13 その一方で
俺と鈴木さんが話をしている頃。
高校生たちは一つの部屋に集まっていた。
「それにしても、とんでもないことになったな」
神代勇樹が苦笑しながら言う。
「召喚なんてゲームじゃないんだからさ」
「本当だよ」
若葉も肩をすくめる。
「朝まで普通に日本にいたのに、気付いたら異世界だもん」
「でもさ」
藤堂漣が笑みを浮かべた。
「レベルにスキルに冒険者だぜ?」
「なんか滾らないか?」
その言葉に何人かが笑う。
「不安がないわけじゃないけどな」
太陽が腕を組む。
「それでも少し楽しみだとは思う」
「分かる」
勇樹が大きく頷く。
「帰れる方法もあるみたいだしな」
「まずはやるしかないだろ」
すると真紀がぽつりと呟いた。
「でもさ」
「佐伯さんって、どう考えてるんだろうね」
視線が集まる。
「なんていうか、掴みどころがないというか」
「何を考えてるのか分からないっていうか」
若葉が苦笑する。
「大人だからじゃない?」
「私たちより色々考えちゃうんだよ」
「確かに」
勇樹が納得したように頷く。
「俺たちは帰るために頑張るしかないしな」
「そうだよな」
太陽も同意する。
「今は強くなることを考えるべきだと思う」
「そのうえ、やればやるだけ強くなるんだろ?」
藤堂が笑う。
「最高じゃん」
若葉と真紀も小さく頷いた。
勇樹が皆を見回す。
「まあ、佐伯さんには佐伯さんの考えがあるんだろ」
「俺たちは俺たちだ」
「まずは強くなる」
「そして成果を上げて帰る」
「それしかないだろ」
その言葉に全員が力強く頷いた。
異世界への不安はある。
だが、それ以上に前を向こうとしていた。
そんな空気が部屋にはあった。
ふと太陽が思い出したように言う。
「そういえば鈴木さん」
「佐伯さんの知り合いみたいだったな」
「ああ、二人で話してたね」
若葉が頷く。
そして笑う。
「まあ、大人には大人の話があるんでしょ」
「私たちは私たちってことで」
その言葉で話題は自然と別の方向へ移っていった。
その頃。
御厨茉奈は一人、部屋にいた。
本来なら鈴木雪乃と同室になる予定だった。
だが今は一人だ。
布団にくるまり、小さく身体を丸める。
怖かった。
魔物。
戦い。
異世界。
何もかもが怖い。
十一歳の少女には重すぎる現実だった。
「お母さん……」
小さな声が漏れる。
「お父さん……」
目から涙が零れた。
「助けて……」
返事をしてくれる人は、誰もいなかった。




