第28話『激戦』
吹雪の隙間から、崖上に陣取る無数の無人機が一斉に牙を剥いている。
「敵機のプラズマキャノンによる弾幕、止みません! このままだと、アース・クローラーの装甲が焼き切られます! マジンオーも……!」
ブリッジのコンソールから深雪が切迫した声を上げる。
艦長席の鷹宮少佐は険しい顔でメインモニターを睨みつけていた。
(……主砲は吹雪と磁気嵐で使えない。しかし、ここで艦を引けば剣谷たちを見捨てることになる。……かといって浮上したままでは艦そのものが敵の集中砲火で沈む……)
「……少佐、どうしますか!?」
深雪の問いに対し、鷹宮は眉一つ動かさず、はっきりとした声で告げる。
「全艦の出力を潜航バラストと機動制御へ回せ。……私たちが盾になる。アース・クローラーの艦首で直接敵の包囲網を割り、二人の退路をこじ開ける!」
巨大な潜陸艦自体を突撃させるという荒業。
その決断を瞬時に受け止め、操が動いた。
「少佐、アース・クローラーの突撃ルート、今すぐ算出します! 猛吹雪で狂いかけた地層データと敵の布陣から、一番確実な突破口を割り出します!」
メインコンソールの前で、操の指が冷徹な手際でキーボードを叩き、艦のサブジェネレーターへ直結する出力を極限まで引き上げていく。
「出力配分完了、バラスト硬化! ――突撃ルート、算出完了しました! 行けます!」
「よし、艦首を左前方へ二十度回頭! 突っ込め!」
操の完璧な出力調整と航路算出に支えられ、アース・クローラーの巨体が咆哮を上げて包囲網への突撃体勢へ移行する。
「深雪ちゃん、弾道予測と敵の随伴機のデータ分析は任せたわ! 二人の退路を死守して!」
「了解です、操さん!」
アース・クローラーの巨体が咆哮を上げ、崖下の敵陣へと文字通り「盾」になって突進していく。その圧倒的な突撃が敵の包囲網にわずかな亀裂を生み出した。
その瞬間だった。
「強くなったな、剣谷仁……。だが、それだけでは俺には届かない」
吹雪の空を割り、音速を超えて舞い降りたのは、あの禍々しい紅い魔神機――エクリプスだった。
「あいつ……っ!!」
仁が叫ぶ。着地と同時にエクリプスが放った一突きは、以前よりもさらに鋭く、淀みがなかった。
「ルミナスの覚醒のために、世界中のストーンは俺たちがすべて回収する。……貴様らの命も、そのオリジナルの魔神石も、ここで俺の糧になってもらう」
エクリプスのブレードが、体勢を崩したマジンオーの胸部へと突き立てられる。
激しい金属の擦過音。その衝撃を通じて、一瞬、仁の視界が青緑の光に染まる。
——カプセルの中で眠るルミナス。
血に濡れた黎の手——
「くっ……てめえ、黎! いい加減にしやがれ!」
エクリプスの猛攻、巨体機の圧倒的な質量、さらに随伴機の包囲網の前に、マジンオーとエンペラー・ルージュは力なく膝を突く。
データ転送完了まで、あと三分。




