↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/112

43 教会

道行く人にエルニア教の教会の場所を尋ねる。


どうやら市場からは少し離れた場所にあるらしい。


俺たちは教えられた方向へ向かって歩き出した。


しばらく進むと、大きな石造りの建物が見えてくる。


近づくにつれ、その威容に圧倒された。


高く伸びた尖塔。


磨き上げられた白い石壁。


決して派手ではないが、見る者に神聖さを感じさせる佇まいだ。


思わず足を止めて見上げていると、


「どうかなさいましたか?」


穏やかな声がかけられた。


振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。


年齢は三十代後半ほどだろうか。


落ち着いた雰囲気をまとい、優しげな笑みを浮かべている。


俺は軽く頭を下げた。


「いえ、失礼しました」


「私たちは旅の者でして、旅の無事を祈らせていただこうと思い、立ち寄らせていただいたのです」


もちろん半分は嘘だ。


本当の目的は教会と聖水について調べることにある。


しかし女性は疑う様子もなく微笑んだ。


「左様でございましたか」


「エルニア様のご慈悲は、どなたにも分け隔てなく注がれます」


「あなた方に神の祝福がありますように」


「どうぞ中へお入りください」


そう言って教会の扉を開いてくれる。


俺たちは礼を述べ、その後に続いた。


中へ入ると、空気が変わったような気がした。


床も壁も綺麗に磨かれており、静寂が支配している。


そして奥には巨大な女神像が据えられていた。


その姿を見た瞬間、俺は目を見開く。


廃村で見た女神像と同じだった。


女性は女神像へ一礼すると、俺たちへ向き直る。


「いつもよりエルニア様のお顔が柔らかく見えますね」


そう言いながら、女神像の前へと案内してくれた。


俺たちは言われるまま進む。


だが、そもそも祈り方など知らない。


そこで俺は女性に尋ねた。


「お恥ずかしい話ですが、私たちはこの国に来たばかりでして」


「こちらでのお祈りの作法を存じ上げません」


「よろしければ教えていただけませんか?」


女性は少しだけ不思議そうな表情を浮かべたが、すぐに微笑んだ。


「そういうことでしたか」


そして丁寧に作法を教えてくれる。


胸の前で手を組む。


軽く頭を下げる。


目を閉じる。


ただそれだけらしい。


俺たちは教わった通りに祈りを捧げた。


目を閉じた瞬間――


ほんの一瞬だけ、不思議な感覚が身体を包んだ気がした。


暖かな何かに見守られているような感覚。


だが、それもすぐに消える。


祈りを終え、俺は女性へ向き直った。


「ほんの気持ちですが、エルニア様への感謝の気持ちです」


そう言って銀貨五枚を差し出す。


女性は驚いたように目を瞬かせた後、深々と頭を下げた。


「温かいお心遣いをありがとうございます」


「エルニア様への信仰活動のため、大切に使わせていただきます」


銀貨を受け取った女性は、さらに続けた。


「こちらに聖水がございます」


「ご入用でしたら、どうぞご自由にお持ちください」


示された先を見る。


そこには小さな泉があり、澄み切った水が満ちていた。


俺たちは近くに置かれていた容器を借り、その水を汲む。


そして再び一礼して教会を後にした。


建物を出て少し歩いたところで、俺は容器を見つめる。


聖水。


後で≪鑑定≫と≪分析≫を試してみよう。


何か分かるかもしれない。


そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか昼を大きく回っていた。


俺は二人に振り返る。


「買い出しも終わったし、少し遅いけど昼飯にしようか」


「その後で宿に戻ろう」


そう言うと、雪乃さんと茉奈ちゃんは顔を見合わせ、嬉しそうに頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。