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59 ユリウス

査定結果は金貨一枚と銀貨三十枚だった。


「量は前回より少ないのに、査定額は多いんですね」


率直な感想を口にすると、ヨーゼフさんが呆れたように肩をすくめた。


「そりゃ当然だろ」


「フロッガーの皮があれだけあれば、査定額も跳ね上がるってもんだ」


「なるほど、そんなものですか」


「そんなもんだ」


ヨーゼフさんは豪快に笑う。


俺たちは代金を受け取り、礼を言ってギルドの出口へ向かった。


すると背後から声が飛んでくる。


「おい! あんた、少しいいか?」


振り返ると、そこには赤い短髪の男が立っていた。


さっき俺たちに装備のことを教えてくれた男だ。


その隣には、フロッガー討伐の際に助けたカミルもいる。


俺は二人に向かって頭を下げた。


「先ほどはありがとうございました」


「何も知らなかったので、あのままだったら面倒なことになっていたと思います」


そう礼を言ったあとで尋ねる。


「何か御用ですか?」


男はニヤリと笑った。


「いやなに。カミルを助けてくれたらしいな」


「こいつは俺の弟分なんだ」


そう言って握手を求めてくる。


カミルはその横で頭を下げていた。


俺はその手を握り返す。


「お怪我は大丈夫ですか?」


するとカミルが笑顔を見せた。


「あんたたちが早めに助けてくれたおかげで浅い傷で済んだ」


「二、三日もすれば仕事に戻れそうだ」


「本当にありがとう」


「それは良かった」


俺も自然と笑顔になる。


すると赤髪の男が胸を張った。


「俺はユリウス。金級冒険者だ」


「私はカズキです」


「こちらは妻のユキノと娘のマナです」


雪乃さんとマナも軽く頭を下げる。


ユリウスは感心したように頷いた。


「へぇ。冒険者にしちゃ随分と上品だな」


「最初に見た時は、辺境伯の紋章入り装備なんて着てるからどうしたもんかと思ったぜ」


そう言って豪快に笑う。


俺も苦笑しながら答えた。


「あの装備は偶然手に入れただけです」


「そんな意味があるなんて知りませんでしたよ」


「教えていただいたおかげで、すぐに装備を新調できました」


するとユリウスは満足そうに頷く。


そこで以前から気になっていたことを聞いてみた。


「ところで、その辺境伯という方は、どうしてそんなに恨まれているんですか?」


するとユリウスの表情が曇る。


「カズキは他所から来たんだな」


「この辺にいる連中の多くは、あいつに恨みしか持ってねぇよ」


苦虫を噛み潰したような顔だった。


話によると、少し前までギルモア辺境伯は富国強兵政策を推し進めていたらしい。


その結果、


・無理な重税


・強制的な徴兵


が行われたという。


重税によって土地や家を手放した者も多い。


徴兵された若者たちは領都へ送られ、魔物侵攻が続く地域の防衛任務に就かされているらしい。


命を落とした者も少なくないという。


さらに酷い場所では、村そのものが立ち行かなくなった。


夜逃げ同然で村を捨てた住民もいたそうだ。


そして、その途中で魔物に襲われた者も多かったという。


(もしかして……)


俺はふと、今の拠点となっている廃村を思い出した。


(あの村も、重税が原因で捨てられたのかもしれないな)


そんなことを考えながら話を聞いていると、一つ疑問が浮かぶ。


「それだけ酷い状況だったなら、もっと街全体が暗い雰囲気になっていてもおかしくないと思うんですが」


そう尋ねると、ユリウスは「ああ」と頷いた。


「それはゼストだからだな」


「どういうことです?」


「ゼストの町長が辺境伯に反発したんだよ」


「富国強兵政策には従わないってな」


「それで周辺の村や町をまとめて自治区を作った」


俺は思わず目を見開く。


「自治区?」


「そうだ」


「今のゼストはギルニス自治区の中心地だ」


「形式上は辺境伯領内だが、実際には自治で回している」


「だからここは、ギルモア領の街ってよりギルニス自治区の街なんだよ」


なるほど。


言われてみれば納得だった。


ここへ来るまでに立ち寄った村々とは空気が違う。


閉塞感がない。


人々の表情にも余裕がある。


そこで、もう一つ気になっていたことを尋ねた。


「そういえば、ここへ来る途中に人のいない村がありました」


「つい最近まで人が住んでいたような感じだったんですが」


ユリウスはすぐに答えた。


「ああ、ルッツ村だな」


「あそこは富国強兵政策で立ち行かなくなった村だ」


「今は住民の一部がゼストへ移り住んでいる」


そしてギルドカウンターの方へ視線を向けた。


「あそこにいるエリーナも、確かルッツ村の出身だったはずだ」


俺たちは思わず顔を見合わせた。


まさか、こんなところで話が繋がるとは思わなかった。


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