30 夜襲
「夜襲だ!」
大きな声に叩き起こされた。
俺は跳ね起きると、傍らに置いていた棍棒を掴み、そのまま外へ飛び出す。
既に多くの者が起き出していた。
その中で、近くにいた騎士が低く呟く。
「ハンターウルフだ」
視線の先を見る。
狼によく似た魔物が八匹ほど。
牙を剥き出しにしながら、こちらを威嚇するように唸り声を上げていた。
俺は周囲へ目を向ける。
後方では茉奈が弓を構えている。
その横では雪乃さんが《気配遮断》を使い、音もなく移動していた。
気付けばハンターウルフたちの後方へ回り込んでいる。
その動きを確認した神代君が一歩前へ出た。
次の瞬間――剣が閃く。
横薙ぎの一撃。
数匹のハンターウルフが吹き飛んだ。
あれは《横一文字》か。
そう思った直後、神代君はさらに大剣を振るう。
斜めに空を切り裂くような一撃。
風を纏った斬撃が走り、別のハンターウルフたちを弾き飛ばした。
昼間までの戦い方とは明らかに違う。
神代君がこちらを見て微笑む。
俺は小さく頷き返した。
どうやら上手くいっているらしい。
俺は大声を上げながら前へ飛び出した。
ハンターウルフを威嚇するように突進する。
それに呼応するように真紀さんの火球が飛ぶ。
続いて茉奈の矢が夜闇を切り裂いた。
俺は目の前の一匹へ棍棒を振り下ろす。
鈍い音が響いた。
ハンターウルフの頭部が砕け、その場へ崩れ落ちる。
ほぼ同時に、太陽君と藤堂君も前へ出た。
槍と拳が閃き、別の個体を仕留める。
逃げようとした個体は雪乃さんが背後から始末していく。
そして残った敵へ、俺と神代君が追撃を加えた。
戦闘はあっという間に終わった。
圧勝だった。
戦いが終わると、その場にいた騎士たちが呆然とした表情を浮かべていた。
もちろんヨシュアも例外ではない。
しばらく沈黙した後、ヨシュアが咳払いをする。
「ご苦労様でした、皆さん」
「どうやら、それなりに成長されたようですね」
「私も見守り続けた甲斐がありました」
そんなことを言っている。
だが、その表情にはわずかな戸惑いが見えた。
もしかして――。
こいつら、実はそこまで強くないのか?
そんな考えが頭をよぎる。
すると神代君が近寄ってきた。
「佐伯さん」
「助かりました」
俺は首を傾げる。
「俺は何もしてないよ」
神代君は笑った。
「そんなことないです」
「佐伯さんに見てもらってから、色々考えてたんです」
「そしたら思った通りに動けました」
どうやらスキルや技を意識した結果らしい。
俺は苦笑しながら肩をすくめた。
「それは神代君自身の力だよ」
そう答えると、神代君は照れ臭そうに頭を掻いた。
その頃には高校生たちも集まっていた。
「勇樹、すげぇじゃん!」
「あんな技使えたんだな!」
「マジで助かったよ!」
口々に称賛の声が上がる。
神代君は苦笑しながら輪の中へ戻っていった。
そして何やら小声で話し始める。
すると――。
高校生たちの視線が一斉にこちらへ向いた。
俺は思わず眉をひそめる。
……もしかして。
《鑑定》のことを話したのか?
そんな予感が胸をよぎった。




