私とお兄が一緒だって自慢したから」
「面倒な事になるだろ!何で自慢した!」
俺は額に手を添える。
すると唯華は「はいはい」と苦笑いで言いながらスマホを渡してくる。
俺は「どうした。美弥」と聞いてみる。
「お兄ちゃん。唯華ちゃんとデートしてるね?」
「あくまで違うが。遊びに出かけているだけだ」
「お兄ちゃん?」
「あ、はい」
「デートだよね?」
「あ、ああ」
何だこの圧力。
そう思いながら汗を噴き出した。
すると美弥が「今度デートしてよ。私とも」と言う。
俺は「いやお前な」と話す。
すると「するの」と怒る。
「分かったよ」
それから俺は苦笑いでスマホを唯華に戻す。
唯華は「という事で今日だけはお兄を独占するよ」とマウントを取る。
俺は「オイ。唯華」と言いながら額に手を添えた。
「唯華ちゃん。後悔するよ……?」
「そんな事は無いから。アハハ」
「絶対に後悔する!未来にも言うし!」
「アハハ」
それから「もう。じゃあ。次、移動授業だから」と美弥は電話を切る。
俺はその姿を見ながら唯華を見る。
唯華は肩をすくめながら「だそうです」と言った。
全くな。
☆
「ハンバーガー美味しいね」
「そうだな」
チーズバーガー、ポテト、米粉のチキン。
どれもチェーン店だが美味しい。
流石だとは思う。
安いしな。
「私さ」
「?」
「起立性の障害だけどさ」
「ああ」
その言葉に俺は唯華を見る。
唯華は「私、学校に行かないとなって思うんだ。お兄が戻って来たのもあったから戻りたいんだ。学校に」と言う。
それから唯華は「私、このままじゃ駄目だって」と話す。
その身は震えていた。
ガタガタとなりながら、だ。
俺は眉を顰めながら唯華の話を聞く。
「唯華。無理はしないでほしいんだが」
「でも私、情けない感じがしてさ」
唯華は涙を浮かべる。
俺はその姿に「成程な」と言う。
情けない、と思うだけで偉いと思う。
この世の中には乗っかろうとする人も居るから、だ。
「唯華。何というかさ。俺の話を聞いてくれるか?」
「?」
「それこそ俺がお前らという大切な存在に出会う前の話だ。俺は実は1ヶ月学校に行けなかったんだ」
その言葉に唯華は目を丸くしてから「え?」となる。
俺はそんな唯華に全てを打ち明けた。
じいやの死などで行けなくなった事や不幸が重なった事。
そんなこんなで結論から1ヶ月引き籠り生活になった事を、だ。
その事に唯華は手を止めて静かに聞いていた。
「だから俺は唯華。お前の事、尊敬する」
「なんで?」
「俺はあくまで親に連れられて学校に行ったんだ。最終的にな。だからそうやって意を決して自分で頑張るお前を尊敬する」
その言葉に少し考えた唯華は「お兄。ありがとう」と言ってから笑みを浮かべた。
俺はその顔に頭を撫でる。
すると「お兄。私は子供じゃないよ」と怒られた。
だけど俺は唯華を撫でた。




