08 装備
説明会が終わり、促されるまま広間を出る。
外へ出ると、そこにはのどかな景色が広がっていた。
青い空。
風に揺れる草原。
遠くには森も見える。
だが、人の気配はない。
そういえば、ここは廃村だと言っていたな。
妙に静かだった。
俺たちはヨシュアに案内され、近くの小屋へ向かった。
中へ入ると、壁際や棚の上に様々な武器が並べられている。
剣、槍、杖、弓、ナイフ。
見たこともない形の武器まであった。
ヨシュアが説明する。
「ここに皆さんの武器を用意しています」
「手に取ってみて、しっくりくる物があれば、それが基本武器になります」
「それを受け取ってください」
そして少し間を置いて付け加えた。
「しっくりくる物がなければ申し出てください。こちらで適当に選びます」
適当に、か。
正直、その言葉は俺とあの運搬屋の少女へ向けられたものに聞こえた。
言葉の端々から、軽く見られているのが伝わってくる。
周囲では高校生たちが思い思いに武器を手に取り始めていた。
俺も近くにあったナイフを手に取る。
だが特に何も感じない。
ただナイフを持っている。
それだけだ。
次に杖を持ってみる。
こちらも同じ。
杖を持っているという感覚しかなかった。
さらに別の棚へ目を向ける。
そこに置かれていた棍棒を手に取った。
その瞬間だった。
――あれ?
何かが違う。
手に馴染む。
いや、馴染むという表現も少し違う気がする。
うまく言葉にできない。
だがナイフや杖を持った時とは明らかに感覚が違っていた。
職業病だろうか。
理由を説明できない感覚というものに、少し苛立つ。
俺は確認するように剣も手に取ってみた。
だがこちらはナイフや杖と同じだった。
特別な感覚はない。
再び棍棒へ持ち替える。
やはり違う。
これがヨシュアの言っていた「しっくりくる」という感覚なのだろうか。
試しに軽く振ってみる。
違和感はない。
むしろ自然だった。
そこへヨシュアが近付いてくる。
「棍棒ですか」
俺は頷いた。
「それが無難でしょうね」
無難?
どういう意味だ。
聞き返そうかと思ったが、ヨシュアはそれ以上何も言わなかった。
俺は周囲を見回す。
剣聖の高校生は大剣を選んでいた。
拳聖の高校生は籠手のような武具を両手に装着している。
槍聖の高校生は、他よりやや短めの槍を手にしていた。
巫女と魔導士の女子生徒は杖だ。
ただし杖の先端に取り付けられた宝玉の色が違う。
運搬屋の少女はナイフを握っていた。
相変わらず青い顔をしている。
不安そうに周囲を見回していたが、ふと俺と目が合った。
だが少女はすぐに視線を逸らし、俯いてしまう。
スーツ姿の女性は短剣のような武器を眺めていた。
ナイフより太く、両側に刃が付いている。
不思議そうな顔をしているところを見ると、俺と同じように言葉にできない感覚を覚えているのかもしれない。
全員が武器を選び終えたと判断したのだろう。
ヨシュアが再び口を開いた。
「皆さん、武器は決まったようですね」
「明日からの旅では、その武器の扱い方を学びながら実戦経験を積んでいただきます」
実戦経験。
やはりその言葉を軽々しく使う。
俺にはどうしても慣れなかった。
「次は防具です」
「防具はこちらで用意した物を配布します」
「受け取った方から休憩してください」
そして小屋の外を指差した。
「休憩場所は隣の家屋になります」
武器を渡され、防具を着せられ、明日から戦闘訓練。
ヨシュアは休憩と言った。
だが俺には違うものに思えた。
歓迎会ではない。
どう考えても徴兵だった。




