02 ここどこだ?
まぶた越しに感じる光が、徐々に弱まっていく。
恐る恐る目を開くと、そこには巨大な女神像がそびえ立っていた。
思わず息を呑む。
優に十メートルは超えているだろうか。白い石で造られたその像は、荘厳という言葉がよく似合う姿をしていた。
そして俺は、自分が見知らぬ広間の中央に立っていることに気付く。
周囲には、俺と同じように戸惑った表情を浮かべる人間が数人。
さらにその外側を囲むように、中世の騎士を思わせる鎧姿の男たちが何十人も立ち並んでいた。
全員が槍や剣で武装している。
物騒な光景だ。
映画の撮影か何かだろうか。
そんな考えが頭をよぎるが、どうにも空気が違う。
妙に張り詰めていて、冗談や演技には見えなかった。
「ここどこだ? なんだお前ら?」
突然、若い男の声が響いた。
声の主は制服姿の青年だった。
高校生だろうか。
その隣には同じ制服姿の少女が寄り添っている。
さらに近くには同年代と思われる男子生徒が二人。その後ろには女子生徒が一人、怯えたように身を縮めていた。
どうやら同じ高校の生徒らしい。
少し離れた場所には小学生くらいの少女が一人。
今にも泣き出しそうな顔で周囲を見回している。
さらにその先には、二十代後半から三十代前半ほどの女性。
スーツ姿からして会社員だろう。
どうやら俺以外にも巻き込まれた人間がいるらしい。
もっとも、顔見知りは一人もいなかったが。
周囲を観察していると、騎士たちが一斉に武器を収めた。
そして数歩後ろへ下がる。
何かが始まる。
そんな予感がした。
次の瞬間、女神像の前に三人の男女が姿を現した。
最初に目を引いたのは、豪華な衣装に身を包んだ中年の男だった。
貴族。
そんな言葉が真っ先に浮かぶ。
男は堂々と胸を張り、自らをアニストン・ギルモアと名乗った。
ギルモア辺境を治める辺境伯らしい。
「こちらはアルステア教大司教、シルビア・ベネディクト殿だ」
辺境伯の言葉に続いて、横の女性が頭を下げる。
そして三人目。
こちらは名乗りも紹介もなかった。
ただ、先の二人より半歩後ろに立ち、まるで威嚇するような視線を俺たちへ向けている。
護衛か。
それとも別の何かか。
俺が考えていると、アニストン辺境伯が大きく両手を広げた。
「ようこそ、ギルモア領へ!」
広間によく通る声だった。
「我らは、そなたら異世界人を歓迎する!」
周囲がざわつく。
高校生たちは顔を見合わせ、小学生の少女は完全に固まっている。
――アルステア教?
――ギルモア領?
――異世界人?
頭の中で単語を並べてみる。
どれも現実味がない。
大がかりなドッキリ。
新興宗教の集会。
誘拐。
いくつか可能性を考えてみるが、どれもしっくりこなかった。
何を言っているんだ、この男は。




