不労所得
戦闘の傷跡が激しい旧校舎前。
戦いとは、強さなどではなく――最後まで立っていた者が勝者である。
「つまり、俺の勝ち……って、コト!?」
対魔導アーマー戦MVPのミューはもちろん。
サポートに徹したフィオナ、指揮を執ったクリス、坐骨神経よわよわドラゴン。
パーティープラスワンの面々たちが、魔力を使い切って倒れ込んでいた。
「いくら働きたくない俺だって、仕事中床に寝転がらんぜ。これだから、異世界Z世代はもう!しゃきっとしてくださいよ!」
「や、ヤマトさん……体力、いえ、魔力、全部、どうなってるの?」
「ステータス上、数値は一番低いんだろ。けれど、サビ残完徹はそんなチャチなもんじゃねえ。心を削る戦いさ」
才能だけじゃ、掴めないものもある。一生知らない方がいいぞ。
「ヤマちょ、魔力コスパ神ってるじゃん。ぬるっち、ガチ循環器かよ」
「どゆこと?」
「マナコンと同じキャパ的な?」
「あーね」
完全に、理解った。
……触手。どういうこっちゃ。
ぬるぬーるぬーるる。
早い話、マナをろ過してイドを絞り出す。魔力規格を変換できるのじゃ?
まるで、ドリップコーヒー。じっくりぽたぽた抽出中。
ぬーるどぬりゅー!
コールドブリュー派だったん? 今夜、奢ろう。
閑話休題。
「とにかく、制御装置を掌握せよ。ミュー」
「……」
返事がない、安らかな寝顔だった。
「一発、や、二発キメて満足しやがって」
目下、動けるのは俺だけ。
あまりモタモタすれば、新たな魔導アーマーが駆け付けるはずだ。
こちらの戦力は限界手前。仕方がない、電源引っこ抜こう。
「いや、ちょ待てよ」
セルフツッコミ。
「マナコンを強制終了させたら、どうなる? 魔力干ばつが収拾。めでたい」
一方で。
「結局、魔力干潮に戻るな。オフシーズン、実に素晴らしい。しかし、また同じ繰り返し」
長期休暇は大変喜ばしいものの、また同じ目に合う気がしないまでもなし。
どうせ、新たな環境システムは完璧な制御を搭載――ごめ~ん、また暴走しちゃった。
緊急クエスト! 緊急クエスト! 魔力制御に特化した冒険者ヤマトは強制参加……
うぉぉおおおオオオオーーっっ! 働きたくねぇぇえええーっ!
不労意欲が爆発した瞬間、俺はたった一つの冴えたやり手を閃くばかり。
「そうだ! 触手が循環器ならば! マナコンに取り付ければよかろうなのだ!」
魔力変換の親和性。仲良くしてもろ手。
「フィオナさん! 原因はマナの過剰吸収だろ? 触手をフィルター運用すればどう?」
「発想ウケるし。あーしは好きっしょ。案外、調整できるんじゃね?」
「改造よね、それ大丈夫かしら?」
「研究チームも、破壊されるよりマシやろ。先っちょだけ、先っちょだけだから!」
土砂被りの金髪を垂らした美人は、疲労感を滲ませつつ。
「報告だけ済ませたら、今日はもう休みたいわ。あなたが決めていいから、魔力回復お願いできる?」
「任された」
リーダーが了承したので、俺はスキルを振るう。
「マナの大量摂取は公害。それを緩和する機材は、健康グッズと言っても過言にあらず」
ツッコミ不在ゆえ、実質コンセンサス。
「行け、ドローン・テンタクルッ!」
ぬん!
風車のブレード。内部の変換機。制御装置のケーブル。
自律思考により最適化されたパーツを精製。マナコンディショナーを補強していく。
「――システムの再起動を確認。省電力モードに移行します」
「お、安定したか。ふ、ふふっ」
俺は思わず、ニヤリとほくそ笑んだ。
循環器は上手く機能する。
マナコンの魔力循環プロジェクトは継続。
……成功すれば、さらに巨大資本が投じられる。
先んじて重要パーツの特許申請をしておけば、すこぶる儲かっちゃう。
結論――不労所得、である。
「何もない町の観光資源、触手マナコン。あなたの町の魔力枯渇、解決しませんか?」
いやあ、膝を痛めてしまってなあ。
俺の冒険者業、そろそろ引退だぜ。
シルバーランクの冒険者はクソ。
時代はゴールドランクの億り人。
「なにって? 資産運用でFIREしただけだが?」
俺の特許権利料が安すぎるって意味だよな?
俺、また何か回復しちゃいました?
とりあえず、パーティー脱退届したためなくちゃ。願ってる場合じゃあねぇ!
受理されない?
否、触手ヒーラーの医療行為がセクハラそのもの。コンプラ違反で追放やっ。
やはり、前パーティーの判断は間違っていないと思いました。




