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97 ゼスト防衛戦③

俺の任務は明確だった。


・とにかく右軍を引きつけること

・可能な限り多くの敵を倒すこと

・中央軍と左軍へ敵を流さないこと


目の前の敵を駆逐し続ける。


それだけだ。


「《潰地敲》!」


棍棒を叩きつける。


地面が砕ける。


衝撃波に巻き込まれたゴブリンたちが潰れ、吹き飛んだ。


「《大車輪》!」


さらに棍棒を振り回す。


周囲の敵がまとめて弾き飛ばされる。


何体倒したか分からない。


百か。


二百か。


もう数えるのはやめた。


倒しても倒しても敵は尽きない。


それでも手を止めるわけにはいかない。


俺が止まれば敵が流れる。


中央へ。


左へ。


仲間たちの方へ。


だから倒し続ける。


それだけだ。


その時だった。


頭の中へ声が響く。


『佐伯さん、中央軍壊滅』


マナだ。


《エコー》。


思わず口元が緩む。


嬉しい報告だった。


だが続く言葉に眉をひそめる。


『左軍が少しおかしいです』


『雪乃さんが焦っているように見えます』


『雪乃さんを落ち着かせるため、佐伯さんを支援します』


雪乃さんが焦っている?


どういうことだ。


それに支援するなら左軍じゃないのか?


そう思った直後。


右軍最後方で風が唸った。


さらに俺の前方へ無数の矢が降り注ぐ。


ゴブリンたちが次々と倒れていく。


どうやら本当にこちらを支援しているらしい。


俺は一瞬だけ左軍へ視線を向けた。


雪乃さんと漣。


二人が大型ゴブリン三体と戦っている。


ゴブリンロード二体。


ゴブリンジェネラル一体。


その瞬間。


雪乃さんが消えた。


次の瞬間にはゴブリンロードの胸に穴が開いていた。


巨体が崩れ落ちる。


『雪乃さんは、もう大丈夫です』


『支援継続します』


マナの声。


その直後。


再び矢の雨。


さらに炎の竜巻。


真紀さんの魔法だ。


俺は思わず笑った。


頼もしい仲間たちだ。


「《破軍星》!」


全身の力を込めて棍棒を叩きつける。


轟音。


周囲のゴブリンたちがまとめて潰れる。


数歩前へ出る。


もう一度。


「《破軍星》!」


敵が吹き飛ぶ。


面白いほど敵が消えていく。


そして。


『左軍壊滅』


『雪乃さんと藤堂のお兄ちゃんは中央へ向かっています』


予定通りだ。


完璧だ。


俺は前を向く。


残る大型ゴブリンは三体。


ゴブリンロード二体。


ゴブリンジェネラル一体。


こいつらを倒せば右軍は終わる。


だが。


さすがに強い。


先ほどまでの雑魚とは別格だった。


最初のゴブリンロードへ突っ込む。


「《乱打》!」


連続攻撃。


巨体が揺れる。


だが倒れない。


その隙を狙ってもう一体のゴブリンロードが飛び込んでくる。


大剣が振り下ろされた。


受ける。


腕が痺れる。


重い。


だが押し返す。


「《連撃》!」


牽制。


怯んだ。


その瞬間。


膝をついた一体目へ飛び込む。


「《兜砕き》!」


頭蓋が砕けた。


一体目撃破。


だが休む暇はない。


二体目が迫る。


棍棒と大剣がぶつかる。


火花が散る。


数度の打ち合い。


最後は――。


「《乱打》!」


巨体が崩れ落ちた。


残るはゴブリンジェネラル。


一際大きい。


そして強い。


奴は咆哮を上げながら突進してくる。


俺も前へ出た。


「《大車輪》!」


激突。


吹き飛ばせない。


だが止まった。


十分だ。


俺はさらに踏み込む。


「《乱打》!」


一撃。


二撃。


三撃。


骨が砕ける感触。


肉が潰れる感触。


それでも倒れない。


さすがジェネラルだ。


なら――。


最後だ。


全身の力を振り絞る。


「《兜砕き》!!」


渾身の一撃。


棍棒が脳天へ叩き込まれる。


頭蓋が砕ける。


巨体が揺れる。


そして。


ゆっくりと崩れ落ちた。


勝った。


そう思った瞬間だった。


ぐらり。


世界が揺れた。


足元がふらつく。


視界が滲む。


俺は中央へ目を向ける。


雪乃さんがこちらへ走り出そうとしていた。


俺は右手を上げる。


来るな。


そう伝えるように。


大丈夫だ。


そう伝えるように。


たぶん。


酷い顔だったと思う。


それでも雪乃さんには伝わったらしい。


彼女は立ち止まった。


泣きそうな顔をしている。


だが。


ゆっくりと頷いた。


そして前を向く。


その先には本軍。


さらに少し前には漣が立っていた。


仁王立ちで敵軍を睨んでいる。


頼もしい背中だった。


俺も行かないとな。


そう思って足を動かそうとする。


だが。


動かなかった。


腕が重い。


足が重い。


身体中が悲鳴を上げている。


そうか。


ここまで無理をしていたのか。


今さら気付いた。


視界の端で。


仲間たちが前へ進んでいくのが見えた。


なら。


あとは任せても大丈夫だ。


俺は小さく息を吐く。


そして。


安心したように意識を手放した。


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