25 俺の能力
俺自身に《鑑定》を使おうと意識した瞬間、不意に情報が頭へ流れ込んできた。
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名前:佐伯 一樹 年齢:46歳
職業:商人 能力:万物の理
レベル:11
固有スキル:鑑定、分解
受動スキル:経験値倍化、異相共鳴
武器スキル:棍棒
(連撃、兜砕き)
魔法スキル:なし
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思わず目を見開く。
レベル11。
雪乃さんや茉奈ちゃんとは比べものにならない数字だった。
おそらく《経験値倍化》の影響なのだろう。
しかし、《異相共鳴》というスキルはまったく意味が分からない。
能力欄の《万物の理》という言葉も気になる。
俺は表示された内容を二人へ伝えた。
「レベルがすごいですね」
雪乃さんが驚いたように言う。
「やっぱり《経験値倍化》の影響なんでしょうね」
続いて茉奈ちゃんが首を傾げた。
「そういえば戦闘の時、佐伯さんが棍棒で叩いたゴブリン、頭が潰れてましたよね」
「この《兜砕き》っていうのが関係しているんでしょうか?」
「あと、《分解》って何なんですか?」
俺は苦笑する。
「それが俺にもよく分からないんだ」
「今日の移動中に使えるようになった感覚はあるんだけど、まだ試していない」
「ただ、何となく素材と不要な部分に分けられるような気がしている」
「だから魔物の解体を見学させてもらったんだよ」
すると雪乃さんが真剣な表情で頷いた。
「それも十分有用なスキルですね」
「ただ、使いどころは慎重に考えた方がいいと思います」
「少なくともヨシュアさんたちと行動を共にしている間は、見せない方が良いでしょう」
俺も同意する。
「そうだね」
まだこの世界のことは分からない。
自分の手札を安易に見せるべきではないだろう。
互いの情報を共有した後、今後の方針を再確認する。
情報収集。
戦力の把握。
そして生存。
当面の目的はその三つだった。
話が終わり、俺は二人に礼を言って部屋を後にした。
自室へ戻ると、太陽君はすでに眠っていた。
規則正しい寝息が聞こえる。
少しだけ申し訳なく思いながら、俺は彼に《鑑定》を使ってみる。
すぐに情報が流れ込んできた。
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名前:谷本 太陽 年齢:18歳
職業:騎士 能力:槍聖
レベル:5
固有スキル:神槍の使い手、神聖なる守り
受動スキル:神の盾
武器スキル:槍
(薙ぎ払い、一閃)
盾
(シールドバッシュ)
魔法スキル:土魔法
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レベルは雪乃さんと同程度。
だが能力欄の《槍聖》という文字が目を引く。
固有スキルと受動スキルを見る限り、攻守のバランスが取れた前衛型なのだろう。
《神槍の使い手》が攻撃。
《神聖なる守り》と《神の盾》が防御。
騎士という職業らしい構成だ。
今日の戦闘で見せていた広範囲の一撃は、おそらく武器スキル《薙ぎ払い》だ。
そんなことを考えていると――
太陽君が突然びくりと身体を震わせた。
「っ!」
そのまま目を開く。
俺は慌てて声をかけた。
「ごめん。起こしちゃったかな」
太陽君は眠そうに目を擦る。
「いえ……なんだか変な感じがして」
そう言って小さく首を傾げた後、柔らかく笑った。
「あ、お帰りなさい」
「先に休ませてもらっていました」
「ただいま」
俺がそう返すと、太陽君は安心したように頷く。
「おやすみなさい」
そして再び布団に潜り込み、ほどなくして静かな寝息を立て始めた。
俺はそんな姿を見ながら、自分のベッドへ腰を下ろす。
《万物の理》。
《異相共鳴》。
《分解》。
どれも聞いたことのない言葉ばかりだ。
商人という職業にしては妙に物騒だ。
《鑑定》はまだ分かる。
だが《分解》はどう考えても商売向きとは思えない。
それに《万物の理》。
《異相共鳴》。
名前だけでは何一つ分からない。
だが今は考えても仕方がない。
情報は少しずつ集めればいい。
そう自分に言い聞かせながら、俺も静かに目を閉じた。




