57 試し斬り
冒険者となり、装備を一新したところで、雪乃が突然言い出した。
「ちょっと試し斬りがしたい」
物騒な発言に、俺とマナは顔を見合わせる。
そして同時に吹き出した。
「俺も試してみたいな」
「私もです!」
結局、三人揃って街の外へ向かうことになった。
雪乃が≪気配察知≫を使う。
しばらくして彼女が足を止めた。
「門から少し離れた場所に魔物の群れがあります。それと……人の気配も四つ」
俺たちは顔を見合わせ、その方向へ向かった。
しばらく進むと、四人組の冒険者が見たことのない魔物に囲まれていた。
数で押し込まれ、今にも崩れそうな状態だ。
俺は礼儀として大声を張る。
「助けに入っても構わないか!」
返ってきたのは弱々しい声だった。
「頼む……!」
俺はすぐに≪鑑定≫を発動する。
魔物の名はフロッガー。
大型の蛙のような姿をしていた。
「行くぞ!」
俺が叫ぶと同時に、マナが≪アローレイン≫を放つ。
無数の矢が降り注ぎ、数体のフロッガーを射抜く。
だが群れの勢いは止まらない。
そこへ雪乃が≪韋駄天≫を発動した。
一瞬で距離を詰め、小剣を振るう。
銀閃が走るたび、フロッガーたちが次々と倒れていく。
俺も負けじと駆け出した。
「おおおおっ!」
≪大車輪≫を発動し、新しい棍棒を振り回す。
鉄芯入りの棍棒は今までとは別物だった。
俺は勝手に【ジャック式鉄芯棍棒】と呼ぶことにしている。
振るうたびに凄まじい衝撃が伝わり、直撃したフロッガーが吹き飛んでいく。
これ、本当に棍棒か?
ハンマーじゃないのか?
そんなことを思うほどの威力だった。
雪乃の新しい小剣も見事だった。
軽く振るっただけに見えるのに、フロッガーは次々と絶命していく。
マナの新しい弓も絶好調だ。
援護射撃が的確に急所へ吸い込まれていく。
戦闘はあっという間に終わった。
俺たちは無傷。
囲まれていた冒険者たちも軽傷で済んだようだ。
冒険者の一人が近寄ってくる。
「助かったよ。俺はこのパーティのリーダー、カミルだ」
俺も名乗り返した。
「俺はカズキ。こっちは妻のユキノで、あっちは娘のマナだ」
するとカミルは感心したように言った。
「あんたたち、強いな」
ここは宣伝のしどころだ。
俺は棍棒を軽く持ち上げる。
「この武器のおかげさ。ジャック武具店で新調したばかりなんだ」
すると仲間の冒険者たちからも、
「へぇ、ジャック武具店か」
「今度見に行ってみるかな」
などという声が聞こえてきた。
よし。
ジャックさん、宣伝成功です。
俺が心の中でガッツポーズをしていると、カミルが首を傾げた。
「ちなみに、あんたたち金級か?」
「いや、鉄級」
そう答えた瞬間、カミルたちの顔が固まった。
「おいおい……」
「助けてもらった立場で言うのも何だけど、それは無茶だぞ」
「子供連れて何やってんだ」
「勇気と無謀は紙一重って言うが、これは無謀寄りだ」
本気で心配されてしまった。
どうやら俺たちの実力はランク以上らしい。
その後、フロッガーの素材について聞くと、
倒した者の取り分になるのが冒険者の暗黙のルールらしい。
俺たちはカミルたちと別れたあと、フロッガーの死体に聖水を撒いた。
黒い靄が霧散したのを確認してから≪分解≫を使う。
残ったのは、ぬめり気のある皮だった。
≪分析≫を使う。
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素材:フロッガーの皮
防水性に優れた素材。
加工することで防水布として利用可能。
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「防水布か」
便利そうだ。
便利そうなんだが――。
俺は手にした皮を見る。
ぬるぬるしている。
見た目も触感も正直かなり気持ち悪い。
「……これ、本当に売れるのか?」
そんな不安を抱きながら、三人で手分けして回収するのだった。




