48 仕込み作業
俺は茉奈ちゃんと一緒に、「聖水の湧く泉」を探すことにした。
雪乃さんの推測では、召喚された広間のどこかにあるのではないかという。
仕込み作業には大量の水が必要だ。
まずは生活用水の確保を優先することにした。
広間の中を歩き回っていると、かすかに水の流れる音が聞こえてきた。
音を頼りに進むと、広間の隅に小さな泉を見つける。
試しに≪鑑定≫を使う。
すると流れてきた情報は――
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聖水
エルモア神の特別な恵みが与えられた水。神水。
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さらに≪分析≫を行う。
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素材:聖水
飲むことで状態異常を回復し、体力回復の効果を得られる。
聖なる力を宿しており、使用することで瘴気を除去することができる。
薬を作成する際に、この水を使用することで高い薬効を得られる。
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「見つかったな」
「はい!」
思っていたよりも簡単に生活用水を確保できたことに、二人で顔を見合わせて笑う。
まずは茉奈ちゃんに≪念動収納≫を使って、大量の聖水を確保してもらう。
その後、以前休憩に使った小屋へ移動した。
この小屋には竈と窯がある。
さらに大きな瓶まで残されていた。
生活拠点としては十分だ。
大瓶に聖水を移し終えると、早速作業を開始する。
俺は茉奈ちゃんに塩の作り方を教えた。
木から採取した白い液体を水に混ぜ、それを鍋で煮詰める。
水分が飛びきれば塩だけが残る。
説明を聞いた茉奈ちゃんは、すぐに作業に取り掛かった。
鍋をかき混ぜながら真剣な表情をしている。
俺はその隣で酵母とシロップの仕込みを始めた。
朝食で食べたモンペアを使う。
酵母作りは簡単だ。
洗ったモンペアを切り、水に浸けるだけ。
あとは数日待てばいい。
続いてシロップ作り。
材料は二種類。
モンペアとクラスタだ。
クラスタは日本でいうマルベリーに近い果実らしい。
それぞれ別の鍋に入れて潰し、弱火でじっくり煮詰めていく。
焦がさないように時々かき混ぜながら、水分を飛ばす。
俺はジャムに近い、とろりとした状態まで煮詰めるのが好きだ。
しばらくすると甘い香りが小屋の中いっぱいに広がった。
すると隣で塩作りをしていた茉奈ちゃんが、大きく鼻をひくつかせる。
「うわぁ……! すごくいい匂い!」
その反応が可笑しくて、思わず笑ってしまう。
「少し味見するかい?」
「いいの!?」
ぱっと顔を輝かせる。
俺はスプーンですくい、ふうふうと息を吹きかけて冷ます。
「まだ熱いから気を付けてな」
そう言って口に運ぶと、茉奈ちゃんは目を丸くした。
そして次の瞬間、
「おいしい!!」
満面の笑みを浮かべる。
その顔を見ていると、不思議な気持ちになった。
もし俺に子供がいたなら、ちょうどこれくらいの年齢だったのだろうか。
そう思うと同時に、茉奈ちゃんの両親のことが頭をよぎる。
突然異世界へ連れて来られた娘を、今も必死に探しているのかもしれない。
胸の奥が少し痛んだ。
そんなことを考えているうちに、シロップも塩も完成した。
気が付けば昼が近い。
俺たちは昼食の準備を始める。
とはいえ大したものではない。
燻製肉を香草と塩で炒めるだけだ。
出来上がったシロップは別皿に移し、パンにつけて食べることにした。
準備が終わった頃、ちょうど雪乃さんが戻ってきた。
小屋に入るなり、大きく目を見開く。
「うわっ、すごくいい香り!」
その笑顔を見て、なんだか嬉しくなった。
どうやら昼食は成功らしい。
「よし」
俺は二人を見回した。
「昼飯にしようか」
その言葉に、二人は嬉しそうに頷いた。




