50 魔物狩り
聖水を汲み終えると、俺たちは三人で畑へ向かった。
雪乃さんの報告どおり、いくつかの作物が育っている。
俺は片っ端から≪鑑定≫と≪分析≫を使っていった。
一つ目はキャニロという根菜だった。
爽やかな甘みと独特の青臭さがあるが、加熱すると甘みが増すらしい。
見た目も特徴も、どう考えてもニンジンだ。
二つ目はポジャイモ。
こちらも根菜で、加熱すれば美味しく食べられるらしい。
ただし芽には毒があるとのこと。
どう見てもジャガイモだった。
三つ目はポポルという豆。
加熱すると甘みが出るらしい。
見た目は枝豆そのものだ。
そこで俺はふと思う。
もしかして――。
「このポポル、大豆の仲間なんじゃないかな」
二人が首を傾げる。
「もしそうなら、味噌や醤油が作れるかもしれません」
その瞬間、二人の目が大きく見開かれた。
「味噌!?」
「醤油ですか!?」
俺は頷く。
「まだ確定じゃないですけどね。ちょっと実験してみたいです」
二人は嬉しそうに顔を見合わせた。
その後、晩飯用に作物を少しだけ収穫する。
続いて、雪乃さんが見つけたブドウらしき植物を確認しに向かった。
結果はヤマブドウだった。
「昔、ワインの生産体験をしたことがあるんです」
雪乃さんがそう言う。
ならば樽が手に入れば挑戦できるかもしれない。
俺自身はワイン造りの経験はないが、多少の知識はある。
これはこれで面白そうだ。
その後、俺たちは魔物を探して村の外を歩き回った。
しばらくすると角うさぎが三匹現れる。
今となっては敵ではない。
あっさりと倒した後、死体に聖水をかけてみた。
すると黒いモヤのようなものがふわりと浮かび上がり、霧散していく。
その状態で≪分析≫を使用する。
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素材:角、肉
角はナイフなどの素材となる。
肉は食用可。
食すことで数分間、敏捷性がほんの少し上昇する。
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「やっぱりだ」
俺は二人に結果を伝える。
聖水によって魔物肉は食べられるようになるらしい。
そして、もう一つ試したいことがあった。
ずっと使い道がよく分からなかった≪分解≫だ。
試しに角うさぎへ使ってみる。
すると死体が、
角、
肉、
その他の素材、
に分かれた。
三人とも目を丸くする。
「有能だろ、≪分解≫」
思わず得意げに言うと、二人が笑った。
茉奈ちゃんは角と肉を収納していく。
そこで俺はふと思った疑問を口にした。
「生きている魔物には使えないのかな?」
「あと加工品に使ったらどうなるんだろう。例えばパンとか」
「確かに気になりますね」
「試してみたいです!」
二人も興味津々だ。
そこで雪乃さんの≪気配察知≫を頼りに、新たな魔物を探すことにした。
少し進んだ先に、やや大きな魔物の反応があるらしい。
向かってみると、そこには巨大なイノシシのような魔物がいた。
≪鑑定≫を使う。
グレートボア。
角うさぎとは比べ物にならない迫力だ。
筋肉の塊のような体躯に、鋭い牙。
突進されたらひとたまりもないだろう。
俺は試しに生きたままのグレートボアへ≪分解≫を使ってみた。
だが、何も起きない。
どうやら生きている相手には使えないらしい。
その直後。
グレートボアがこちらに気付いた。
猛烈な勢いで突進してくる。
「来ます!」
茉奈ちゃんが矢を放つ。
矢は右目に突き刺さった。
だが勢いは止まらない。
続いて雪乃さんが音もなく接近する。
小剣が閃き、脇腹を深く切り裂いた。
それでも止まらない。
グレートボアは一直線に突っ込んでくる。
俺は棍棒を握り直した。
そして――。
渾身の力で振り下ろす。
鈍い衝撃音が響いた。
グレートボアの動きが止まる。
その巨体がぐらりと揺れ、地面へ崩れ落ちた。
絶命したようだ。
死体へ聖水をかける。
今回も黒いモヤが霧散していった。
その後≪分解≫を使うと、
皮、
肉、
その他の素材、
へと分解された。
「なるほどな」
少なくとも死体相手には問題なく使えるらしい。
茉奈ちゃんが素材を収納する。
俺たちは顔を見合わせた。
次に試すべきことは決まっている。
「よし」
「廃村に戻って、魔物肉の調理に挑戦だ」
三人は頷き、拠点へ向かって歩き出した。




