10、3人目のクソガキの罠
湘南唯華。
彼女は昔から活発な女の子だった。
俺が知り合った当時は唯華はかけっこが大好きな笑顔が絶えない少女だった。
だがその唯華が起立性調節障害?
俺より大変だ。
「あら?雪穂。どこか行くの?」
ランニング混じりで家に砂埃上げる様に帰り直ぐにシャワーを浴びてからまた出ようとした。
母さんに声を掛けられた。
俺は母さんに「ああ。今から美弥達に会ってくる」と言う。
母さんは「あらそうなの?気をつけて」と話してから手を振ってくれた。
直ぐに家を慌てて後にした。
☆
近所に市民図書館がある。
その前にベンチがありその場を今日の待ち合わせにした。
それからそこに向かうと美弥と未来が居た。
相変わらず目立つぐらい可愛い2人を見ながら少しだけ眉を寄せる。
「唯華に会ってないんだな」
「お家に行っても会えない。出て来ないから」
「そうだね」
そんな話をする2人。
そして美弥は「『こんな醜い自分だから』って言うんだよ。唯華ちゃん」と困惑する。
未来は「私達にも姿を見せてくれません」と言ってから悲しげな顔をする。
俺は「唯華の連絡先は知っているのか?」と聞いてから2人を見る。
「かろうじて」
「そうか。なら連絡してくれないか?」
「でも」
「俺は唯華の成長した顔が見たい」
その言葉に美弥はタジタジしたがやがて諦めて唯華に電話をしてくれた。
俺は息を呑みながら話を聞く。
すると通話になった。
「唯華。私、美弥だよ」
「……久しぶりだね。美弥ちゃん」
「久しぶりだね。どうして電話を取ってくれたの?あれだけ拒絶していたのに」
「そうだね。お兄がこっちに帰って来たんでしょ」
「あ、うん。知ってたんだね」
その話をする美弥。
しかしいつ電話が切られるかも分からない。
そう考えながら居ると頷きながら美弥がスマホを俺に差し出してきた。
俺は「?」を浮かべる。
「お兄ちゃんと話したいって」
俺は驚愕しながら電話に出る。
「もしもし」と。
すると「お兄。久しぶりだね」と言う。
俺は涙が浮かんだ。
声が掠れている。
「久しぶりだな。唯華」
「私の事、覚えてる?」
「当たり前だろ。俺の可愛い妹だからな」
「お兄。ありがとう。こんな醜い奴を覚えていてくれて」
その言葉に反対に今度はイラッとした。
何故、唯華はこんなマイナスに。
だがその答えは直ぐに出た。
というか少し考えれば2ヶ月前の俺に似ている。
唯華の言葉の覇気からして恐らくは完全に人生に自信を失くしている。
朝、起きれないからだろう。
「唯華」
「何。お兄」
「外に出なくて良い。その代わりに俺に会ってくれないか」
美弥も未来も心配げに見守っている。
その中で俺は唯華にそう告げた。
すると唯華は喋らなくなった。
そして20秒ぐらいが経ち。
唯華は「分かった。お兄には会うよ」とまさかの答えを出した。
「唯華?何故俺には」
「お兄だからだよ」
その言葉に俺はスマホを握りしめた。
それから「ありがとう」と涙を手の甲で拭い。
俺は「じゃあ今からマンションに行って良いか」と聞いてみる。
唯華は頷く様に「うん」と返事をしてくれた。
俺は「じゃあ」と美弥にスマホを返した。
「美弥、未来。今から俺だけで会いに行く」
「お兄ちゃん。大丈夫?」
「私も心配です」
だがこのチャンスを無駄にはしたく無い。
それに会わないと彼女はきっと未来永劫このままだろうしな。
成長した彼女に会いたい。
「私達は唯華ちゃんの家のリビングで待つよ」
「ああ。すまないがそうしてくれるか」
それから俺達は急いでマンションに向かう。
そしてあまりデカくない田舎風のマンション。
昭和に建てられたマンション。
集合住宅に向かう。
☆
唯華の母親に泣かれた。
久々の俺の姿に号泣していた。
俺はそんなおばさんに案内してもらい。
唯華の部屋の前に1人で来る。
確かにこの部屋だけ気配が違う気がする。
俺はゴクリと唾を飲み木製ドアをノックする。
するとゆっくりドアが開き。
「お兄」
やつれた感じの唯華が顔を見せた。
Tシャツに短パンの伸びた髪。
だが成長している唯華そのものだった。
見事な女の子に育っていた。
美少女と言っても過言じゃない。
だが。
「痩せたな。皮膚も真っ黒さ、黒さが抜けたな」
「だね。半年近く引き篭もっているからメラニンが抜けたんだろうね。7年ぶりだね」
唯華のそんな姿に言葉を失い俺は口元をおおい泣き始めた。
っていうか。
何だかこの姿見た様な?
あ。
「唯華。お前朝に俺に会ったろ」
「まあね。パーカーの女の子でしょ?」
「そうだ。なんで俺に声をかけなかった」
「お兄にこんな醜い私を見せたくなかったから」
その言葉に俺は眉を寄せる。
それから「唯華。それは撤回してくれるか。お前は醜い奴じゃない。お前は可愛い俺の妹だから」と言う。
すると唯華は自嘲した。
「当時の私はどこにも居ない。だから醜いよ」
俺は静かに唯華を見据える。
すると唯華は振り返り「入って。お兄」と言う。
俺は静かに「お邪魔するよ」と話した。
そして室内に入る。
☆
室内にはゴミ、ペットボトルが山積していた。
壁には殴った様な跡に血痕。
更には物が壊れていた。
壁紙を破った跡もあった。
俺はそれらを見ながら唯華を見る。
「唯華」
「何?絶望した?」
「違う。……会えて良かった」
その言葉に唯華は唖然とした。
それから「やっぱり良い感じに不思議な人だね。お兄って」と言いながら「お兄を呼んで正解だった」と言いながら俺を見る。
「それはどういう意味だ?」
「お兄。私がお兄だけをこの場所に呼んだ理由、分かるかな」
俺は「すまないが分からない」と言う。
すると唯華は学習椅子から立ち上がり俺に近づいて来た。
反射的に壁際に追い詰められる。
「私ね、お兄が好きなんだ」
その言葉に俺は見開き「は?」となった。
それから「あ、ああ。成程な。兄としてか?」と苦笑する。
すると唯華はムッとした。
「違うよ」と言いながら俺の手を握ってその手を自らの胸に押し付ける。
は!??
「私は異性としてお兄が好きって意味だよ」
俺は柔らかい感触に慌てて手を離す。
それから「ま、まさか」と言いながら唯華を見てから絶句した。
唯華はTシャツを引っ張り大きな胸の谷間を見せてきた。
「逃さないよ。お兄。一緒に地獄に堕ちよ?」と舌舐めずりをした。




