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52 ゼストでの関係性

翌日は休養日と決めていたため、三人とも好きなように過ごすことにした。


朝食を囲んでいると、雪乃さんがふと尋ねてくる。


「佐伯さんは今日は何をする予定なんですか?」


俺はパンを口に運びながら答えた。


「昨日採ってきたヤマブドウを使って、シロップ作りとドライフルーツ作りかな」


「あとは周辺を散策して収集したり、料理したり。そんな感じでのんびり過ごそうと思ってる」


すると雪乃さんが笑う。


「昨日とあまり変わらないじゃないですか」


そして少し身を乗り出した。


「私、今日は佐伯さんのお手伝いをします」


その言葉に、今度は茉奈ちゃんが勢いよく手を挙げる。


「私もお手伝いしたいです!」


そんなわけで、結局この日も三人で過ごすことになった。


朝食後、俺は雪乃さんにヤマブドウのシロップ作りを教えた。


雪乃さんは思った以上に楽しそうで、真剣な顔で鍋と向き合っている。


時折、


「これくらいでどうですか?」


と味見を求めてくるので、俺は試食係に徹する。


雪乃さんは俺の反応を嬉しそうに眺めながら、少しずつ味を調整していた。


その間、俺は茉奈ちゃんと一緒にドライフルーツ作りの仕込みを進める。


茉奈ちゃんは俺の説明を真剣に聞き、一つひとつ丁寧に作業していく。


その表情は本当に楽しそうだった。


最初に出会った頃の不安げな姿が嘘のようだ。


俺はそんな茉奈ちゃんを見ながら思う。


この笑顔が失われることのない日々が続けばいい。


心からそう願った。


午前中の作業を終え、少し早めの昼食を取る。


食後は三人で周辺の散策へ出かけた。


目的は素材収集と魔物狩りだ。


この日も角うさぎやワーラット、グレートボアを数体ずつ狩ることができた。


倒した魔物には聖水を使い、≪分解≫で素材を回収していく。


正直、この辺りの魔物は今の俺たちにとって大きな脅威ではない。


それでも周辺の安全確保と食料調達のため、狩りは続ける価値がある。


それに昨日食べた角うさぎの肉には、敏捷性向上の効果があった気がする。


もし本当に能力向上につながるなら、将来の強敵との戦いに備える意味でも無駄にはならない。


そうして一日かけて様々な素材を集め、夕方には村へ戻った。


夕食の準備をしている最中、ふと思いついてパンに≪分解≫を使ってみる。


するとパンは二種類の白い粉と、小さな黄色い塊へと分かれた。


≪鑑定≫してみると、白い粉は小麦粉と塩。


黄色い塊はバターだった。


「これは使えるな……」


俺は何個かのパンを分解し、小麦粉と塩、バターを確保した。


そしてそのバターを使って、グレートボアの肉を焼く。


塩で味を整えたシンプルなステーキだ。


だが効果は絶大だった。


「昨日の肉も美味しかったけど、今日の方が好きかも!」


「バターが入るだけでこんなに違うんですね!」


雪乃さんと茉奈ちゃんは大絶賛である。


その様子を見ていると、もっと美味しいものを作ってやりたいという欲が湧いてくる。


そのためにも、ゼストでの買い出しは絶対に成功させなければならない。


夕食後。


片付けを終えたところで、雪乃さんが口を開いた。


「明日ゼストへ行きますけど、私たちの関係ってどう説明します?」


俺と茉奈ちゃんは同時に首を傾げる。


「異世界から召喚されましたって言っても、普通は信じてもらえないと思うんです」


「だから何か設定を決めておいた方がいいかなと」


言われてみれば、その通りだ。


どうしたものかと考えていると、茉奈ちゃんが元気よく手を挙げた。


「親子でいいと思います!」


思わぬ提案に俺は目を瞬く。


だが悪くない案ではある。


「父親と娘二人の旅ってことにするか?」


そう言うと、雪乃さんが首を横に振った。


「それは少し無理があります」


「私と茉奈ちゃん、十七歳も離れてますし」


そして真顔で続ける。


「夫婦と一人娘の三人旅が無難だと思います」


「いやいや、それこそ無理があるでしょう」


俺は思わず苦笑した。


「俺と雪乃さんだって十八歳差ですよ」


「それに、こんなおじさんの妻役なんて申し訳ないです」


すると雪乃さんは少しだけ頬を染めながら言った。


「私は佐伯さんの妻役なんて光栄ですよ」


「それに、その方が余計な詮索も減ると思いますし」


妙に力の入った口調だった。


その横で茉奈ちゃんがニヤニヤしている。


「私は雪乃さんの案に賛成です!」


結局、二対一だった。


俺の意見はあっさり押し切られ、夫婦と一人娘という設定に決まる。


さらに話し合いを続けた結果、


「魔物の脅威を避けながら定住先を探して旅をしている家族」


ということに落ち着いた。


話し合いが終わり、眠る準備をしながら考える。


本当に夫婦設定で良かったんだろうか。


俺としては少し申し訳ない気持ちが残る。


だが雪乃さんも茉奈ちゃんも納得しているようだった。


なら、今はそれでいいのかもしれない。


そう自分に言い聞かせながら、俺は静かに横になった。


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