66 久々のスキルチェック
醤油に肉を漬け込み、香草を添える。
これで一晩寝かせれば――。
いや、待てよ。
マナの≪クイック≫を使えば、一日進められるんじゃないか?
俺はマナに声をかけた。
「マナ、これに一日分だけ≪クイック≫って使えるか?」
マナは小さく頷く。
「やってみます」
そう言って、肉の乗った器へ向けて≪クイック≫を発動した。
淡い青白い光が器を包み込み、すぐに消える。
見た目は特に変わらない。
だが、確かに肉にはしっかりと味が染み込んでいるように見えた。
「よし、焼いてみよう」
焼き上がった肉を口に運ぶ。
――うまい。
しっかりと醤油の風味が染み込み、香草の香りも効いている。
俺は二人にも勧めた。
「食べてみてくれ」
二人も一口食べる。
「うわっ、すごく美味しい!」
マナが目を輝かせる。
「佐伯さんって本当にすごいですね!」
屈託のない笑顔に、俺は苦笑した。
「いや、すごいのはマナの方だよ」
そう言うと、マナは照れくさそうに笑う。
雪乃さんは肉を見つめながら呟いた。
「しっかり漬け込まれていますね……」
「本当に美味しいです……」
まだ信じられないという表情だ。
俺も同じ気持ちだった。
「マナの≪クイック≫のおかげで、計画がかなり前倒しできそうだな」
雪乃さんは大きく頷く。
だが当の本人はきょとんとしていた。
自分がどれほど凄いことをしたのか分かっていないらしい。
その辺りは、いかにもマナらしい。
その後、俺たちは明日を準備の日にし、明後日にゼストへ向かうことを決めた。
明日は魔物肉の仕込みとパン焼きだ。
そして、せっかくなので久しぶりに≪鑑定≫で能力を確認することになった。
まずは、今日一番驚かされたマナからだ。
=============================================
名前:御厨 茉奈 年齢:11歳
職業:運搬屋 能力:神速の宅配師
レベル:18
固有スキル:次元収納、念動収納
受動スキル:なし
武器スキル:弓
(チャージショット、アローレイン、ハートシーカー、ゴッドスレイヤー)
魔法スキル:時空魔法
(テレポート、スロウ、クイック、ヴェール、スラッシュ)
生活魔法
(清、火、水)
=============================================
「レベル十八!?」
思わず声が出た。
前に確認した時は、まだ一桁だったはずだ。
ここ最近の魔物狩りの成果だろう。
さらに弓技も増えている。
≪ゴッドスレイヤー≫なんて、名前からして物騒だ。
時空魔法も増えていた。
≪クイック≫以外に、≪ヴェール≫と≪スラッシュ≫という見慣れない魔法がある。
俺はマナに尋ねた。
「この二つはどんな魔法なんだ?」
マナは無邪気に答える。
「≪ヴェール≫は指定した空間を歪ませて見えなくする魔法らしいです」
「≪スラッシュ≫は空間そのものを刃物みたいに切り裂く魔法ですね」
俺は思わず雪乃さんを見る。
雪乃さんも唖然としていた。
……どっちもヤバくないか?
続いて雪乃さんを鑑定する。
=============================================
名前:鈴木 雪乃 年齢:28歳
職業:斥候 能力:千眼の先見
レベル:24
固有スキル:
気配察知、気配遮断、韋駄天、罠感知、罠解除
受動スキル:
千里眼、電光石火
武器スキル:小剣
(カットイン、ホークブレイド、ソニックピアス、牙突、瞬穿、千本桜、疾風陣)
魔法スキル:なし
=============================================
「レベル二十四……」
前回鑑定した時の俺を軽く超えている。
さらに新しく≪罠感知≫と≪罠解除≫も増えていた。
今は必要性を感じないが、今後は間違いなく役立つだろう。
そして小剣技も大幅に増えている。
「この技はどんな感じなんだ?」
雪乃さんに聞いてみる。
「≪牙突≫と≪瞬穿≫は単体への高威力攻撃ですね」
「特に≪瞬穿≫は暗殺向きだと思います」
「≪千本桜≫と≪疾風陣≫は範囲攻撃です」
「全体攻撃技がなかったので助かります」
嬉しそうに説明しているが、
暗殺向きって……。
うん。
雪乃さんは怒らせないようにしよう。
最後は俺だ。
=============================================
名前:佐伯 一樹 年齢:46歳
職業:商人 能力:万物の理
レベル:32
固有スキル:
鑑定、分解、分析、再生
受動スキル:
経験値倍化、異相共鳴、剛腕無双
武器スキル:棍棒
(連撃、兜砕き、大車輪、乱打、潰地敲、破軍星)
魔法スキル:なし
=============================================
「レベル三十二か……」
数字だけ見れば高い。
だが、最近の成長率は二人の方が明らかに上だ。
俺はここしばらく料理や加工ばかりしていた。
そのツケが回ってきたのだろう。
今後は俺も積極的に魔物狩りへ参加しないと置いていかれそうだ。
それにしても――。
俺、本当に商人なのか?
≪剛腕無双≫なんて受動スキルまで増えている。
棍棒技もまた増えていた。
≪潰地敲≫と≪破軍星≫は、どうやらどちらも範囲攻撃らしい。
なんだかどんどん攻撃特化型になっている気がする。
能力名の≪万物の理≫もよく分からない。
物理攻撃能力のこと……ではないよな。
それに≪異相共鳴≫も意味不明だ。
俺は自分のステータスを見つめながら首を傾げた。
――俺って、一体なんなんだろう。




