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目の不自由な令嬢は仮面の聖女となる  作者: ハナショウブ
事件後
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久しぶりの訪問

「エル、おかしくないかしら?」

「大丈夫ですよ。いつも通りのお嬢様です」

「いつも通り、でいいのかしら」

「当然です。いつも綺麗で可憐なお嬢様ですから問題ありません」

鏡の前で身だしなみを確認しようにもぼんやりとした視界ではわからない。エルの言葉を信じるしかない。

今日は久々にアルベルトが尋ねてきてくれる日だ。

家族でお茶をしてからさらに3日が過ぎてようやくアルベルトから会いたいという連絡が来た。毎日花は届いていたのだが、直接会えなかったせいで、やはり寂しさは募っていった。忙しいのだからと納得しつつも、寂しさが消せない。

アルベルトが訪問してくれる形になったが、リリアはまだ外出を許されていなかった。その代わりにケインが定期健診ではないが訪ねてくれていた。彼も事件の関係者となっていろいろと聴取された身である。神殿に戻って派手に浄化をしたことが大神官に知られてしまってお説教を食らったらしいが、その話を笑いながらするものだから、負担をかけたことを謝りたくてもできないし、心配していいのかも迷ってしまった。

それ以外にもウォルスター公爵夫妻がリリアに会いに来てくれた。公爵は浄化師を手配してくれたお礼も兼ねて大量の高価な品物を用意してきたため、フラクトル家は品物を扱う使用人が緊張しすぎて精神をすり減らした。

浄化の力を使ったが休みは十分にもらったので体調は良い。逃げた時の怪我はケインが治してくれたのでベッドにいつまでもいる状態ではない。そのため天気のいい日は庭でお茶をして過ごし、あまりにも退屈になると、料理長を拝み倒してお菓子作りも再開していた。

そんな日々を過ごしてきて、やっとアルベルトと会える日が来たのだ。

「もうすぐ来る時間かしら」

「そうですね。今日はお昼も一緒にということですから、午前中から来られるはずです」

いつもより入念に手入れをして待っているのだ。久しぶりに会った婚約者がよれよれでは格好がつかない。

「ふふ、お嬢様は完全に恋する乙女になっていますよ」

「煽てたって何も出ないわよ」

2人で微笑みあっていると、扉をノックする音が聞こえた。

「ウォルスター様が到着されました」

使用人の声に立ち上がると、はやる気持ちを押さえてリリアは部屋を出た。

玄関に向かう足がいつもより速くなってしまう。注意されそうな気もするが、今回ばかりは皆大目に見てくれていることに気が付くことなく、リリアは玄関へと急いでしまった。

玄関に向かうと話し声が聞こえてきた。

母が客人を出迎えていたのだ。

「本当に久しぶりね。元気そうでよかったわ」

「夫人もお元気そうでなによりです。しばらく顔を出せず申し訳ありません」

「私に謝る必要はないのよ。それよりもあなたのことをずっと待っていた娘に言ってあげてちょうだい。そうでしょう、リリア」

出迎えに来たことを察してサラが声をかけてきた。

「もう少し穏やかに歩いてきなさい。アルベルト様は逃げたりしないのだから」

使用人には注意されなかったが、ここにきてサラから小言をもらってしまう。

「ご、ごめんなさい」

「ふふ、それだけ早く会いたかったのでしょう。昼食まで2人でゆっくり話をするといいわ」

アルベルトの前で注意されたことに恥ずかしさを覚えていると、サラは楽しそうに言って離れていった。

少し気まずい雰囲気が漂ってしまったが、リリアに近づく足音が聞こえてそちらに視線を向ける。

「もっと早く会いに来られれば良かったのだが、ずいぶん待たせてしまったね」

「アルベルト様」

いつもは黒い影に見えるアルベルトだが、今日は紺色の影だ。私服なのだと思うと仕事ではなくプライベートで会いに来てくれたことに嬉しさが募った。

笑顔を向けると、ふっと彼が笑う気配があった。アルベルトもこの日を待ち遠しく思ってくれていたのなら嬉しい。

「お嬢様」

微笑み合って完全に2人の世界になってしまっていると、後ろからエルが声をかけてきた。

「お部屋でゆっくりお話しされた方がよいかと」

「そ、そうね。気が付かなかったわ」

さっきから失敗ばかりだ。恥ずかしさよりも情けないような気分になっていると、そっと手を取られた。

「部屋までのエスコートを任せてもらえるかな」

「もちろんです」

情けない気持ちなどどこかに吹き飛んで、リリアはそっと彼の腕に手を添えた。


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