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青き碧の仲間たち  作者: 高階闇堂
寮生活2日目
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29/31

寮生活2日目(襲撃)

「いいとこ、ですか」

「うん、ぼくも去年教わったんだけど結構いいとこだよ」


ちょうど腹具合もそこそこに空いてきたところ、成美のこの申し出は断る手はなかった。

それに、同室になってから初めて一緒に行動するのだ。

学園周辺のこの街を知るのも悪くない。

既に学園を知っている成美のナビゲートなら、信頼に足るだろう。


「わかりました」

と、既に着ていた普段着の上から、薄手のパーカーを羽織り。

「じゃ、行こ」

と部屋を出ようとしたところで、阿貴は一つ気付く。

「成美さん、着替えとかしなくていいんですか?」

と。

謝罪のために部屋に戻ってから、成美はまだ自分のスペースに戻っていないのだ。

「あ」

思えば、成美は昨日の恰好のままだった。そのまま春海の部屋に1日いたのだから、着替えもできていないのだろう。


「忘れてたっ。ごめんね、ちょっと待ってて」

自分の恰好を顧みて気付く。

外に出るにはちょっとばかりラフすぎる服装だったこともあり、何より、スマホも財布も自分のスペースに置いたまま。

とてもこのまま出かけられる状態ではない。


成美は、自分のスペースに戻り、まず着ていたシャツを脱ぎ捨て、部屋備え付けのクローゼットから着替えを取り出した。

「覗かないでね?」

「何でですかっ!」

ちょっとばかりふざけてみたら、素直にツッコミが飛んできてくれた。

だがふざけている場合ではない。ちょっと待ってて、と言ったのはこっちだ。


だが、律儀に目を背けている阿貴である。

別に成美の女の子にしか見えない見た目を意識したわけでは、ない。多分。


素直にこちらに背を向けていた阿貴に、

「終わったよ」

と声をかける。

阿貴が振り返ると、成美は淡い水色のパーカー姿になっていた。

阿貴の落ち着いた色合いとは対照的な、明るく柔らかな色合い。

(これがこの人の普段着なんだ)

と、初めて見る成美の普段着姿に見入る事しばし。

その様に、成美はくす、と笑って、

「どう?可愛い?」

などと返答に困る問いを投げかけてきた。

「…似合って、ます」

と、どうにか答えを返した。

「じゃ、行こっか」

改めて、ドアを開け、二人で部屋を出る。


110号室からは、玄関までさほど離れた距離ではない。

それに阿貴は、一度食堂へ行くのに玄関口の前を通過している。場所はわかっていた。


さて。

青光寮の正面玄関から少し奥へ進むと、食堂があるわけだが。

その食堂へ続く通路の両側には、上階へ行く階段がある。

その男は、その階段の上から、玄関口へ向かう二人の姿を見つけた。

そして─────


一方、玄関では。

下駄箱の靴を取り出し、外に出るため履き替えようとした、その時であった。

阿貴の背に、不意に緊張が走る。

瞬間。

まさに咄嗟に。

身体が動いていた。


「─────成美さん、逃げてっ!」


背後からの気配─────それも、かなりわ(・)か(・)り(・)や(・)す(・)す(・)ぎ(・)る(・)ほど。

その男は一直線に玄関に走り込んで。

成美を無意識に入り口のドアの方へ押しやり、その「襲撃者」を迎え撃つ。

相手の突き出された拳を躱し、逆に肘を打ち込む。

それを紙一重で躱した相手が、前蹴りを繰り出し。

その足を手で押さえて、その勢いを利用して今度は自分が真上に足を蹴りだす。

お互い、一手も相手に当たらない、目を見張る攻防戦。


この騒ぎに、寮の他の部屋からも人が見にやってくる。

「おい…あのちっこいの…昨日の奴じゃねえ?」

「相手は先輩…か?」

「何でいきなり喧嘩が始まってんだ?!」


そんな周囲のざわつきに耳を貸している余裕など、ない。

それは襲(・)撃(・)者(・)も(・)同(・)じ(・)だった。


相手の攻撃を受け流し、躱しながら反撃を打つ阿貴の脳裏には。

(おかしい)

と。

(この相手…やり合ったことが、あ(・)る(・))


襲撃者もまた、脳裏に。

(やっぱり…噛(・)み(・)合(・)う(・)な)


一連の騒ぎを目にしている周囲の男たちの中で、一つ、疑問の声が上がる。

「おい…気付いているか?」

「ああ…どっちも、すげえレベルじゃねえか」

「そんな話じゃねえよ」

「あ?」

「あの二人…あの至近距離であれだけバチバチやりあってんのに…」


「打(・)撃(・)音(・)が(・)─────一(・)切(・)聞(・)こ(・)え(・)て(・)こ(・)ね(・)え(・)」


「まさか…これ、やらせか?」

「いや。台本があったとしても…あの速さでそれ再現できるかって言ったら…」

「─────無理でしょうね」

野次馬たちの背後から飛んできた声に、びくり、と振り返る。

長身細身の、落ち着いた風貌の男が、そこに立っていた。

「あの二人は、本気ですよ」

と。

「そして─────お互い紙一重で躱しきっている」


そうしてお互い当たらないまま打ち合う事しばらくの間。

そして。

二人の拳がお互いの顔面に向けて打ち込まれる。

瞬間。


互いの拳が、お互いの鼻先寸前で止められていた。


襲撃した男が、口を開く。

「─────中学上がった時点で、道場辞めたって聞いたが…ありゃフカシか。さらに腕上げやがって」

と。にやり、と笑みを浮かべて。

それに対して、阿貴は左拳を突き出したまま。

「─────4年ぶりに会う後輩に、随分なご挨拶ですね。加(・)納(・)先(・)輩(・)」

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