32 谷本若葉の真の力①
魔物との戦闘を繰り返しながら、俺たちはセル村への道を進んでいた。
途中、休憩を挟むことになり、俺は木陰に腰を下ろして一息つく。
すると珍しく若葉さんが近寄ってきて、俺の隣へ座った。
どうしたのだろうと思っていると、彼女は少し俯きながら口を開く。
「勇樹君から聞きました」
その言葉に思わず背筋が伸びる。
若葉さんは意を決したように続けた。
「私も見てもらえませんか?」
「その……スキルで」
そして唇を噛みしめる。
「戦闘で何もできないのが、悔しくて」
気付けば彼女の目には涙が浮かんでいた。
俺は少し困惑しながら周囲を見回す。
まず雪乃さんと茉奈を呼び寄せる。
二人には騎士たちから見えにくい位置へ立ってもらった。
そのうえで若葉さんへ向き直る。
「若葉さんが戦闘で役に立っていないなんて、誰も思っていないよ」
彼女は顔を上げる。
「あなたの回復があるから、みんな安心して前に出られるんだ」
「少なくとも俺は、いつも助けられている」
「だから俺の力が少しでも役に立つなら、喜んで《鑑定》させてもらうよ」
そう言って《鑑定》を発動した。
すぐに情報が頭の中へ流れ込んでくる。
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名前:谷本 若葉 年齢:17歳
職業:巫女 能力:聖なる力
レベル:5
固有スキル:大いなる福音、神罰の杖
受動スキル:天啓の加護
武器スキル:杖
魔法スキル:聖魔法(ヒール、ピュリファイ、バフ、レイ)
水魔法(ウォーターボール、ウォータージェット)
雷魔法(サンダーボール、サンダーウィップ)
生活魔法(清、水、電気)
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思わず目を瞬かせる。
武器スキルに攻撃技らしいものは無い。
だが、その代わり魔法が異様に充実していた。
回復だけではない。
水魔法。
雷魔法。
さらには攻撃魔法らしき《レイ》まである。
そして何より気になったのは――。
《浄化》が無い。
不思議に思いながらも、俺は鑑定結果を若葉さんへ伝えた。
すると彼女は驚いたように目を見開く。
「私……こんなに魔法が使えるんですか?」
信じられないという表情だった。
俺は苦笑する。
「巫女って職業名に引っ張られすぎたんじゃないかな」
「回復役だと思い込んでいたから、他の魔法を試そうとしなかったんじゃない?」
若葉さんははっとした表情を浮かべた。
「確かに……」
「これから少しずつ試してみたらどうかな」
「意外な発見があるかもしれないよ」
そう言うと、彼女は力強く頷いた。
少しだけ表情も明るくなっている。
そこで俺は前から気になっていたことを尋ねた。
「そういえば、《浄化》が見当たらないんだけど」
すると若葉さんはすぐに答えた。
「あ、それは《ピュリファイ》ですね」
「最初は《浄化》って言われても全然ピンと来なかったんです」
「でも、そのうち頭の中に《ピュリファイ》って言葉が浮かんできて、使えるようになったんです」
なるほど。
名称が違うだけらしい。
さらに聞くと、彼女へ指導している騎士も聖魔法の使い手ではないとのことだった。
そもそも聖魔法を扱える人間自体が非常に少ないらしい。
だから詳しく知っている者も少ないのだという。
その話を聞いて、俺は一つ理解した。
この世界の人間だからといって、この世界の全てを知っているわけではない。
当たり前と言えば当たり前の話だ。
だが俺は、どこかで「現地の人間の言うことは正しい」と思い込んでいたのかもしれない。
これから先は情報の取捨選択も必要になるだろう。
誰が言ったかではなく、何が正しいか。
それを見極めることも、生き残るためには必要なのだと改めて実感した。




