92 佐伯のスキル
「私、佐伯さんのステータス見てみたい!」
真紀さんにそう言われたので、俺は苦笑しながら自分自身に《鑑定》を使った。
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名前:佐伯 一樹 年齢:46歳
職業:商人 能力:万物の理
レベル:48
固有スキル:
鑑定、分解、分析、再生、等価召喚
受動スキル:
経験値倍化、異相共鳴、剛腕無双
武器スキル:棍棒
(連撃、兜砕き、大車輪、乱打、潰地敲、破軍星)
魔法スキル:なし
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結果を見た瞬間、真紀さんが声を上げた。
「レベル48!?」
「凄すぎない!?」
隣の漣は苦笑する。
「いや、それは俺も昨日聞いた」
「佐伯さん、レベル48なんだよ」
「それでも改めて見るとおかしいけどな」
そして漣は別の部分を指差した。
「それより《剛腕無双》ってなんだよ」
「佐伯さん、商人だよな?」
「なんで脳筋みたいなスキル持ってんだよ」
するとマナがパンッと手を叩いた。
「言いたいことは山ほどあると思いますけど」
「佐伯さんのスキルで最初に驚くべきなのは《再生》です」
「佐伯さんって、どんな物でも再生できるんです!」
二人は首を傾げる。
その様子を見た雪乃さんが、手に持っていたコップを床へ落とした。
ぱりん。
乾いた音とともにコップが砕け散る。
そして俺が《再生》を使う。
砕けた破片が床の上を滑るように動き出し、まるで時間が巻き戻るかのように元の形へ戻っていった。
二人は絶句した。
「え……」
「今の何?」
真紀さんが呆然と呟く。
マナは得意そうに胸を張った。
「こんな感じで、物だけじゃなくて人も再生できるんです」
「怪我だけじゃなくて人も治せます」
「若葉の《ヒール》みたいなもの?」
真紀さんが聞いてくる。
「少し違うかな」
「俺の《再生》は病気や欠損も治療できるから」
そう答えた瞬間、
「いやいやいや!」
「それ神様の力じゃないですか!」
真紀さんが立ち上がった。
漣も頷いている。
「確かに」
「普通に考えて反則だろ」
そんな中、雪乃さんがステータスを見ながら首を傾げた。
「《等価召喚》って何ですか?」
「あー、それね」
俺は苦笑した。
「ちょっと使い勝手が悪いんだよ」
「魔物の素材を渡すことでポイントが溜まるんだけど、そのポイントで色々な物と交換できるんだ」
「へぇ」
「便利そうじゃん」
漣が言う。
「ところがそうでもないんだよ」
「魔物の素材って普通に売れるだろ?」
「だからポイント化するより換金した方が得なことが多い」
「なるほど」
俺は実演するためポイントを消費した。
次の瞬間。
見慣れたボールペンが現れる。
真紀さんが目を丸くした。
「え?」
「それ日本のボールペン?」
「そう」
「向こうの世界の物も召喚できる」
「ただし俺が実際に買ったことがある物限定みたいなんだ」
真紀さんが勢いよく立ち上がった。
「つまり制限付きとはいえ、元の世界の物を呼び出せるってことですか!?」
「まぁ、そうなるかな」
すると今度は漣が興奮した。
「いやいやいや!」
「魔物素材を換金してる場合じゃないだろ!」
「向こうの便利な物を持ち込むだけで、この世界変わるぞ!」
だが俺は首を横に振った。
「それが難しいんだよ」
「向こうの便利な物って、ほとんど電気が必要だろ?」
「こっちには電気がない」
「発電機を召喚しようにも、俺は買ったことがないから召喚できない」
「そうなると、何を呼ぶのが正解なのか悩むんだ」
すると雪乃さんが言った。
「それでも今後のために、できるだけ魔物素材はポイント化しましょう」
「ね?」
その言い方が妙に優しい。
俺は反論できなかった。
「……はい」
素直に頷く。
すると漣と真紀さんがニヤニヤしながら俺を見る。
なんだ、その顔は。
雪乃さんは気付かず話を続けた。
「ポイントを貯めれば、コショウや砂糖も手に入るかもしれません」
その言葉に俺は目を見開いた。
コショウ。
砂糖。
確かに今までこちらの世界で探すことばかり考えていた。
だが召喚できるなら話は別だ。
料理の幅が一気に広がる。
俺が考え込んでいると、真紀さんがニヤリと笑った。
「佐伯さんって、雪乃さんの意見は素直に聞くんですね」
ぶふっ。
思わずむせそうになった。
顔が熱い。
雪乃さんも真っ赤になって俯いている。
一瞬、沈黙が流れた。
その空気を救ったのはマナだった。
「じゃあ、そろそろ冒険者ギルドへ行きましょうか」
「昨日の襲撃事件の話も聞かないといけませんし」
俺は内心ホッとしながら頷く。
「それとジャック武具店にも寄ろう」
「漣と真紀さんの装備を買い替えないとな」
「なんで?」
漣が首を傾げる。
俺は二人の装備を指差した。
「その装備についてる紋章」
「辺境伯家の紋章なんだよ」
「あっ……」
真紀さんが顔をしかめた。
「それが付いてると、この街では警戒されるんだ」
「だから宿探しも大変だったし、聞き込みも上手くいかなかったんですよ」
真紀さんが納得したように言う。
すると雪乃さんが続けた。
「それだけ辺境伯は嫌われているということです」
「ゼストにはギルモア領の各地から人が集まっています」
「辺境伯に土地を奪われた人」
「圧政に苦しめられた人」
「家族を失った人」
「そういう人たちも少なくありません」
「だから、その紋章を見るだけで拒絶反応を示す人もいるんです」
漣と真紀さんは顔を見合わせた。
そして静かに頷く。
どうやらようやく、自分たちが置かれている状況を理解したようだった。




