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69 再生

このまま色々と相談したい旨を伝えると、エリーナさんは少し考えてから言った。


「こちらも少し準備がありますので、お時間をいただいてもいいですか?」


「そんなにかかりません。そうですね……昼過ぎには準備できると思います」


俺たちは了承した。


さて、それまで何をするか。


三人で相談していると、エリーナさんがふと思い付いたように言う。


「そうだ! 冒険者ギルドの依頼を受けてみませんか?」


内容を聞いてみると、近くの農場にグレートボアが出没し、作物被害が出ているらしい。


討伐依頼だった。


俺は少し困った顔をする。


「でも、グレートボア討伐って銀級依頼じゃありませんでしたか?」


「俺たち、まだ鉄級ですよ」


やんわり断ろうとしたのだが、エリーナさんは笑った。


「グレートボアの皮を何十枚も持ち込む鉄級冒険者なんて聞いたことありませんよ」


「実績を見る限り、この依頼を受けるだけの実力は十分あると思っています」


結局、三人で相談した結果、依頼を受けることにした。


早速ギルドを出て農場へ向かう。


到着してすぐ、被害の大きさが分かった。


畑は無残に踏み荒らされている。


植えられていた作物もほとんど残っていない。


畑の前で呆然と立ち尽くしている男性がいた。


「冒険者ギルドから依頼を受けてきました。カズキと申します」


「ここがグレートボアに荒らされている農場で間違いありませんか?」


そう尋ねると、男は勢いよくこちらを振り返った。


そして突然、大粒の涙を流し始める。


「見てくれよ、この畑を……」


「せっかく植えた作物が全部めちゃくちゃだ」


「植えても植えても、あいつらが来て荒らしていくんだ」


「頼む……どうか倒してくれ」


その切実な声に、俺たちは黙って頷いた。


雪乃さんが≪気配察知≫を使う。


「東です」


「グレートボアの群れがいます」


俺たちはすぐに向かった。


しばらく進むと、七頭ほどのグレートボアが見えてくる。


「先制します!」


マナが≪アローレイン≫を放った。


降り注ぐ矢が数頭に命中する。


グレートボアたちは怒り狂い、一斉にこちらへ突進してきた。


俺は雪乃さんとマナの前へ出る。


そして迎え撃つ。


距離が詰まる。


あと一歩。


その瞬間――


「≪潰地敲≫!」


全力で棍棒を地面へ叩き付けた。


轟音が響く。


先頭を走っていた数頭のグレートボアが文字通り押し潰された。


後続も衝撃で足を止める。


そこへ雪乃さんが飛び出した。


「≪千本桜≫!」


無数の突きが嵐のように襲いかかる。


グレートボアたちの体に次々と穴が空いた。


さらにマナが追撃する。


「≪ハートシーカー≫!」


放たれた矢が一直線に敵を貫いた。


残ったのは二頭だけ。


俺と雪乃さんがそれぞれ向かう。


俺は棍棒を振り上げる。


「≪連撃≫!」


渾身の一撃がグレートボアの頭部を砕いた。


絶命。


その瞬間だった。


「きゃっ!」


雪乃さんの悲鳴が聞こえた。


慌てて振り返る。


雪乃さんが吹き飛ばされていた。


「え……?」


状況が理解できない。


その直後。


マナの近くにいたグレートボアへ矢が飛ぶ。


「≪ハートシーカー≫!」


最後の一頭が倒れた。


俺は全力で雪乃さんの元へ駆け寄る。


「雪乃!」


抱き起こす。


雪乃さんは苦しそうに呟いた。


「マナは……?」


「マナは……」


その言葉で全てを理解した。


マナを見る。


青ざめた顔で立ち尽くしていた。


やがて駆け寄ってくる。


「雪乃さん!」


「ごめんなさい!」


「私なら大丈夫だったのに!」


涙を流しながら抱き付く。


雪乃さんは弱々しく微笑んだ。


「そう……」


「無事なら……よかった……」


そう言って目を閉じようとする。


俺の背筋が凍った。


「寝るな!」


「雪乃!」


「目を閉じるな!」


咄嗟に≪再生≫を発動する。


すると雪乃さんの体が黄金色の光に包まれた。


温かい光だった。


しばらくして輝きが消える。


雪乃さんの顔色が戻っていた。


傷も消えている。


それだけではない。


鎧も武器も新品同然になっていた。


俺はその場に崩れ落ちた。


助かった。


本当に助かった。


その瞬間、雪乃さんが俺に抱き付いてきた。


「ありがとう……ございます……」


泣いていた。


俺も涙が溢れる。


自然と抱き締めていた。


「無理をしないでください」


「あなたは俺にとって大切な人なんですから」


気付けばそんな言葉が口から出ていた。


なぜそんなことを言ったのか、自分でも分からない。


ただ。


失いたくないと思った。


それだけは確かだった。


すると今度はマナも飛び付いてくる。


「佐伯さん……」


「雪乃さん……」


「よかったぁ……」


三人でしばらく抱き合ったまま泣いていた。


落ち着いてから事情を聞く。


どうやらマナの近くにワーラットが数匹潜んでいたらしい。


マナは気付いていなかった。


それを察知した雪乃さんが救援に向かい、ワーラットを仕留めた。


しかし、その隙を突かれた。


生き残っていたグレートボアの突進を受けてしまったのだ。


俺たちは深く反省した。


最近、自分たちが強くなったと慢心していた。


だが現実は違う。


油断すれば死ぬ。


それがこの世界だ。


三人で支え合いながら戦う。


初心を忘れない。


改めてそう誓い合うのだった。


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