表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回復がコンプラ違反だと追放された触手ヒーラー、もう働きたくないのに美少女パーティーから魔力をせがまれて全く休めない。  作者: うえき蜂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/38

一撃必殺

 お互いのスキルを披露するため、町の南に広がる平原へ向かった。

 ヤマトを仲間に加えるか否か、賛成2反対2。

よって決選プレゼンの運び。


 本人が辞退の意向を示したものの、内定取り消されない。これブラックの特徴です。


「ヤマちょもレッツパーリィ? いいじゃんいいじゃん。一緒にアゲぇ~!」

「いや、アポイントメントの件でミーティング入っちゃってリスケしてほしい」

「あはは! 何喋ってんのか全然分かんねぇ~ウケるっ」


 それはこっちのセリフだが。


「フィオナさんはノリ重視か。俺、キラキラサークルの雰囲気とか眩しくてつらたにえん」

「とりま、クリぴが男連れ込みたいとか激レアじゃん。あーしは二人を応援するぜ」


「誤解を招く言い方はよして。ちょっと気になるだけ。本人のモチベーションは呆れるけど、スキルの有用性と技量は大したものよ。しかもそれを変更したいだなんて勿体ないわ」


 フィオナにうぇーいと絡まれたクリス。

 慣れた手つきで結構雑に引きはがしていく。


「ただのくたびれたおじさんじゃない。その証拠に、目に生気がない。まるで死んだ魚っ」

「フッ」


 俺は思わず噴き出した。

 どすどすと先行していたミューが振り返る。


「何がおかしいのよ?」

「――笑止。社会を舐め切ったロリよ。いいか、幼女ちゃん。本当に死んだ目ってのはなあ――終電逃し三日“目”というものだよチミィ」


 一周回って疲れを感じなくなったら本番。

 全ての希望を置き去り、虚空の果てを俯瞰した刹那。

 死の魔眼、解き放たれんっ!


「日が沈めばおねむな天才魔法少女に、この領域の話は理解できないかぁ~」

「ムカつくムカつくムカつく! この男を直接吹き飛ばして、あたしの実力を理解させてあげるんだからぁーっ!」


 激おこロリータ、杖と呼ぶには先端部分が太くなった木の棒を振りかざし――


「ケンカしないの。ミューは淑女よね。ヤマトさんの思春期、いつ終わりますか?」

「「……はい」」


 美人の年下上司に優しく注意されたい人生だったなあ。

 心なしか、触手もねっとり頭を垂れていく。しまえしまえ。


「ミューっちとヤマちょ、もう仲良しじゃん。あーしも交ぜてもろて」

「犬と猿がキャッキャワワンする程度さ。ところで、フィオナさんはもしやエルフ?」

「そだよん。耳尖ってるっしょ」

「初めて見た。自分、感動した!」


 今までファンタジー住人とは仕事で何度か交流した。

 鍛冶屋のドワーフ。キャットピーポーのメイド喫茶。バードマンの飛行配達。

 エルフは魔法学に精通して、街に住むほとんどの者が研究機関に所属しているらしい。


「あーし、ジメった密室に年中こもりっぱなしとか無理だから! 森の隠れ里で自然を愛でて、琴を奏でて、瞑想に耽った伝統的な生活? あぁぁああああああ、思い出すのもガチの退屈で死んだーっ!」


 フィオナは頭を抱えて、あらぶっていた。


「彼女、一般的なエルフのイメージと違うわね」

「なんかギャルだし」


「家を飛び出したついでに王都観光した結果、文字通りカルチャーショックを受けたみたい」

「片田舎から上京した大学生じゃん。電車が五分で来る! 歩けば近くにコンビニが!」


 うちの地元、バカでかいイオンあったから都会だし。

 あれ、広大な敷地面積を確保できるのは田舎ってマ?


「人間の文化イケてんじゃん。感化されまくり的な!?」


 中世風ナーロッパに平成ギャル爆誕とはこれ如何に?

 転生者が文化を輸入したパターンでヨシ。


「ただのミーハーじゃない。年甲斐もなくはしゃいじゃって」

「ミューっち、冷笑系じゃん。せっかく映えマカロン取り寄せたのに、要らない感じ?」

「食べるに決まってるでしょ! ストロベリーは全部あたしのだからねっ」


 そして、お子様である。

 パーティーメンバーの性格に触れた頃合い。

 俺たちは目的に到着した。


 ピクニック日和な青い空。

 開放感溢れる新緑の息吹。

 レジャーシートを敷いてお弁当タイムかしら、と腹の虫が鳴き始めた。


「ここがコケロックの住処よ」


 俺は、聞き覚えのある名前にピンと来た。

 コケロック。

 岩に寄生した苔が動き出したモンスター。


「人を襲わないから危険度低いけど、倒すのは面倒だったはず」

「正面横切っても日向ぼっこしてるものね。本体の苔を守るため、魔石や鉱石を食べてカラダを大きくしていくのが特徴よ」

「じゃあ倒せば一攫千金じゃん! あーしの金欠に救いの神舞い降りてね!?」


 フィオナのテンションがアゲアゲパーリナイッ。

 気持ちは分かる。

 俺が前パーティーに加入前、今よりもっとビンボーな時。


 ブロンズランクの攻略本に、ドロップアイテムの換金率が高いと載っていた。

 ただし、駆け出し冒険者がコケロックを倒せればタラレバ。


「本当に硬いのよね、防御力が」

「斬撃耐性。打撃耐性。魔法耐性。とにかく頑丈十年保証。前衛アタッカーがこいつで熟練度稼ぎするって聞いたぞ」

「わたしは遠慮します。せっかく磨いてもらった剣を折られたくないもの」


 嫌そうに肩をすくめたクリス。


「クリスは剣の腕は確かだけど、攻撃力が圧倒的に足りないじゃない。相手を一撃粉砕できる火力が今後の課題」

「加減を知らないのがあなたの課題だわ」


 生意気幼女って萌えか? いまいち納得できへん。

 教えてくれ、ロリコン。今答えたな? おまわりさん、こいつです。


「君が一番貧弱に見える。往々にして、魔女っ子なんて体力ないだろ」

「ふんっ、これだから素人は困るの。この素人中年」

「ちゅちゅちゅ中年ちゃうわ~っ」


 思わずキョドっちゃったぜ。

 俺に一瞥をくれたミューが杖のようなもの構える。


「おじさんに魔法で一番大事なものを教えてあげる」


 キラッと変身。

 黒いゴスロリから白いフリフリドレスへ衣装チェンジ。

 さしづめ、マジカル☆ミューの爆誕。

 魔法少女と言えば、確かに変身するよな。


 ミューが何やら呪文を呟くや、空気の流れがビリビリと震えた。

 高濃度のイドがマナへ急速気化していく。

 現象特有のオゾン臭が鼻孔を刺激し、俺は顔をしかめる。


「ヤマちょ、離れるし。ミューっちの詠唱鬼はえ~から」

「お、おう」


 腕を掴まれ、急いでこの場から後退すれば。


「力こそ、パワーッ! 全てを弾き、破き、砕き、不変を崩してみせよ」


 ミューは杖――もといバットを振りかぶった。


「これがあたしのとっておき! 無属性最高威力の攻撃魔法っ! 天誅<ディバイン・パニッシャー>ッ!」


 天に掲げし得物を標的に振り下ろす。

 カキーンッ!

 フルスイングがコケロックに衝突。

 魔法少女を中心として。

 光がキュッと収束したと思えば、土煙を巻き上げるほどの爆発を引き起こした。

 衝撃音と突風に晒され、俺はいとも容易く吹き飛ばされてしまう。


「助けて~」


 情けない声を上げた、成人男性。

 触手がやれやれと肩をすくめるや、緩衝材の役目を果たした。

 どこに肩があるかはさておき。しかしお前、受け身上手いな。柔道何段?

 あとで軟体生物に黒帯を進呈しよう。


 煙が徐々に晴れ、ミューの影が濃くなっていく。

 辺りの地面は隕石が落下したかのように窪んでいた。

 砕け散るコケロックだった岩石。様々な鉱石が散乱している。


「ふん、随分と呆気ないじゃない。この程度の脆さなの? 周辺モンスターで最も面倒な防御力なんて冗談でしょ。退屈させないでちょうだい」


 天才魔女っ子はひどく退屈そうに佇んでいた。


「圧倒的破壊力だった。すげーよ、ミューは……」

「おじさんには刺激が強かったかしら? まあ、初老間近の悲鳴は愉快だったけど」

「一つ、言わせてくれ」


 生意気ロリの挑発に乗らず、俺は相手の目をじっと見つめた。


「な、何よ? 言ってみなさいよ」

「魔法少女じゃねぇぇえええーーっっ!? 完全にホームラン打ってたぞ!」


 魔法のステッキ? 断じて、木製バット。

 魔力を上げて、物理で殴るな。


「はあ? あたしのスキル<マジプリ>は魔法の衣装を着飾るの。ホワイトデコレーションのドレスコーデに変身すると、無属性の上級魔法が撃てる。こんなの常識じゃない」

「魔法少女(物理)やめろ」


 ニチアサの変身ヒロインだって、もっとプリティでキュアってるぞ。


「そういえば、ミューの変身はその姿しか見たことないわね」

「オキニってことじゃん。あーしも推しブランドはリピまくりだし」

「当然、魔法の価値は火力に決まってるじゃない。一撃必殺以外あり得ないっ」

「いや、その理屈はおかしい」


 俺のツッコミを聞いてくれる人など皆無。

 元気出せよと触手が肩を叩くだけ。


「レベルが上がってから、明確な意思を感じる。そのうち喋りそうだな」


 俺の不安をよそに、軟体生物はうねっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ