71 試食会①
俺はテーブルの上にドライフルーツを並べた。
すると、ゼシカさんたちは揃って怪訝そうな顔をする。
「なんだこれは?」
「干からびた果物か?」
「見た目が悪いな……」
「これを売るつもりなのか?」
反応は散々だった。
まあ、見た目だけならそうなるだろう。
俺は苦笑しながら説明する。
「これはドライフルーツという食べ物です」
そう言って一つ摘まみ、自分の口へ放り込んだ。
雪乃さんとマナも同じように食べる。
そして飲み込んだ後、四人へ勧めた。
「どうぞ、お試しください」
四人は顔を見合わせる。
しばらく躊躇していたが、最初に動いたのはゼシカさんだった。
「まあ、毒じゃないんだろう」
そう言って一つ口に放り込む。
勢いよく噛んだ。
そして――。
表情が変わった。
「なんだこれ!?」
「ものすごく甘いぞ!」
慌ててもう一つ掴み、再び口へ放り込む。
その反応を見ていたジョージさんたちも次々と手を伸ばした。
「うわっ、甘い!」
「美味しい!」
「なんだこの味は!」
「こんな甘い物、初めて食べたぞ!」
誰もが驚愕していた。
そして二個目、三個目へと手が伸びる。
俺はそこで商品説明に入った。
「これは特殊な製法で乾燥させた果実です」
「果実を乾燥させることで甘味が凝縮され、生の状態より強い甘さを感じられます」
「さらに、この状態なら三週間ほど保存できます」
その説明を聞いた瞬間、四人の目が大きく見開かれた。
「これが果実だって?」
「信じられん……」
「三週間も保存できるのか?」
「そんな果物は聞いたことがないぞ」
最後にジョージさんが尋ねる。
「その特殊な製法とは?」
俺は首を横に振った。
「申し訳ありませんが、現時点では企業秘密ということでお願いします」
ジョージさんは唸る。
それでも納得はしてくれたようだ。
俺は続ける。
「まずは、このドライフルーツの販売から始めようと思っています」
するとゼシカさんが眉をひそめた。
「まずは?」
その一言に含まれる意味は明白だった。
ジョージさんも興味深そうに口を開く。
「これだけでも十分売れると思いますが……」
「次の商品も考えているのですか?」
「はい」
俺は頷いた。
「この製法自体は、いずれ真似される可能性があります」
「ですので、私は何手か先を見据えて商品開発をしています」
「次の商品がこちらです」
そう言ってパンを取り出した。
四人の視線が集まる。
「パン?」
「いや……」
「パンに見えるが……」
「何か違うな」
俺は微笑んだ。
「パンです」
「ただし、皆さんの知っているパンとは少し違います」
「ぜひ食べてみてください」
四人は手に取った瞬間、顔色を変えた。
「柔らかい……」
「なんだこの感触は」
「香りも全然違うぞ」
そして口へ運ぶ。
次の瞬間だった。
「うまい!!」
「すごい!」
「味がある!」
「いや、味があるなんてレベルじゃない!」
「これは本当に美味い!」
「香りも素晴らしい……!」
全員が恍惚とした表情を浮かべていた。
俺はそんな様子を見ながら言う。
「こちらはドライフルーツ販売から三か月後くらいに販売する予定です」
その瞬間。
ゼシカさんが勢いよく立ち上がった。
「なぜ三か月後なんだ!?」
「もう完成しているじゃないか!」
完全に怒っている。
俺は落ち着いて説明した。
「ドライフルーツの販売が軌道に乗るまで、おそらく三か月ほどかかると考えています」
「そこで店の評判を確立する」
「そして次の一手として、このパンを投入するつもりです」
ジョージさんが腕を組みながら頷いた。
「なるほど」
「まずはドライフルーツで話題を作る」
「そして評判が固まったところで、このパンを投入する」
「店の評価を決定的なものにするわけですな」
「その通りです」
俺は頷いた。
だが、ゼシカさんはまだ納得していない。
「それでも弱い!」
「このパンを三か月も待たせる理由にはならん!」
そこで俺は次の皿を取り出した。
香ばしい匂いが部屋に広がる。
醤油漬けの魔物肉。
そして魔物肉入りのポトフ。
四人の視線が釘付けになる。
「これは?」
俺は静かに答えた。
「パンと一緒に提供する予定の料理です」
「魔物肉を使っています」
その瞬間。
四人の動きが止まった。
「……魔物肉?」
「そうです」
「私はこのパンを食事として完成させたいと考えています」
「そのためには、まず魔物肉を食材として受け入れてもらう必要があります」
「その紹介期間として三か月ほど見込んでいるんです」
そして続ける。
「そのために、冒険者ギルドにも協力していただきたいことがあります」
俺たち三人は顔を見合わせる。
そして揃ってニヤリと笑った。
一方――。
ゼシカさんたち四人は、揃って嫌な予感を覚えていた。
この男はまだ何か企んでいる。
そんな顔で俺たちを見ていた。




