41 セル村で買い出し
俺は雪乃さんたちの部屋へ戻った。
まず茉奈ちゃんに頼み、≪次元収納≫の中に入っている収集物を出してもらう。
床の上には、草や木の実、果実が次々と積み上げられていった。
その量は相当なものだ。
しかも、どれも採取したばかりのように瑞々しい。
どうやら茉奈ちゃんの収納系スキルは、収納した時点の状態をそのまま維持できるらしい。
俺は並べられた品々を見ながら二人に声をかけた。
「これ、売れないかな?」
二人は揃って首を傾げる。
俺は説明を続けた。
「売れるなら、俺たちの資金源になると思うんだ」
「これから村で必要な物を買うだろ?」
「その時に、こういう草や木の実が売られていないか見てほしい」
「もし聞けそうなら、どこから仕入れているのかも確認してみてくれ」
そう言うと、二人は納得したように頷いた。
続けて俺は言う。
「それと、一番最初に買いたい物がある」
「大きめのリュックだ」
すると今度は二人とも不思議そうな顔をした。
俺たちには茉奈ちゃんの≪次元収納≫がある。
だが、人前で使うわけにはいかない。
それに旅人が常に手ぶらというのも不自然だ。
「要するに偽装だよ」
「荷物をリュックに入れるふりをして、実際は≪念動収納≫で収納する」
「そうすれば怪しまれずに済む」
その案に二人も納得したようだった。
その後は、廃村で生活するために必要そうな物を話し合う。
三人の所持金は合わせて銀貨三十枚。
日本円に換算すると、およそ三万円程度だ。
決して余裕のある金額ではない。
贅沢はできない。
必要最低限の物だけを揃える方針で話がまとまった。
相談を終えると、宿の主人に村について尋ねる。
話によると、村の中央に市場があり、大抵の物はそこで揃うらしい。
礼を言い、俺たちは市場へ向かった。
まず立ち寄ったのは雑貨屋だった。
予定通り、大きめのリュックを購入する。
店内には日用品や装飾品など様々な品が並んでいる。
その中で、俺はあるものに目を留めた。
店の一角に、見覚えのある草が綺麗に並べられていたのだ。
俺は店主に尋ねる。
「あれは何ですか?」
店主は得意げに笑った。
「ああ、あれか。珍しいだろ?」
「ここまで揃えてる店はなかなか無いぞ」
「手前が薬草と毒消し草、奥にあるのがルナリーフだ」
俺は感心したように頷く。
「確かに珍しいですね」
「これだけ揃えるとなると、大口の取引先でもあるんですか?」
すると店主は豪快に笑った。
「こんな田舎の村にそんなもんあるかよ」
「あれはこの前、領都ギルセニアの冒険者ギルドで仕入れてきたんだ」
俺はさらに話を広げる。
「へえ、冒険者ギルドにはそんなに薬草が集まるんですね」
「あるところにはあるんだな」
すると店主は頷いた。
「最近、大量に持ち込んだ冒険者がいたらしい」
「今は魔物騒ぎでどこも薬草不足だからな」
「ギルドも相当儲かっただろうさ」
そう言って笑う。
俺は商品の値札を確認した。
薬草は五束で銀貨五枚。
毒消し草は三束で銀貨六枚。
ルナリーフは一枚で銀貨五枚。
思わず呟く。
「高いですね……」
すると店主は肩をすくめた。
「命の値段と比べりゃ安いもんさ」
俺たちは礼を言い、店を後にした。
店を出た瞬間、俺と雪乃さんは顔を見合わせる。
茉奈ちゃんの≪次元収納≫には、薬草も毒消し草もルナリーフも大量に入っている。
しかも採取した時のまま新鮮な状態で。
冒険者ギルドが買い取っているのなら、かなりの収入になるはずだ。
「やっぱりゼストで冒険者登録しないとな」
俺がそう呟くと、二人も笑顔で頷いた。
逃亡後の資金調達の目処が、ようやく見えてきたからだ。
その後、俺たちは金物屋で鍋や食器を購入し、パン屋で保存の利く固いパンを、肉屋で燻製肉を買い込んでいった。
今夜、この村を離れる。
そのための準備は、着実に整いつつあった。




