01 始まり
初投稿です。よろしくお願いします
俺は46歳の独身男性。名を佐伯一樹という。
中小企業に勤めるシステムエンジニアで、役職は主任。
仕事の能力は決して低くなく、与えられた業務は堅実にこなす。
しかし他人と深く関わることを好まず、同僚や上司との付き合いも必要最低限にとどめている。
そのため評価は悪くないものの、人望や社内政治とは無縁で、出世コースからは外れていた。
両親は健在だが、俺は二十年以上実家に帰っていない。
親子関係は決して良好とは言えず、連絡もほとんど取っていなかった。
その原因は、二十二年前に起きた妹の死にあった。
妹は六歳下で、当時十八歳。
進路を巡って両親と激しく対立し、家出をしていた。
俺はすでに実家を離れて働いており、その事実すら知らなかった。
家出中の妹は、素性の悪い人間たちと関わるようになる。
その中の一人から違法薬物の使用を強要され、恐怖のあまりその場から逃走。
だが逃げ出した先で交通事故に遭い、その短い生涯を終えた。
妹の死後、俺は初めて家族の抱えていた問題を知ることになる。
進路を巡る対立、家出、そして事故に至るまでの経緯。
そのどれもが、自分の知らないところで起きていた出来事だった。
さらに俺を深く傷つけたのは、妹に違法薬物を勧めた人物の正体だった。
それは俺の高校時代の同級生であり、かつて気の置けない仲間の一人だったのである。
信頼していた友人が、結果として妹を死へ追いやる一因となっていた。
その事実は俺の価値観を大きく変えた。
家族とも友人とも距離を置き、人を信じることをやめた。
必要以上に他人と関わらず、誰にも期待しない。仕事だけをこなし、静かに歳を重ねる。
気がつけば四十六歳になっていた。
そしてある日のこと。
会社の後輩が新人歓迎会の参加を確認してくる。
俺が断るのが分かっているのに、話しかけにくい俺に義務として声をかけてくる。
いつものように断り、タイムカードを押して会社を出る。
そして、いつものように会社からの帰宅途中、俺は駅へ向かう夜道を歩いていた。
その瞬間――。
前触れもなく、周囲一帯がまばゆい白い光に包まれた。
目を開けていられないほどの強烈な光。
人々の悲鳴も、車の走行音も、街の喧騒も、すべてが白の中へと溶けていく。
俺が最後に見たのは、自らの影さえ消え失せるほどの純白の世界だった。




