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22 ルト村

ルト村へ向かう道中、俺は荷馬車へ視線を向けた。


荷台には今日討伐した魔物が積まれている。


プレイドッグ。


ワーラット。


角うさぎ。


ビッグキャット。


そんな魔物たちだ。


ゴブリンだけは積まれていない。


騎士の話では、ゴブリンは売れる素材がほとんどなく、その場で埋めて処理したらしい。


そんな話を聞いているうちに、俺たちはルト村へ到着した。


簡単な入村手続きを終え、村の中へ足を踏み入れる。


周囲を見回した俺は、少しだけ懐かしさを覚えた。


テレビで見た昭和初期の農村。


そんな印象だった。


木造の家屋。


土の道。


荷車を引く人々。


この世界へ来て二日目だが、改めて文明水準の差を実感する。


風呂はまだ見てもいない。


トイレも水洗ではない。


食事は言うまでもなく質素だ。


そもそも調味料という文化がどれほど発達しているのかも分からない。


当然ながら電気もガスもない。


娯楽だって存在するのだろうが、俺たちの知るものとは別物だろう。


こんな世界で、俺はどれだけ生きていけるのだろうか。


そんな不安が胸をよぎる。


するとヨシュアが振り返った。


「宿へ向かう前に、谷本若葉さん」


「皆さんへ《浄化》をお願いします」


若葉さんが頷く。


そして一人ずつ白い光をかざしていった。


当然、俺も対象だ。


身体を光が包んだ瞬間、不思議な感覚が走る。


汗や埃が消えたような。


身体が軽くなったような。


そんな感覚だった。


周囲も似たような反応をしている。


不思議そうな顔を見回したヨシュアが説明する。


「《浄化》は状態異常の回復だけではありません」


「汚れを落とす効果もあります」


なるほど。


便利すぎる。


もしかすると、この世界で風呂文化が発達しなかった理由の一つなのかもしれない。


いや、それでも風呂には入りたいが。


そんなことを考えているうちに、村長の家へ到着した。


ヨシュアが前へ出る。


「お久しぶりですな、村長」


「急な訪問で申し訳ありません。本日一晩、お世話になります」


そして俺たちを示した。


「こちらの方々は辺境伯様の客人です」


「相応の待遇をお願いいたします」


村長は深々と頭を下げる。


「これはこれは」


「このような辺境の村にヨシュア様がお越しになるとは、何事かと慌てましたぞ」


そう言いながら、村長がふるりと身体を震わせた。


そして一瞬だけ周囲を見回す。


何かを警戒するような仕草だった。


ヨシュアも気付いたらしい。


「どうされましたか?」


尋ねると、村長はすぐに首を振った。


「いえ、何も」


そう答えたものの、その表情には僅かな違和感が残っていた。


だが次の瞬間には笑顔を浮かべる。


「何もない村ですが、ごゆっくりお過ごしください」


結局、それ以上の話は出なかった。


挨拶を終えた後、ヨシュアたちは魔物素材の売却へ向かう。


俺は素材の解体に興味があったため、見学を願い出た。


許可はあっさり下りた。


結果としては特に変わったことはなかった。


売却の流れを見て、素材の剥ぎ取りを見学しただけだ。


だが、この世界で魔物がどのように扱われているのかを知る良い機会にはなった。


その後、俺たちは宿へ移動する。


部屋は昨日と同じく二人一組。


同室は太陽君だった。


荷物を置いた後、食堂へ向かう。


夕食は相変わらず質素だったが、昨日ほど驚きはない。


高校生たちは今日の戦闘の話で盛り上がっている。


神代君が自慢し、


藤堂君が笑い、


真紀さんが火球の威力を語る。


そんな賑やかな食事も、やがて終わった。


食後。


俺は雪乃さんと茉奈へ声をかける。


「二人とも、少し相談したいことがあるんだけど」


二人は顔を見合わせた後、静かに頷いた。


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