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114 仲間との再会

どうやらエドワード領に近づいているようだった。


出現する魔物の種類が明らかに変わってきている。


オーク。


オーガ。


ミノタウロス。


人と獣の中間のような巨大な魔物たち。


さらに夜になると、スケルトンやマミーといったアンデッド系の魔物まで現れるようになった。


数も多い。


強さも今までとは比較にならない。


それでも俺たちは進み続けた。


雪乃の《気配察知》が魔物の存在を捉える。


真紀と茉奈が先制攻撃。


その直後に俺と漣が突撃する。


生き残った敵は雪乃が素早く仕留めていく。


いつもの流れだ。


何度も繰り返した戦い方。


気付けば、この五人の連携はかなり完成されていた。


その中心にいるのは雪乃だ。


雪乃の《気配察知》がなければ、この戦い方は成立しない。


本当に助けられている。


休憩中、俺は雪乃へ声をかけた。


「ありがとう、雪乃」


「本当に助かってる」


「雪乃がいなかったら、何度か危ない場面もあったと思う」


すると雪乃は柔らかく微笑んだ。


「私はカズキさんの隣に立って、カズキさんの力になるって決めたんです」


「私の動きでカズキさんが喜んでくれるなら、それが一番嬉しいです」


「頑張る理由になりますから」


そう言って照れたように笑う。


本当に雪乃は人としてできている。


俺も見習わなければならない。


そう思いながら周囲を見回した。


「それで、ここら辺はエドワード領なのかな?」


雪乃は少し目を閉じる。


周囲の気配を探るように。


「エドワード領かどうかは分かりません」


「でも、この先に多くの人の気配を感じます」


「街か村があると思います」


「そこで聞いてみましょう」


俺が頷くと、雪乃は少し表情を曇らせた。


「ただ……」


「少し様子がおかしいです」


「殺気立っているというか……何か揉めています」


その言葉に全員の表情が変わった。


俺たちは顔を見合わせる。


「急ごう」


休憩を切り上げ、先を急いだ。


しばらく進むと街が見えてきた。


だが近付くにつれ、その異様さが分かる。


建物は崩れ。


壁は焼け焦げ。


所々に補修の跡がある。


魔物侵攻を受けた街なのだろう。


その時だった。


怒鳴り声が聞こえてくる。


「出せ!」


「てめぇらのせいで何人死んだと思ってんだ!」


「巫女を出せ!」


「責任取らせろ!」


巫女?


そう思った瞬間だった。


漣と真紀が顔色を変える。


そして次の瞬間。


二人は全力で駆け出した。


「おい!」


呼び止める暇もなかった。


俺たちも慌てて後を追う。


街の奥。


一軒の家の前に人だかりができていた。


その中心で漣が怒鳴っている。


「てめぇ!」


「俺の仲間に何しやがってんだ!」


真紀の手から火球が放たれる。


人だかりが悲鳴を上げて散った。


その隙に漣が飛び込む。


男たちを殴り飛ばし。


蹴り飛ばし。


投げ飛ばす。


俺が到着した時には、人垣は半壊していた。


その奥にいた男を見て、俺は目を細める。


ヨシュアだった。


立派な鎧を身に着けたまま、こちらを睨んでいる。


そして、そのさらに奥。


家の前に二人の男がいた。


片膝をついている。


傷だらけだった。


顔には痣。


衣服はぼろぼろ。


体は異様なほど痩せている。


最初は誰か分からなかった。


だが。


その顔を見た瞬間。


俺は息を呑んだ。


神代勇樹。


谷本太陽。


二人だった。


別れた頃とは別人のようだった。


頬はこけ。


顔色は悪く。


まともな食事すら与えられていないことが一目で分かる。


二人は俺たちを見て目を見開いた。


信じられないものを見るように。


そして震えながら立ち上がる。


だが足に力が入らない。


今にも倒れそうだった。


俺の中で何かが切れた。


ゆっくりとヨシュアへ歩み寄る。


「おい」


「これはどういうことだ?」


「俺の仲間に何をした?」


ヨシュアは鼻で笑った。


「簡単な話ですよ」


「命令を聞かないので、聞くように教育していただけです」


「私自らの手でね」


そう言って神代の肩を蹴り飛ばす。


神代が苦痛に顔を歪めた。


さらにヨシュアは笑う。


「それに私個人としても、少々恨みがありましてね」


その瞬間。


漣が飛び出そうとした。


「このクソ野郎!」


俺は片手で漣を止める。


「離せ!」


「ぶっ殺してやる!」


俺は首を横に振った。


「漣」


「お前が手を下す男じゃない」


漣が俺を見る。


「お前はゴブリンキングを倒した英雄だろ」


「こんな奴に手を汚すな」


俺はそう言って笑った。


そして。


ヨシュアの前まで歩いていく。


ヨシュアが何か言いかけた。


だが遅い。


棍棒を振り抜く。


鈍い音が響いた。


右腕が折れる。


絶叫。


構わない。


左腕。


右脚。


左脚。


順番に叩き潰す。


ヨシュアは地面を転げ回りながら悲鳴を上げた。


俺は髪を掴んで顔を持ち上げる。


「覚えておけ」


静かに告げた。


「俺の仲間に手を出すなら覚悟しろ」


「次からは俺が相手だ」


ヨシュアは恐怖に顔を引きつらせる。


俺は周囲の兵士たちを見る。


「命が惜しいなら、この男を連れて失せろ」


「次は保証しない」


兵士たちは青ざめていた。


誰一人反論しない。


慌ててヨシュアを担ぎ上げる。


そして逃げるように去っていった。


静寂が訪れる。


俺は神代たちの方へ向かった。


二人の前で立ち止まる。


もっと早く来れたんじゃないか。


もっと何かできたんじゃないか。


そんな思いが胸を締め付ける。


だから俺は正直に言った。


「ごめんな」


「遅くなった」


神代君と太陽君は何も言わなかった。


ただ。


俺を見つめたまま。


ぼろぼろと涙を流していた。


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