64 (閑話)マナから見た二人
最近の二週間ほど、私たちは拠点に籠もって生活している。
三人で過ごす毎日は穏やかで、とても楽しい。
佐伯さんはその間ずっと、パンを焼いたり、ドライフルーツやシロップ、塩を作ったりしていた。
三人分の食事作りは、私と雪乃さんの担当だ。
雪乃さんは料理をしながらも、佐伯さんが美味しそうに食べる姿をいつも嬉しそうに眺めている。
そういえば、ワイン作りにも挑戦した。
私と雪乃さんでヤマブドウを踏み潰し、佐伯さんが出来上がったブドウ汁を丁寧に樽へ詰めていく。
その作業を見つめる雪乃さんの目は、とても優しかった。
魔物狩りや素材収集にも三人で出かける。
やっぱり佐伯さんと雪乃さんは強い。
最近は本気で、この二人が最強なんじゃないかと思うことがある。
グレートボアなんて、佐伯さんが棍棒を一振りするだけで倒してしまう。
ワーラットが十匹以上現れても、雪乃さんが≪韋駄天≫で一瞬のうちに片付けてしまう。
私の出番なんてないんじゃないかと思うこともある。
だけど、そんな時でも二人は必ず声をかけてくれる。
「マナ、先制攻撃!」
「援護射撃頼む!」
言われた通りに攻撃すると、戦闘後に雪乃さんが頭を撫でてくれる。
「助かったよ。ありがとうね、マナ」
その言葉が嬉しい。
近頃は二人とも「茉奈ちゃん」ではなく「マナ」と呼んでくれる。
それが少しだけ誇らしかった。
なんだか本当のお父さんとお母さんみたいだ。
周辺を探索している時も、雪乃さんは≪気配察知≫を使いながら佐伯さんのことを見ている。
器用だなと思う。
たまに佐伯さん抜きで、私と雪乃さんだけで周辺警備に出ることもある。
その時の雪乃さんは、分かりやすいくらい残念そうな顔をしている。
ちょっと可哀想になるくらいだ。
でも村へ戻ると――。
「お帰り。怪我してない?」
佐伯さんがそう声をかける。
すると雪乃さんは顔を真っ赤にしながら、
「た、ただいまです!」
「はい! 怪我はありません!」
と満面の笑みで答える。
その様子を見ていると、たまには別行動も悪くないのかもしれないと思ってしまう。
ある日。
佐伯さんが大豆から作る醤油の研究をしていた。
雪乃さんは少し離れた場所から、その様子をうっとりと眺めている。
私は意を決して、小声で聞いてみた。
「そんなに好きなら、告っちゃえばいいじゃん」
すると雪乃さんの肩が大きく跳ねた。
顔が一瞬で真っ赤になる。
「む、無理だよ……」
泣きそうな声だった。
「私なんか相手にしてもらえないよ……」
さらに小さな声で続ける。
「それに……」
「この気持ちを伝えたら、今の関係でいられなくなる気がして……」
そこまで言うと、雪乃さんの目から涙がこぼれた。
私は思わず固まってしまう。
ここまで本気だったんだ。
完全に恋する女の人じゃないか。
これは雪乃さんから告白するのは無理そうだ。
となると――。
佐伯さんから動いてもらうしかない。
でもなぁ。
佐伯さん、ものすごく鈍感だからなぁ……。
私は小さくため息をついた。




