↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/114

83 試食会前夜

俺たちは試食会の材料を調達するため、市場へ向かった。


卵、ミルク、チーズ。


必要な食材を買い揃えた後、ついでに雑貨屋へ立ち寄る。


目的はもちろん――米だ。


「お米ってありませんか?」


店主は最初、何のことかわからないという顔をしていたが、しばらく考えた後で手を打った。


「あー、あの家畜のエサのことか?」


「うちじゃ扱ってないよ」


「農家が作って、自分のところの家畜に食わせてるからな」


その言葉を聞いた瞬間。


俺たち三人は顔を見合わせた。


あった。


米があった。


「やった!」


「本当にあった!」


「お米だ!」


思わず声を上げてしまう。


店主は苦笑しながら言った。


「相変わらず、カズキさんたちは変なものを欲しがるね」


「近いうちに仕入れておいてやるよ」


俺たちは何度も礼を言って店を後にした。


家に戻ると、そのままマナの≪テレポート≫で廃村へ向かう。


到着するなり、


「米ありましたね!」


「やっとお米が食べられる!」


「私、卵かけご飯が食べたい!」


三人で大騒ぎになった。


ひとしきり喜んだ後、俺は試食会の話を切り出す。


「まずクッキーとプリンは確定だ」


二人が頷く。


「それ以外にも何品か持っていく」


「パンの種類を増やそうと思う」


「ミルクパンとチーズパンだ」


「賛成!」


「絶対美味しいです!」


二人とも嬉しそうだ。


俺はさらに続ける。


「それから茶わん蒸しと、だし巻き卵」


今度は歓声が上がった。


そして奥から魔物肉を取り出す。


「さらに、これだ」


「ハムとベーコン」


二人の目が輝いた。


離れていた二日間、一人で仕込んでいたものだ。


喜んでくれているのを見ると苦労した甲斐がある。


「それとマヨネーズも作る」


そう言って樽を軽く叩いた。


中には以前仕込んでいたブドウ酢が入っている。


「今回はここまでにする」


マナが首を傾げた。


「意外と少ないですね」


俺は笑う。


「試食会だからな」


「全部出して驚かせるより、これだけで十分だ」


「まだ他にも色々考えてる」


「でも、それはまた今度だ」


雪乃さんとマナが顔を見合わせて笑う。


「商売人らしいですね」


雪乃さんの言葉に俺も苦笑した。


「その代わり、一品一品の完成度は上げるぞ」


「自治区長が来るんだからな」


「出し惜しみはしない」


そして俺は続ける。


「それに、そろそろ次の段階へ進みたい」


「次の段階?」


雪乃さんが首を傾げる。


「レストランだよ」


俺の言葉に二人が頷いた。


レストラン計画。


経営は俺たちが行う。


だが実際の運営は人を雇うつもりだ。


俺たちだけで全てを回せるわけじゃない。


それに雇用が生まれれば街も活気づく。


ここで成功すれば、いずれ他領にも広げられるかもしれない。


それが俺たちなりに出した答えだった。


「そのためにも、冒険者ギルドとの信頼関係は大事ですね」


雪乃さんが言う。


俺は大きく頷いた。


「ああ」


「だから今回は、俺たちの考えをしっかり知ってもらう」


そこからは怒涛の仕込み作業だ。


クッキー。


プリン。


ミルクパン。


チーズパン。


茶わん蒸し。


だし巻き卵。


そしてハムとベーコン料理。


俺はまずマヨネーズを作った。


卵とブドウ酢に少しずつ油を加えながら混ぜ続ける。


ひたすら混ぜる。


普通なら腕が悲鳴を上げる作業だろう。


だが俺には≪剛腕無双≫がある。


疲れる気配すらない。


あっという間に完成した。


続いてミルクパンとチーズパンを焼く。


そして最後はハムとベーコン料理。


ハンスさんを試食会へ呼んだ理由もこれだ。


ハムとベーコン作りを彼に任せたい。


最初に魔物肉流通へ協力してくれた恩返しでもあるし、何より俺たちだけでは生産量に限界がある。


専門家に任せた方が、より多くの人へ届けられる。


だからこそ。


絶対に欲しいと思わせる料理が必要だった。


ふと見ると、雪乃さんが焼いたパンが並んでいる。


一つ手に取り、切れ目を入れる。


そこへハムとマヨネーズを挟む。


一口。


「うまい……」


思わず呟いた。


これだ。


ハムの便利さも、マヨネーズの美味さも伝わる。


試食会の目玉にしよう。


ベーコンはポジャイモと一緒に炒めた。


シンプルだが、ベーコンの旨味がよくわかる。


これも悪くない。


そうこうしているうちに、全ての仕込みが終わった。


気付けば外は暗い。


「だいぶ遅くなりましたね」


雪乃さんが言う。


「今日は店も休みだし、このまま少し休んでから冒険者ギルドへ行こうか」


マナも賛成した。


結局、俺たちはそのまま廃村で雑魚寝することになった。


横になる。


すると、すぐ近くに雪乃さんがいることを意識してしまった。


駄目だ。


意識するな。


そう思えば思うほど気になる。


視線を向けそうになって慌てて天井を見る。


落ち着け、俺。


本当に落ち着け。


そう自分に言い聞かせながら目を閉じる。


……これ、ちゃんと眠れるだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。