20 鑑定①
俺がその奇妙な感覚に気を取られている間に、神代君が最後の一体を仕留めたようだった。
「うおっしゃぁ!」
神代君が剣を掲げる。
「初戦闘で初勝利だ!」
その声に高校生たちが集まり、歓声を上げる。
皆興奮した様子で、初めての実戦を喜び合っていた。
そんな中、俺は一人呆然としていた。
「佐伯さん?」
声をかけられて振り返る。
雪乃と茉奈だった。
「大丈夫ですか?」
心配そうな顔で覗き込まれる。
そこでようやく我に返った。
「え? ああ……大丈夫です」
そう答えたものの、自分でも妙な顔をしていたと思う。
二人はますます不安そうな表情になる。
俺は慌てて説明した。
「怪我をしたとかじゃないんです」
「ただ、戦闘が終わった瞬間に変な感覚があって……」
言葉を探しながら続ける。
「なんというか、《鑑定》って言葉が頭に浮かんできたんです」
すると雪乃が即座に反応した。
「それ、スキルじゃないですか?」
「え?」
思わず聞き返す。
隣で茉奈も頷いた。
「たぶん、そうだと思います」
半信半疑のまま、俺は足元に転がるゴブリンへ視線を向けた。
その瞬間だった。
頭の中へ情報が流れ込んでくる。
――ゴブリン。
――E級魔物。
――集団行動を好む。
――一体発見した場合、周囲に複数存在する可能性が高いため注意。
思わず顔をしかめる。
なんだこの情報。
まるで図鑑を読まされたような感覚だ。
というか、一匹見つけたら群れを警戒しろって……ゴキブリかよ。
そんなことを考えていると、雪乃が真面目な顔で言った。
「使い勝手は旅の中で少しずつ調べましょう」
そして声を潜める。
「ただし、今は秘密です」
「どんなスキルかも分かりませんし、相手にとって有用な能力かもしれません」
俺は無言で頷いた。
その意見には賛成だった。
情報は武器になる。
そして武器は、見せない方が強い。
そこへヨシュアが近づいてくる。
「皆さん、初勝利おめでとうございます」
満足そうに周囲を見回す。
「初戦闘とは思えないほど素晴らしい戦いでした」
そこで言葉を切り、
「中には、どうしようもない方もいたようですが」
冷ややかな視線を茉奈へ向けた。
茉奈の肩がびくりと震える。
俺の背後へ隠れるように下がった。
俺は小さくため息をつく。
だがヨシュアは気にした様子もなく話を続けた。
「戦闘に参加した皆さんには、経験値が加算されています」
「経験値の算定基準は神のみぞ知るものですが、一般的には敵を倒した者ほど多く得られると言われています」
「もっとも、今回のゴブリン五体程度では大した経験値にはなりません」
「レベルアップした方はいないでしょう」
そう言い切る。
俺は眉をひそめた。
レベルアップしていない。
なのに《鑑定》らしきものは使えるようになった。
なぜだ?
昨日まで何の感覚もなかったのに。
俺は再び倒れたゴブリンへ視線を向ける。
情報が流れ込んでくる感覚は、間違いなく本物だった。
――レベルアップとは別の条件があるのか?
そんな新たな疑問が胸の中に残った。




