第3話『出撃』
真紅の輝きとともに、駆動音が鳴り響く。
研究所の地面を裂き、漆黒の魔神が陽光の下へと姿を現した。
「深雪を泣かせて……じいさんを傷つけて……チビどもまで泣かせやがって……俺の今日を返せ、この野郎!!」
仁の叫びとともに、マジンオーが土埃を巻き上げながら鉄の怪物へ一直線に走り出す。
敵はこちらの出現に驚いた様子もなく、肩部の砲塔にエネルギーを集中させ、即座に発射する。
その瞬間、マジンオーは右へ身を逸らしていた。
(こいつ……俺が考える前に動きやがった……!)
仁が周囲を振り返ると、数棟のビルが熱で溶け崩れていた。
しかし、身をかわしたマジンオーの装甲には、わずかな焦げ跡が残る程度だった。
「大した威力だけどよ……マジンオーには通用しないみたいだぜ……!」
仁がトリガーを絞る。高速回転する拳が射出され、まっすぐに敵の砲塔を粉砕した。
遠距離戦が不利と判断したのか、敵機は白熱する爪を展開する。
左右に飛び跳ねながら獣のごとく突進してくる敵の巨体を、マジンオーは正面から受け止める。
巨大な鉄の塊が衝突し、鈍い金属音が腹の底まで響いた。
弾き飛ばされた敵機は即座に体勢を立て直し、高温を帯びた爪がマジンオーの頭部を狙う。
仁はバックステップで回避するが、勢いの衰えない敵機の追撃がマジンオーの胸部装甲を切り裂き、赤く光る炉心が露出する。
そのままマジンオーは前蹴りを繰り出し、両者は間合いを取ったまま睨み合う。
「しぶといな。なら、一撃でケリをつける」
マジンオーが腰部の柄を引き抜く。特殊な液体金属が仁の意思に呼応し、刀身を形成した。
「剣谷流剣術、一の太刀——」
仁はコックピットで、木刀を握るような自然体で正眼に構えた。
仁の呼吸に合わせるように、機体の揺れがぴたりと止まる。
「魔神・唐竹割りッ!」
マジンオーが一瞬にして敵機との距離を詰める。ブレードが機体の中心線を縦に断ち、その巨体を左右へ分断した。
静まり返った湾岸地帯。仁は荒い息を吐きながら、今なお心臓とマジンオーが一体となって脈打っている感覚に、奇妙な高揚と恐怖を感じていた。
(俺は……何を動かしてしまったんだ……?)
漆黒の魔神は、立ち上る煙の中、沈黙を保ったまま佇んでいた。
遠くで、自分を探す深雪の悲痛な声が聞こえた気がした。
「……そうだ。深雪ッ!無事かッ!」
深雪の声を追って機体を反転させると、望遠カメラの向こう、避難地区には顔をぐしゃぐしゃにした深雪がいた。
仁がほっと胸をなで下ろした、まさにその瞬間だった。
「——正体不明機に告ぐ。ただちにシステムを停止し、ハッチを開放せよ。抵抗する意思ありとみなした場合、即座に実力を行使する」
煙の立ち込める東京湾岸。日本国防軍の戦車や装甲車が、マジンオーを何重にも包囲し、その冷たい砲口を向けていた。
「クソったれ……!」
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