Sheet4:創業100周年
中村の話はこうだ。
とある企業の創業100周年の記念イベント。企画の提案から実行まで一貫して任される依頼があった。
先行して社史の編纂が別会社で行われていたが、そちらも参考にして起業した二人の生い立ちのミニドラマを作る案が浮上した。
起業した二人は尋常小学校時代からの幼馴染で誕生日も一週間しか違わない。ちなみに同じ産婆に取り上げられたとの事だ。
それはなかなか運命的なエピソードだと、誕生のくだりも入れようかという話になった。
そこでリアリティを考慮して、生まれた時の曜日を調べた。日曜日なら勤め人の父親も家に居るだろうとか、そんな程度のリアリティではあるが。
顧客情報を管理しているエクセル。
ちょうどエルに教わった曜日表示を組み込んだので二人の誕生日を入れてみた。
ちょうど一週間違いの二人だから同じ曜日になるはずが、何故か火曜と水曜、一日ズレた結果を示した。
「…と、そんな事態が起こっています。同じ関数を使ってて、そんな間違いが起こるんでしょうか?」中村はワケがわからないといった感じで説明を終えた。
「どちらかが間違ってるという事ですね?どっちか分かりますか?」エルが尋ねた。
「えぇ、そのあとネットで明治時代のカレンダーを載せてるサイト見つけまして…先に生まれた方が間違ってました」中村は続ける。
「正解は分かりましたが、おかしくなった原因が分からないと他の顧客情報でも違っていたら大変なので…」
「明治時代…そっか創業100年だから創業者は当然明治生まれだわな」アキラが杉田のハイボールを作りながら言った。
「ええ、明治33年の生まれです」中村が答える。
「明治33年、西暦でいうと1900年ですね」薔薇筆がスマホをいじりながら言った。「1900年、もしかしてうるう年が関係してません?」
皆んながハッと息を呑んだ。エル一人を除いて。
エルはおもむろに話し始めた「1900年はうるう年じゃありません」
「えっそうなの?4で割り切れるよ」育美が言った。
「基本はそう。ただ例外として、西暦年号が100で割り切れて400で割り切れない年はうるう年じゃないの。1900年はその例外に当てはまるから、うるう年じゃないよ」エルの博識に皆んな呆気に取られた。
「エル、お前なんでこっちの世界のこと俺らより詳しいんだよ」アキラが言った。
「でも薔薇筆さんのうるう年に関係してる説は正解だよ」エルは慌ててフォローした。
「これはね、エクセルのバグなんだ」




