↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/113

05 国の状況説明①

辺境伯は静かに目を閉じる。


その表情には疲労と怒りが滲んでいた。


「まずは、この国の現状を話そう」


重々しい声が広間に響く。


「――この国は腐敗している」


その言葉に、高校生たちが顔を見合わせた。


辺境伯は構わず続ける。


「元々、我がギルモア領は隣接する三つの領地と協力関係を築いていた」


「アルベール伯爵領」


「レイモンド伯爵領」


「エドワード伯爵領」


「そして我がギルモア領だ」


「四領は交易を行い、人々は互いの領地を行き来しながら平穏に暮らしていた」


辺境伯は拳を握り締めた。


「だが六か月前、その平穏は終わった」


広間の空気が張り詰める。


「エドワード領が滅んだのだ」


小学生の少女が息を呑む音が聞こえた。


「敵は魔物」


「わずか一か月足らずで領地は壊滅した」


俺は眉をひそめる。


魔物。


ゲームや小説では聞き慣れた言葉だが、現実に聞くと妙な違和感があった。


辺境伯は続ける。


「魔物討伐は本来、国の役目だ」


「我ら領主は領地防衛の兵は持つ。しかし討伐軍は持たぬ」


「国が各領の軍備増強を反逆行為と定めているからだ」


「その代わり、我らは国へ多額の税を納めている」


なるほど。


権力集中のために軍事力を国が管理しているのか。


理屈としては理解できる。


「故に我らは王宮へ救援を求めた」


「王宮は了承した」


「国軍を派遣すると約束した」


辺境伯の声が低くなる。


「だが――来なかった」


広間が静まり返る。


「一か月経っても」


「二か月経っても」


「国軍は現れなかった」


その後、アルベール領から救援要請が届いたという。


魔物の侵攻。


辺境伯は再び王宮へ訴えた。


だが結果は同じだった。


国軍は来ない。


そしてアルベール領も滅んだ。


「今やエドワードとアルベールは魔物の巣窟となっている」


辺境伯は苦しげに言った。


「逃げ延びた民もいる」


「だが多くは魔物に喰われた」


広間の空気が重くなる。


誰も言葉を発しない。


「これに激怒したレイモンド伯爵は王宮へ直接抗議に向かった」


辺境伯の顔に怒りが浮かぶ。


「結果は捕縛」


「そして一族郎党まとめて処刑だ」


高校生たちが息を呑んだ。


「レイモンド領は王領となった」


「さらに以前より重い税が課せられている」


「そして今、そのレイモンド領にも魔物が侵攻しているとの報告が届いている」


辺境伯は一度言葉を切った。


「だが国軍が動いたという話は聞かぬ」


沈黙。


その後、辺境伯は吐き捨てるように言った。


「そんな状況でありながら――」


怒りが滲む。


「王都では側妃が第二王女を産んだとして盛大な祝賀パレードが開催される」


「各領主は祝いの品を持参し参列せよとの命令まで届いた」


辺境伯の拳が震えていた。


「三つの領地が滅びかけているというのに」


「何を考えているのだ、王宮は」


誰も口を挟まない。


辺境伯の怒りが本物だと分かったからだ。


やがて彼は大きく息を吐いた。


「そんな折、一人の文官が古い文献を持ってきた」


「異世界人召喚の術について記された文献だ」


高校生たちがざわつく。


辺境伯は続ける。


「文献によれば、召喚された異世界人には神より特別な能力が与えられる」


「その力は一騎当千」


「ある者は軍勢を薙ぎ払い」


「ある者は無数の民を癒すという」


「ただし与えられる力は一人につき一つ」


「故に複数人を召喚することが望ましいと記されていた」


そして辺境伯は俺たち全員を見渡した。


「さらに、その文献にはこうも書かれていた」


一拍置く。


「五百年前、この世界を救った勇者たちもまた異世界人であった、と」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。