10 自己紹介①
説明会が終わった。
ヨシュアたちも退席するのかと思ったが、なぜか誰も立ち上がろうとしない。
異世界へ召喚されたという異常事態。
互いのことを知らないままというのも落ち着かない。
自然と自己紹介をしようという流れになった。
この場に残っているのは、異世界人八名とヨシュアだけだ。
最初に手を挙げたのは剣聖の高校生だった。
「じゃあ俺から」
立ち上がる。
「神代勇樹。青葉高校三年、十八歳です」
元気の良い声だった。
「小さい頃から剣道をやってます」
なるほど。
太い腕を見れば分かる。
いかにも運動部という体格だ。
剣聖という職業も、案外そこから来ているのかもしれない。
そんなことを考えていると、拳聖の高校生が続いた。
「藤堂漣。同じく青葉高校三年。十八歳」
ぶっきらぼうに名乗る。
「特に何もやってねぇ」
いや、嘘だろう。
身長は高いし、体つきもかなり良い。
そう言うと、
「あー、親父の仕事を手伝ってるからかな」
と苦笑した。
聞けば父親は建設会社を経営しており、休日になると現場へ連れ出されるらしい。
なるほど。
納得の体格だった。
続いて槍聖の青年が手を挙げる。
「谷本太陽です。同じく青葉高校三年。生徒会長をしています」
生徒会長。
思わず声が出そうになった。
落ち着いているとは思っていたが、そういうことか。
すると隣の少女が手を挙げた。
「谷本若葉です。青葉高校二年、十七歳です」
そして平然と言う。
「太陽の妹です」
やはり兄妹だったか。
顔立ちがどことなく似ていた。
続いて魔導士の少女。
「山本真紀でーす。青葉高校一年!」
元気よく手を振る。
「よろしくね!」
妙に場慣れしている。
ここまで聞いて、俺はあることに気付いた。
全員同じ高校だ。
偶然にしては出来過ぎている。
「みんな同じ学校なんですね」
そう尋ねると、勇樹が笑った。
「ああ、俺たち地元が一緒なんです」
「幼馴染なんですよ」
なるほど。
「小さい頃から五人で遊んでてさ」
「召喚された時も、来週のバーベキューの相談でコンビニに集まってたんだ」
それでか。
学校が同じというだけではない。
家族同然の距離感がある。
兄妹まで混じっている。
この五人の結束はかなり強そうだ。
その時だった。
「鈴木雪乃です」
スーツ姿の女性が軽く頭を下げた。
「二十八歳。営業職をしています」
そして何故か俺に向かって会釈した。
反射的にこちらも頭を下げる。
どこかで見たことがある気がした。
だが思い出せない。
取引先だっただろうか。
電車で見かけたことがあるだけかもしれない。
そんな曖昧な既視感だった。
最後に、小学生の少女が恐る恐る立ち上がる。
「み、御厨茉奈です」
小さな声だった。
「天現寺小学校六年生です」
思わず目を瞬かせる。
天現寺小学校。
聞き間違いでなければ、あの天現寺だ。
幼稚園から大学まで続く女子校。
淑女教育で有名なお嬢様学校である。
「よろしくお願いします……」
ぺこりと頭を下げる。
運搬屋。
神速の宅配師。
そして天現寺の生徒。
嫌な予感しかしない。
どうやらそう思ったのは俺だけではないらしい。
周囲の空気がわずかに変わった。
高校生たちも。
雪乃さんも。
それぞれ何かを考えるような顔になっていた。




