第15話 図書室
アリスを見届けてから、図書室に向かう。
図書室の扉を開けると、廊下の向こうでもかすかに感じた紙とインクの匂いが ブワッと香る。
図書室は三階分まであるようだ。明かりも落とされているため目当ての本を探すのにも苦労しそうだ。
まずは国の歴史についての本が収められている棚を探してみることにした。
ランプでもあったらもう少し探すのが楽だろうがそんなものは持ってきていない。窓から入る月光だけが光源だった。
悪魔であるため多少夜目は効くが、それでも暗い中たくさんある本を探すのは疲れる。
棚の文字を読みながら歴史の文字を探す。少しでも窓から離れると本棚の陰で月光は届かなくなる。眼精疲労を覚えながらようやく二階の奥に歴史の棚を見つけた。
蔵書を見てみると儀式に関係しそうな本は数冊しかない。それらを引っ張り出すと窓の近くの机までふわりと身体を浮かせて移動する。
図書室の蔵書数は結構だが、儀式に関する書物は多くない。
歴史の棚にあった本に一通り目に通す。
「この土地より遥か東の地に我々の先祖は元より生活していた。隣国より資源を求め攻め込まれた先祖たちはその土地を去り今この国のある地まで移り住んできた。この土地は竜である土地神が治めてきた自然豊かな土地であった」
戦争で敗北したのか、一方的な侵略か、この記述では分からない。歴史の書籍はこの国の発行したものなら、この国にあまり不利益になることは書かれない可能性もある。実際の歴史を紐解いてみたら重要な記述が省かれていたこともざらだ。内容を読むとこの国の先祖がこの土地に移り住んでから600年程経っている。恐らく王族すらもかつて東の土地で何があったのか知らないだろう。
この文章をそのまま受け取るとしたら、侵略されようやくたどり着いたこの地は人の住まない土地で神が治めていた。
竜か。会ったことはないな。
そして、土地神、か。この国には邪神として定着しているが元は土地神だったのか。そういえばシャルロッテが土地を守ってきた神様だって言っていたっけ。
「この土地は資源も豊富に存在する豊かな土地であった。先祖は土地神にこの土地に住むための交渉をした」
資源豊富な土地が今まで人間に見つからずにいたのは竜がいたからだろうか。
「土地神との交渉で決まったことはこの土地に住む代償は王族の長女が成人を迎えたら生贄として土地神に捧げるものであった」
今まで独りで土地を守ってきた竜が人間に生贄を求めるようになったのは、何故だろうか。アルトゥールはシャルロッテから儀式の話を聞いたときに沸いた疑問を反芻する。
「王族の長女である理由は魔力の高さが理由である」
これはレーゲンから聞いた内容だ。
「この儀式によって、この国は栄えてきた」
確かにこの国は栄えている。水も豊富で作物も実りやすいとシャルロッテが言っていた。資源が豊富なことも理由の一つであろう。決して大きくはないが文化が充実し貧困に喘ぐこともなく、下町の人間の表情も豊かで活気があった。
住む代償としての生贄、それだけではないように思う。
邪神は土地神の機能を果たしているのだろう。現にこの国に入った時に何かしらの加護を感じた。
「近隣の国に攻め込まれることもない」
シャルロッテの言葉を思い出す。この土地に住み、この土地を守ってもらう代わりの生贄。資源を理由に国を追われた先祖からしたら願ってもない場所であろう。
次は生贄が必要な理由が気になる。土地神は捧げられた生贄をどうするのだろうか。殺すのか、娶るのか。
なぜ生贄が必要なのだろうか。
畏怖のためか。
魔力が高い理由で王族の長女を選んでいることから考えると食う可能性もある。
その本にはそれ以上土地神や儀式のことについては書かれていなかった。
次は文化、王宮などの言葉も頼りに棚を漁ってみた。
色々ひっくり返してみたが、これ以上の情報は出てこない。
リアを助けたいが為にシャルロッテ自身、儀式の情報収集はやってきたはずだ。想定できた結果だった。
面白いと思ったらブックマークと下の☆で評価をお願いします!




