21 鑑定②
その後も、俺たちはルト村へ向けて歩き続けた。
移動の途中では何度か魔物とも遭遇した。
最初のゴブリン以降は現れなかったが、その代わり動物に似た魔物が次々と襲ってくる。
大きな犬。
大きなネズミ。
大きなウサギ。
大きな猫。
見た目だけなら野生動物にも見えるが、どれも普通の生き物ではなかった。
戦闘は主に高校生たちと雪乃さん、それから俺が対応する。
戦いの前に《鑑定》を使ってみると、それぞれの名前と特徴が頭へ流れ込んできた。
大きな犬は《プレイドッグ》。
大きなネズミは《ワーラット》。
大きなウサギは《角うさぎ》。
大きな猫は《ビッグキャット》。
名前だけでなく、簡単な特徴まで分かる。
例えばプレイドッグには毒を撒き散らす性質があるらしい。
俺はその情報を雪乃さんへだけ伝えた。
《鑑定》の存在は伏せたまま、それとなく距離を取るよう促す。
すると案の定だった。
接近戦を仕掛けた藤堂君が毒を受けてしまった。
格闘主体の戦い方だから避けにくかったのだろう。
苦しそうに顔をしかめる藤堂君を見ていると、胸の奥が少し痛んだ。
俺が《鑑定》持ちだと伝えていれば、防げたかもしれない。
そんなことを考えていると、若葉さんが藤堂君へ駆け寄った。
そして手をかざす。
白い光が藤堂君を包み込んだ。
一度。
そしてもう一度。
「大丈夫?」
若葉さんが笑顔で尋ねる。
聞けば、一回目は《浄化》というスキルらしい。
毒や状態異常を取り除く効果があるという。
二回目は《ヒール》。
その名の通り、傷や疲労を回復するスキルだった。
「疲れたら言ってくださいね」
そう言って微笑む若葉さんに、皆が感謝の言葉を返す。
正直、羨ましい能力だと思った。
《浄化》か。
毒などを排除する、と言っていたな。
――なら、魔物の肉に含まれるという瘴気も消せるのだろうか?
そんな考えが頭をよぎる。
するとその時だった。
「おっ!?」
神代君が声を上げる。
「なんだこれ!? レベルアップか!?」
周囲が一斉に騒ぎ出す。
どうやら高校生たちは何かを感じたらしい。
雪乃さんも驚いた顔をしている。
だが俺には何も分からなかった。
レベルアップらしい感覚もない。
その代わり、今日は何度か奇妙な感覚を覚えていた。
《鑑定》が使えるようになった時と同じ感覚だ。
もしかして。
職業によって成長の仕方が違うのだろうか。
商人だけ別なのかもしれない。
そんなことを考えていると、前方からヨシュアの声が響いた。
「皆さん」
歩みを緩めながら言う。
「そろそろルト村へ到着します」
遠くを見ると、小さな集落らしきものが見え始めていた。
ヨシュアは続ける。
「村へ入った後ですが、宿へ向かう前に村長のもとへ挨拶に行きます」
「その際、皆さんは異世界人ではありません」
一瞬、空気が変わった。
「ギルモア辺境伯様の客人として紹介します」
「お忘れなきよう」
そう言って、なぜか俺を見た。
俺はとりあえず頷く。
異世界人であることは隠せ。
そういう意味なのだろう。
理由は分からない。
だが今は余計な波風を立てるべきではない。
俺は胸の中に疑問を残したまま、ルト村へ続く道を見つめた。




