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アルカナ・サーガ  作者: いしか よしみ
第2章 少年期 天使で悪魔なお嬢様 編
16/29

あの子とお嬢様 1

 牢屋を抜け出し、洞窟を歩く途中に木箱があった。


 中には俺達やソフィアさん一行の装備が無造作に入っていた。


 俺はさっそくソードブレイカーと自分の鞄を装備する。


 残念ながら高価な骨董品と思われたのか魔導銃はなかった。


 出口付近に近づき敵の気配を探ったが、居なかった。


 よほど俺達を警戒してないんだな……それはそれで好都合だ。


 外に出ると夜だった。


 暗闇を利用して辺りを調べよう。


 見回りの兵士に注意しながら外の建物を確認していくと、武具倉庫、食料保管庫、兵宿舎等があった。


 リサやソフィアさんが言っていたように、人はビナーの兵士もいたがほとんどは山賊みたいな風体の人達がだった。


 さらに山賊以外にもゴブリンや狼型の魔物もいた。


 しかもコミュニケーションがとれているのか、それぞれ混ざって警備等の作業をしているようだ。


 物陰から観察していると背後から人の気配を感じた。


 「誰だ!!」

 「……」


 俺は、とっさに身近なものに隠れた。


 「どうした? 何かあったか?」

 「いえ、物音がした気がしたのですが、気のせいのようです」

 「……木箱しかないぞ。まあ警戒を怠らないのは良いことだ。そのまま持ち場に戻るぞ」

 「はっ!! 了解しました!!」


 ふう、危なかった。


 近くに木箱があって助かったよ。


 木箱の隙間から見ていたが、魔物、山賊、兵士とそれぞれ居たが兵士が指揮をしているようだ。


 やはりビナー帝国が取り仕切っている部隊のようだな。


 その後、大きな建物の中を窓からのぞくと集会所になっているようだが、中は人が居たため潜入はあきらめた。


 これでほとんどの建物を調べたかな。


 まとめるとこの砦は最近造ったばかりで、うちの村で例えると四分の一位の広さ、そして砦を囲うように木で隙間なく壁が造られている。


 部隊の規模は兵士十人、山賊二十人、魔物二十体くらいかな。


 しかも、魔物は人からの命令を聞いている。


 今の所、指揮官の確認は出来ていない。


 「さて、一通り調べたかな。あとはみんなで考えるかな」


 そう考えていたとき、近づいてくる人の気配を感じた。


 「木箱、木箱……」


 辺り見るが木箱が見当たらないが、その代わりドアが一つある。


 ていうかさっきまでこんなドアあったか?


 ああ、考えてるヒマはないな。


 俺は隠れるためにそのドアを開けた。



◇◇◇◇◇



 ドアを開けるとそこは青く薄暗い部屋だった。


 照明は青い炎を灯したロウソクが四隅に、奥の暖炉の光のみだ。


 豪華な腰掛け椅子が四つに、豪華な絨毯、とても山の中の砦とは思えない豪華な家具。


 その豪華な異質感のせいで、俺は冷静に考えることができた。


 そもそもこの建物って食料保管庫だったはずだ。


 この部屋の間取りもおかしいし、やはり入ってきたドアは何かの魔法なのだ。


 まだここの住人は帰ってきてないようだし、どんな仕掛けがされてるか分かったモノではない。


 さっさとこの部屋を出ようと、ドアノブに手を近づけたその時——


 「寂しいな、少年よ。せっかく助けてやったのにな」

 「……」


 後ろからの突然の声に、俺は素早く反応しソードブレイカーを構える。


 誰もいなかった先ほどの椅子に、脚を組んで女の子が腰を掛けていた。


 いつから居たんだ。気配に気づかなかった。


 ウエーブがかった銀色の髪を胸元位まで伸ばし、前髪を目の高さで切りそろえている。

 人形のような整った顔に、真っ白な肌が青いロウソクのせいで妖しさを増している。

 そして、俺より二、三才上くらいだろうか。

 赤い瞳が俺をジッと見つめてくる。


 「いつまで黙っているんだ? レディーに失礼だろ」


 レディーって……


 確かに十三才位の女の子というより、もっと年上の雰囲気がある。


 むしろ殺気ではないが爺ちゃんや父さんが真剣になったときの威圧感がある。


 姿と同様な年齢ではないだろう。


 俺は警戒を怠らないようにしつつ、挨拶をした。


 「すみませんでした。美しく聡明なお姉さん。俺はユウ。ここ? の砦で捕まってるものです。巡回の兵から隠れるために、この部屋に隠れました」


 爺ちゃん流にやってみようと思ったが、我ながら変な自己紹介をしてるな。


 「ほう、ユウと言うのか。私は、巨乳で美幼女な天才魔法使い、アリスちゃんだ。わたしのことは『アリスちゃん』と呼べ。はっはっはっ、よろしくな」

 「……」


 絶句だ。


 自分で『巨乳』やら『美幼女』やら『天才』って言ってるよ。


 たしかに胸は大きいし、綺麗だから間違ってないけどさ、自分で誇ってるよ。


 「何を黙ってる? その通りの事を言って何が悪い」

 「いえ、アリスさんが予想の斜め上をいっていたもので……」

 「……」


 アリスちゃんはプクッと頬を膨らませ押し黙る。


 「アリスさん?」

 「アリスちゃんだ。ア・リ・ス・ちゃん!!」


 アリスさん改めアリスちゃんは、『アリスちゃん』にこだわりがあるらしく抗議してくる。


 怒ってるのはそこですか……


 「わ、分かりました。アリス、ちゃんは言うとおり巨乳で美幼女な天才魔法使いです」

 「分かれば良い。少年もあと数年すれば、わらわの虜になるぞ」

 「そ、そうですね。でも、人間は見た目だけではなく中身も大事っていいますし……」

 「はっはっはっ、言うではないか。さすがフォローサイトの血縁だな」


 アリスちゃんは、ニヤリと笑う。


 「爺ちゃんを知ってるんですか? そもそも、何で血縁って分かるんですか?」

 「あいつの幼い頃にそっくりだったからな」

 「幼い頃って……アリスちゃん、いくつなんですか?」


 アリスちゃんは、目を見開きため息一つ。


 「ふう、レディーに歳を聞くとはヤボというものだぞ、少年。次に聞いたら圧殺な」


 冗談に聞こえません。

 何気に物騒な思考をしているんですね、アリスちゃん。


 「すみませんでした。ところで姿が似ているだけでは爺ちゃんの血縁って厳しいと思いますが?」

 「その答えはコイツだ」


 アリスちゃんが右手をかざすと光と共に何かが出てきた。


 あれは俺の魔導銃だ。


 アリスちゃんは「コイツがあったから確定だ」と言いながら俺に放り投げてきた。


 「おっと。……ありがとうございます」


 俺は素早く魔導銃の状態を確認した。


 「その魔導銃は、昔、フォローサイトとの賭けに負けた際にくれてやったんだよ」


 爺ちゃんとの賭けっていつのことなんだろうか?


 俺が魔導銃を見つけた時のほこりの量だと、少なくとも俺が生まれるよりもっと昔に放置されている感じだったはずだ。


 一通りチェックしたが魔導銃は特に問題なかった。


 むしろ通常弾がしっかりと再装填されていた。


 「魔導銃は、魔力制御出来ない少年にとっては、魔法を使う希望の一つだから拘ってるのかな」


 やはりこの人は俺が魔法の素質ゼロなのをわかってる。


 「そうじゃなきゃ、わざわざ使えない魔導銃をメンテしたり、実弾を使えるように改造しないだろう」

 「素質ゼロってことはありますが、魔法を使いたいというより……」


 俺は魔導銃をなでながら言葉を続ける。


 「純粋に、この魔導銃を気に入っているんですよ」

 「はっはっはっ、そうか、気に入ってるか。そいつはうれしいね。わたしも愛用していた銃達だ。大切につかってくれ」


 アリスちゃんの銃だったのか。


 俺は「はい」と返事をしつつ、「ところで何で魔力制御出来ないって気付いたんですか? 普通、しないでしょ?」と聞いてみた。


 「それはな、少年みたいな体質をしている子供に縁があるからさ」


 俺みたいな体質だって?


 その時、後ろでカチリと音がしたと同時に、頭の後ろに硬い何かを押し当てられた。


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