23 お願い
雪乃さんと茉奈の部屋へ移動し、俺たちは小声で話を始めた。
「俺の《鑑定》スキルなんだけど」
二人がこちらを見る。
「どうも魔物だけに使える能力じゃないみたいなんだ」
雪乃さんと茉奈が揃って首を傾げた。
「え?」
「旅の途中で色々試してみたんだよ」
俺は説明を続ける。
「魔物はもちろん、道端の草木や騎士たちが使っている武器や道具にも使ってみた」
「すると全部、情報が頭の中に流れ込んできたんだ」
雪乃さんが驚いたように目を細める。
「そんなことまで分かるんですか?」
「みたいなんだ」
俺は頷いた。
「それだけじゃない」
少し声を潜める。
「人間にも使える」
その言葉に二人の表情が変わった。
「人にも?」
「最初に試したのは、この村の村長だ」
すると茉奈が何かに気付いたように言う。
「あっ」
「村長さんが急に震えた時ですか?」
俺は苦笑しながら頷く。
「たぶん、それだな」
「人を《鑑定》すると、相手が何か違和感を覚えるみたいなんだ」
雪乃さんが腕を組む。
「それは使い方に気を付けないといけませんね」
「その通り」
俺は頷いた。
「それで二人にお願いがある」
二人が真剣な表情になる。
「道中で草木も《鑑定》してみたんだけど、薬草らしいものが結構見つかったんだ」
「今後のために、それらを集めておきたい」
雪乃さんが納得したように頷く。
俺は続ける。
「俺一人じゃ限界があるから、場合によっては二人にも採取をお願いしたい」
「そして集めた物は、茉奈ちゃんの《次元収納》で保管してほしい」
茉奈が目を丸くする。
「私がですか?」
「うん」
俺は笑った。
「薬草も素材も、いざという時に役に立つかもしれない」
「備えは多い方がいい」
「きっと今後の俺たちを助けてくれると思うんだ」
二人は顔を見合わせた。
そして同時に頷く。
「分かりました」
「協力します」
「ありがとう」
俺は素直に礼を言った。
そして本題を切り出す。
「もう一つある」
二人が再びこちらを見る。
「君たちを《鑑定》させてもらえないかな?」
一瞬だけ沈黙が落ちた。
だが二人は嫌な顔をしなかった。
俺は続ける。
「神託の宝珠に触れないと、自分の能力は確認できないって言われただろ?」
「でも俺の《鑑定》なら、ある程度分かるみたいなんだ」
雪乃さんが真剣な顔になる。
「能力やスキルが見えるかもしれない、ということですか?」
「そう」
俺は頷いた。
「情報を共有できれば、お互いを補い合える」
「誰が何を得意としていて、何が苦手なのか」
「それを把握しておくのは無駄じゃないと思う」
雪乃さんと茉奈は視線を交わした。
そして迷うことなく頷く。
「お願いします」
「私も大丈夫です」
二人の了承を得て、俺は静かに息を吐いた。
さて――。
《鑑定》がどこまで見せてくれるのか。
まずは試してみるとしよう。




