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黒鎧魔神マジンオー  作者: IPPO
第二章:戦火の中へ

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第17話『黒き翼』

 クリムゾンの紅い機体は、仁の古武術に酷似した淀みのない体捌きで、マジンオーに急接近する。


「うるせえ! 壊すことしか知らねえ人形が、偉そうに語るな!」


 仁は剥き出しの怒りと共に魔神剣を叩きつけるが、クリムゾンはそれを受け流し、逆にカウンターの鋭い打撃をマジンオーの腹部へ叩き込む。その瞬間、仁の視界が白に覆われ、脳裏に映像が走った。



――青緑の光。

床へ飛び散る赤。

震える手で薬品カプセルを掴む、仁と同じ顔。

『……を、守る……』

『黎……もう、やめて……』――



 一瞬ののち、仁は視界を取り戻す。


「な、んだ……今の。あいつの、記憶……!? やっぱり、あいつは俺の…… 」


 動揺と、オリジナル魔神石の過負荷による胸の激痛が仁を襲う。そこへ、包囲していた無数の重装甲機兵が一斉に牙を剥いた。四方からの同時砲撃を受け、マジンオーの機体が火花を散らして膝をつく。


『仁!!』


 ブリッジの深雪の悲鳴が通信を乱す。

 敵の兵器群がマジンオーを取り囲み、一斉にトドメの火線を向けた。仁の意識が、極限の苦痛の中で遠のきかける。

 もはやこれまでかと思われた、その刹那だった。

 大空の雲海を突き破り、凄まじい速度で滑り込んできたのは、かつてマジンオーの窮地を救った漆黒の可変戦闘機――シャドウカイザーだった。

 シャドウカイザーは飛行形態のまま超音速で戦場を縦断し、マジンオーを取り囲んでいた重装甲機兵の群れを、主翼の風圧とレーザー掃射で吹き飛ばし、包囲網に大穴を開ける。

 強烈な制動をかけながら、漆黒の機体が滑り込むようにして人型へと変形する。立ち上がったシャドウカイザーは、クリムゾンとの距離を一瞬でゼロにする。

 クリムゾンがすかさず標的を変え応戦する。しかしシャドウカイザーは、仁のそれよりも遥かに洗練された、圧倒的な剣谷流古武術の体捌きでその攻撃を受け流していく。


「……まさに、圧倒的だな……」


 ブリッジの鷹宮少佐が、その洗練された動きに息を呑む。

紅い機体のコックピットで、黎は唇の端から鮮血を一筋流しながら舌打ちする。


「……また邪魔が入った。時間だ」


 クリムゾンは咄嗟の蹴りで距離を取ると、忌々しげに機体を反転させ、残存部隊と共に撤退を開始した。


 静まり返る戦場。

 コックピットのモニターの中で、人型のまま佇むシャドウカイザーを見上げ、仁はマイクを開いた。


「あんたは……一体誰なんだ! なんで剣谷流の技を……!」


 沈黙。


 やがて、ノイズ混じりの通信回線から、低く、冷徹な男の声がブリッジとマジンオーのコックピットに響き渡った。


『――技が粗いぞ、剣谷仁。……死にたくなければ、強くなれ』


 仁は息を呑んだ。

 その声は、五年前に失ったはずの、誰よりも聞き慣れたはずの……兄、響の声にあまりにも酷似していた。

 鷹宮もまた、その瞬間、凍りついたように目を見開いた。指先が、通信機のマイクに触れようとして止まり、そのまま震えに変わる。


 何も語らぬまま、漆黒の巨躯は再び飛行形態へと変形し、音速を超えて夕闇の空へと消え去っていった。

 残された仁の、呆然とした表情がモニターに映し出される。

 深雪は、指先のわずかな震えを抑え込むように手を握りしめ俯く。そして、ブリッジにいる誰もが、言葉を放つことはできないでいた。まるで時間が止まったような沈黙が、敵のいない戦場を包み込んでいた。




第二章「戦火の中へ」、ここまでお読みいただきありがとうございました。

自分と同じ顔を持つ謎のライバル、そして漆黒の機体シャドウカイザー。

仁の前に、新たな敵と謎が次々と姿を現し始めました。

次章「世界へ」では、戦いの舞台もさらに広がっていきます。


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