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アルカナ・サーガ  作者: いしか よしみ
第2章 少年期 天使で悪魔なお嬢様 編
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脱出とお嬢様 2

 森へあと少しというところで、森の奥でたくさんの鳥が飛び立つのが見えた。


 俺はリサに索敵魔法を唱えてもらう。


 ……結果は、『小動物ではない、人間位の大きさの何かが十体以上』であった。


 他の情報は、距離がある為に確認が出来なかった。


 「う~ん、これは想定外だったな」


 別働隊もしくは魔物がいたということか。


 「相手が砦の兵士でも魔物でも十体以上なら厳しいな」


 定期的に巡回しているのか。


 いや、昨日はそんなのはなかった。


 たまたまってことか……運が悪い。


 「さて、どうにか森にたどり着かないとな。作戦を考えるか……」


 ここの地形は谷になっていて、周りを見渡すと崖しかない。


 今から急いで戦闘条件が五分になる森に向かっても、森へ着く前に出くわしてしまう。


 ムダに体力を削るよりは、ここでやるしかないか。


 こっちの戦力は……俺とリサは油断が無ければ戦闘は大丈夫だろう、ソフィアさん達は『自分達の身は自分達で守れる』位かな。


 敵の数からいえば、真っ向勝負は無理だな。


 「それじゃあ、みんなは両方の崖に登って隠れて下さい」

 「ユウはどうするの?」

 「俺は残って敵を引きつけるよ。それでみんなは敵が通り過ぎたら、後ろから仕掛けて下さい」

 「なるほどね。挟み討ちなわけね」


 その通り。挟み討ちにして乱戦に持っていった方がいい。


 「敵の数は分かっているけど、人なのか魔物なのかも分からないのに大丈夫?」

 「もちろん対処出来ないようなのが来たら、俺は全力で引きつけて別ルートから森に向かうよ。みんなは、その間に森へ行ってもらって脱出準備をしてほしい」

 「確かにユウなら問題なく出来そうね」

 「じゃあ、みんな。ユウの指示通りに崖を登って待ち伏せましょう」


 みんなが崖を登って隠れるのを確認しつつ、俺は魔導銃のシリンダーを出し弾を確認する。


 俺は道の中央で敵を迎え撃つ準備をする。


 さて、倒せそうな敵であれば良いんだけどな。



◇◇◇◇◇



 結論から言えば挟み撃ち作戦はうまくいき、戦闘は短時間で終わった。


 ちなみに敵の正体だが、ゴブリンが十二体であった。


 俺が囮になって前方にしか注意がいってなかったため、リサ達というかリサに後ろから突撃されたゴブリン達は大混乱。


 連携が崩され混乱したゴブリンは、一体一体集中すれば簡単だった。


 俺が五体、リサが四体、ソフィアさん達が三体を倒していった。


 「ふう、なんとか倒せましたね」


 戦闘が終わり、俺はあたりを見渡し、みんなの状態とゴブリンの倒し漏れがないかを確認する。


 「う~ん、やっぱりユウにはかなわなかったですわね」

 「倒した数のこと? そんなの一体差なんだから気にしなくてもいいのにさ」


 リサは若干悔しがっているが、しっかり動けていたから問題ないだろうにさ。


 「数の問題というか……。わたくしは目の前のゴブリンに精一杯でしたのに、ユウはわたくしの後ろのフォローだったり、ソフィアさん達のフォローもしっかりしてましたのですわ」

 「まあ、敵もそんな強くなかったから出来たことだよ。自分より強かったらそんな余裕なんて無いって……」

 「それでも自分の力不足を感じますわ」


 あれ? リサが森で野宿した時の状態に戻っちゃったのかな。


 「あらあら、あなた達の年齢から考えても、さっきのゴブリンが『強くない』っていえる時点でリサは強いわよ」


 ソフィアさんは、ニコニコ笑顔で言ってくれた。


 「それにこういうのは経験値の違いよ。経験してるか、してないか。リサはさっき経験したでしょ? 次はうまく戦えるようになるわよ」

 「そうでしょうか。……いえ、そうですわね。ソフィアさん、ありがとうございます。わたくし、頑張ってユウに追いついてみせますわ」


 ソフィアさんは「その意気よ、リサ。良かった、元気になって」と言いながら、リサの頭を優しく撫でている。


 ちょくちょく感じていたことだが、この二人、この短期間でずいぶん仲良くなってるな。


 その時、突然パチパチと森方面から拍手が聞こえてきた。


 「誰だ!!」


 俺は、ソードブレイカーと魔導銃を構え、拍手の主を確認する。


 距離にして五メートル位離れた所に女の人が立っていた。


 どこか中性的な整った顔立ちをしている綺麗なお姉さんだった。


 父さん達より若い二十代後半くらいだろうか。


 身長は、長身で背中に剣――違うな、あれは刀だ。


 東方の国で主力の武器である刀だ。


 父さんの書斎にも飾ってあったから知ってはいるが、このお姉さんの刀はそれよりかなり長かった。


 「見事なお手並みね。その歳で大したものだわ」


 お姉さんの発する声を聞いて俺は驚いた。


 それはーー


 「ユウ、あの人、男の方ですわよ」


 リサが小声で俺の驚きに答えてくれた。


 そうなのだ、この人、見た目は綺麗なお姉さんなんだが、声が男の人のモノだった。


 「えっと、お、お姉さんは何者ですか? もしかしてあの砦の人ですか?」

 「あら、何者に見える? 今の所、話をしたいだけだから、そんな銃なんて向けても意味ないからしまいなさいな」


 そうはいっても銃はしまえないでしょ。


 「仕方ないわね。何者かについては……そうね、アリスちゃんと同業者って感じかしらね」

 「アリスちゃんと同業者ですか? ということはあの砦に雇われている方ですね。僕達を追ってきたんですか?」

 「そうね。でも捕まえる為ではないわよ」


 立場はアリスちゃんと同じなら正規の兵士ではないだろうけど、どういうことだ?


 この人が拍手するまで、俺は一切気配を感じられなかった。


 正直、武器を持ってるからって物理系なのか、もしくは魔法も使えるのかといった戦闘能力が読めない。


 出来れば戦闘は避けたいな。


 「わかりました。とりあえず、銃はしまいますよ」


 できれば話し合いで終わらして逃げたいな。


 「聞き分けが良いわね。そうよ、あなた達じゃアタシに傷をつけるのは不可能よ」

 「そうですね。で、話とは何ですか?」

 「まずは自己紹介からしましょうか。アタシは桔梗。あなた達の紹介は結構よ」


 確か『桔梗』って東方の国の固有花だった気がしたな。


 「桔梗……さん。確か東方の珍しい花のお名前ですよね」

 「ありがと、よく知ってるわね。脳天気なシリウスちゃんの子供とは思えない賢さだわ」


 シリウスちゃん?


 「あのそれって……」

 「もちろんあなたのお父さんのシリウスちゃんよ。あと、リサちゃん。お母さんのナタリアちゃんの事も知ってるわよ」

 「えっ、お母様のことを!!」


 俺と同様にリサも驚いている。


 「ふふっ、やっと表情を緩めてくれたわね。さて、本題に入りましょうか」


 桔梗さんから笑顔が消えた。


 「ユウちゃん。あなたの魔力が使えないのは生まれつき?」

 「え? 俺が魔力が使えないのを知っているんですか? おっしゃるとおり生まれつきです」

 「それじゃあ、生まれたときから記憶はある?」

 「いえ、記憶は無いです。三才くらいの時が最初ですよ」

 「そう。そこは普通なのね。ちなみに夢を見た時に、真っ暗、またはその逆に眩しく広く大きな何も無い空間で誰かと話したことはない?」


 えらく詳しく限定的な夢だな。


 「それも無いです。ただ、大空で浮遊していて誰かと話す夢は見ます」

 「大空? それもイレギュラーね。頻繁に見るの?」

 「はい。小さい頃から頻繁に見てます。最近は見る間隔が開いてきていますが、話しかけられるようになってきてます」

 「そう……」


 桔梗さんは、顎に手を当て静かに考え始めた。


 それにしても、この人はなんでこんなことを質問してきたんだろう。


 俺の魔力素質ゼロについて、なにか心当たりがあるのだろうか?


 その時、桔梗さんは顎から手を離し俺に顔を向ける。


 「次の質問よ。何かの能力があったりしないかしら? 例えば、岩も砕くほどの力があるとか、魔力とは関係なく炎を操れるとか」

 「それも特にありません」

 「あ、あの、この年齢で戦闘技能が高かったり、知識が豊富なのは違いませんの?」


 隣のリサが質問を投げてきた。


 「う〜ん。リサちゃん、それは違うわ。これは努力の結晶ね。ここ二日程度しか見てないけど、ユウちゃんの筋肉はバランス良く見事に鍛えられてるわ。戦闘技能が高いのは当たり前ね」


 そう言われると照れるな。


 「それにアリスちゃんとのチェス戦、今までの脱出計画の立案等の知略。こっちの才能もあるんだろうけど、おそらく勉強した成果でしょうね」


 桔梗さん、アリスちゃんとのチェス戦を見ていたのか。


 あれってアリスちゃんが造った魔法空間だから簡単に見られないと思うんだが……


 「それじゃあ、話を戻すわね。ユウちゃんには、今の所特別な能力はないのね?」

 「は、はい。思い当たるのはありません」


 というか桔梗さん、それって俺に何か能力あるかもしれない様な言い回しですね。


 「ないのね……。う〜ん……どうしようかしら。イレギュラーならどんなのか確かめたいし……。死の間際でないと開花しないし。でも、アタシが戦ったら殺しちゃうし……う〜ん」


 あれ?


 なんか『殺しちゃう』とか不穏な事言い始めてますけど!!


 まずい、この人と戦う場合、勝てる見込みは……ないねよ。


 逃げる方法を考えるしかないな。


 ……考えても逃げられる気がしない。


 どうする八方塞がりだ。


 「あら、そんなに緊張しないで。最初に言ったように戦わないわよ。アタシはね」


 そんな言い回しだと桔梗さん以外と戦うことになりそうじゃないですか!?


 「納得した顔ね。ちょうどアタシが預かっている子でね、戦いたいって言ってるのがいるのよね。それでは始めましょうか」


 桔梗さんは、右手を天へかざし呪文を唱える。


 前方の地面に大きな魔方陣が描かれていく。


 これは召喚系の魔法か?


 てっ、ちょっと待って!!


 何が出てくるか分からないけど、俺は戦いたくないんですけど!!


 魔方陣から強烈な赤い光が放たれていく。


 くそっ、やるしかないのか。


 「リサ、下がって!! ソフィアさん達は後方に大きく下がって下さい」


 俺は、魔導銃に通常弾を補充装填しながら魔方陣から距離を取り始める。


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