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77 (閑話)新しい旅立ち

佐伯たちが廃村へ戻り、雪乃とマナが二人で店を切り盛りし始めた頃――。


神代たちもまた、新たな旅立ちの準備を進めていた。


「それにしても、別々の任務になるとはな」


神代がそう言うと、漣と真紀が苦笑する。


すると太陽と若葉が肩をすくめた。


「まあ、謁見の時以来、辺境伯は一度も姿を見せてないしね」


「漣と真紀が怖いんじゃない?」


二人が笑いながら言うと、真紀は鼻を鳴らした。


「だって、あいつがふざけたこと言うから、ちょっと脅しただけじゃない」


そう言って漣に視線を向ける。


「ねぇ、漣?」


「脅したうちに入らねぇよ、あんなもん」


漣は苦虫を噛み潰したような顔で答えた。


☆★☆★☆★☆★☆★


数日前。


領都ギルセニアへ到着した俺たちは、到着早々、城へ呼び出された。


ヨシュア曰く、辺境伯への帰還報告が必要らしい。


正直、辺境伯には良い感情を持っていない。


それでも渋々、ヨシュアに連れられて城へ向かった。


豪華な廊下を進み、大きな扉が開かれる。


その先には、玉座に腰掛けた辺境伯の姿があった。


俺たちは前へ進む。


ヨシュアだけが跪いた。


周囲からは、


「無礼者!」


「跪かんか!」


などと怒号が飛んでくる。


だが、知ったことではない。


俺たちは黙って辺境伯の言葉を待った。


しばらくして辺境伯が口を開く。


「まあよい」


「こやつらは礼儀を知らぬ人種らしいからな」


鼻で笑いながらヨシュアを見る。


「帰還が予定より遅れた理由は何だ?」


ヨシュアが頭を下げた。


「逃走者が三名おりました」


「その捜索に時間を要しました」


辺境伯は興味なさそうに頷く。


「そうか」


それだけだった。


(トーマスの後始末で散々苦労したんだろうが)


神代はそう思ったが、口には出さなかった。


すると辺境伯が再び口を開く。


「逃走したのは商人、運搬屋、斥候だったな?」


「御意」


ヨシュアが答える。


辺境伯は鼻で笑った。


「斥候は惜しかったが、商人と運搬屋は構わん」


「どうせ戦えんジジイとガキだろう」


その瞬間だった。


真紀の表情が消えた。


「おい」


低い声が響く。


「今、なんて言った?」


次の瞬間、真紀の掌に巨大な火球が現れた。


火球は辺境伯の脇へ飛び――


轟音と共に壁を吹き飛ばした。


石片が飛び散る。


辺境伯の顔が青ざめた。


「次は当てるぞ」


真紀の冷たい声が響く。


護衛兵たちが慌てて動いた。


「貴様!」


剣を抜き、真紀へ向かう。


だが、その前に漣が立ちはだかった。


拳が振るわれる。


護衛兵たちは次々と床へ沈んだ。


全員を叩き伏せた後、漣は辺境伯へ歩み寄る。


「漣殿! おやめください!」


ヨシュアが必死にしがみつく。


しかし漣は止まらない。


辺境伯の胸倉を掴み、そのまま横へ投げ飛ばした。


そして玉座を殴りつける。


轟音。


玉座が粉々に砕け散った。


漣は辺境伯を見下ろした。


「あんま舐めたこと言うなよ」


「俺たちは元の世界へ帰るために協力してやってるんだ」


「仲間を馬鹿にするなら、次はお前がこうなるぞ」


辺境伯は顔面蒼白のまま震えていた。


そこで神代が前へ出る。


「今日はこの辺で終わりにしようか、辺境伯さん」


「用があるならヨシュアを通してくれ」


そしてヨシュアを見る。


「次はどこへ行けばいいんだ?」


ヨシュアは慌てて一礼した。


「こちらです」


俺たちはそのまま謁見の間を後にした。


なお、辺境伯の足元に水たまりができていた気がするが、誰も触れなかった。


その後、俺たちはアルステア教会へ向かった。


目的は『神託の宝珠』だ。


順番に触れてみたが、正直驚きはなかった。


佐伯さんに鑑定してもらった後だったからだ。


むしろ驚いたのは性能だった。


分かるのは、


職業

能力

レベル

固有スキル


のみ。


受動スキルも、


武器スキルも、


魔法スキルも見えない。


全員一致の感想は同じだった。


「佐伯さんの≪鑑定≫の方がすごくない?」


本当にあの人、何者なんだろう。


商人とは思えない。


強さも能力も規格外だった。


また会いたいな。


そんなことを考えながら、俺たちは冒険者登録を済ませた。


鉄級から始まり、魔物討伐を続けた結果、今では銅級になっている。


☆★☆★☆★☆★☆★


そして昨日。


ヨシュアから新たな任務が告げられた。


神代、太陽、若葉。


三人は旧エドワード領へ向かい、魔物と魔族討伐に参加。


漣と真紀。


二人はギルニス自治区へ向かう。


完全な別行動だった。


理由を聞くと、ヨシュアは困った顔をした。


「漣殿と真紀殿を辺境伯から遠ざける意図があります」


「それと、ギルニス自治区は領内最大の懸案事項です」


「もし解決できれば、再び五人で行動できるでしょう」


渋々ながらも了承した。


ちなみにヨシュアは旅の途中で少し分からせてやった。


最近はだいぶ話が通じるようになっている。


そんなこんなで準備も整った。


神代が仲間たちを見回す。


「さて――行くか!」


その言葉を合図に、


俺たちは二手に分かれて旅立った。


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