↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/114

19 初戦闘

背丈は百三十センチほどだろうか。


緑色の肌。


尖った耳。


手には粗末な棍棒や石斧。


二足歩行の異形が五体、草むらの向こうから姿を現した。


「ゴブリンだ!」


騎士の一人が声を上げる。


するとヨシュアが満足そうに頷いた。


「ちょうどいいですね」


そして異世界人たちへ向き直る。


「皆さんの初実戦です」


「騎士は後方へ下がり支援に回ってください」


騎士たちが一瞬だけ顔を見合わせる。


だが誰も反論しない。


「皆さんは今学んだことを活用し、ゴブリンを駆逐してください」


まるで訓練用の的でも出てきたかのような口調だった。


俺は眉をひそめる。


あれがゴブリンか。


ゲームでは何度も見た名前だが、本物を見るのは当然初めてだ。


そんなことを考えていると、服の裾が引っ張られた。


振り返る。


茉奈だった。


顔色が真っ青になっている。


小さな手が震えていた。


無理もない。


十一歳の少女だ。


昨日まで平和な日本で暮らしていた人間が、いきなり魔物と戦えと言われているのだから。


俺はできるだけ穏やかに笑う。


「大丈夫」


そう言って後ろへ下がらせた。


そこへ雪乃が駆け寄ってくる。


「佐伯さん!」


「茉奈をお願いします」


俺は短く言う。


雪乃は頷いた。


「分かりました」


俺は二人の前へ出る。


ちょうどその時、戦闘が始まった。


最初に動いたのは真紀だった。


杖の先に火が灯る。


次の瞬間。


火球が一直線に飛んだ。


ドンッ!


先頭のゴブリンへ命中する。


悲鳴が上がった。


ゴブリンたちの隊列が乱れる。


そこへ神代君が飛び込んだ。


鋭い踏み込み。


そして横薙ぎ。


空気を裂くような音が響く。


先頭のゴブリンの胴が大きく裂け、そのまま地面へ倒れ込んだ。


一体目。


さらに真紀が火球を放つ。


今度は外れた。


だが十分だった。


ゴブリンたちは左右へ散開する。


その隙を藤堂君と太陽君が逃さない。


藤堂君の拳が唸る。


ほとんど見えなかった。


殴られたゴブリンが吹き飛ぶ。


太陽君の槍が一直線に突き出される。


こちらも命中。


ゴブリンが地面を転がった。


藤堂君が追撃する。


太陽君も倒れた相手へ槍を突き立てた。


残り二体。


一体は神代君が対峙している。


もう一体は――


俺たちの方へ向かってきていた。


「っ!」


茉奈の息を呑む音が聞こえる。


雪乃も茉奈を庇うように前へ出る。


だが間に合わない。


ゴブリンは一直線に駆けてくる。


距離は十メートル。


五メートル。


三メートル。


黄色い目が俺を睨む。


石斧を振り上げる。


考えるより先に身体が動いた。


俺は棍棒を握り締める。


そして――振り抜いた。


ゴッ!!


鈍い衝撃が腕へ伝わる。


棍棒はゴブリンの側頭部へ直撃していた。


骨が砕ける嫌な感触。


ゴブリンの首が不自然に曲がる。


目と鼻と口から血を噴き出しながら、その場へ崩れ落ちた。


動かない。


死んだ。


俺が殺した。


その瞬間だった。


身体の奥で何かが弾けるような感覚が走る。


頭の奥が熱い。


胸の内側がざわつく。


何かが流れ込んでくる。


言葉にできない奇妙な感覚。


そして――


俺は、自分の中に何かが生まれたことを理解した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。