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回復がコンプラ違反だと追放された触手ヒーラー、もう働きたくないのに美少女パーティーから魔力をせがまれて全く休めない。  作者: うえき蜂


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俺たちの戦いはこれからだっ!

【エピローグ】

 テーブルの下に隠れたのは、学校の避難訓練以来だろうか?

 え、会社? ブラックが防災に努めると思うかい? 労災だよ!

 酒場まで慌てた駆け足が到着する。


「ヤマト様っ。ヤマト様はいらっしゃいますか!」

「おう、受付のねえちゃん。兄ちゃんはまだ来てねえわい。依頼が長引いてんだろ?」

「そんなはずございません! 彼は常日頃怠惰だと、その是正に協力してほしい旨をクリス様から相談を受けるほどですから」


 おい、ギルドの相談窓口で本当に相談すな。個人情報を保護してくださいよ。


「とにかく、ヤマト様を見かけたらすぐに教えてくださいね。なんとしても、提出書類を作成していただきますから!」


 突風のように去っていった、受付嬢。


「ガハハ! オメーさん、何やらかしやがったんだ?」

「別に。魔力欠乏症を引き起こした諸悪の根源、マナコンディショナーをちょっと改造しただけ。今では立派にクリーンエネルギーを循環する触手マナコン」

「あれかあ! 先週の事故、よくぞ解決したわい。おかげで、今日も働いた後に飲む酒は美味いじゃねえかっ」


 ガサッツは、ゴクゴクとジョッキを傾けていく。

 見解の相違はさておき。


「なんか、俺のスキルと相性良くて丸く収まった」

「結構なことだわい」

「駆け出し冒険者が集まる以外、特色のないトレニーにさ。新たな観光資源が生まれ、町おこし、聖地巡礼なんかも企画されちゃったり進行中らしい」

「益々、結構なことだわい」


 俺も第二の故郷が栄えるのは喜ばしい。

 最期の一手だけ、貢献した自負もある。

 あとは、特許料、技術料、事務手数料などを頂ければ、文句など――


「特許申請却下された! 許せねぇ!」


 ギルド憲章曰く、固有スキルにおける特殊事例の権利は認める。

 しかし、能力による利益独占は優越権の濫用であり……


 マナコンディショナーは特許申請受諾。

 ユニークスキル使っただけの奴は対象外でーす。

 ……は?


「あまつさえ! 俺の触手を世界のため、国のため、街のため、民のために有効利用しようと偉い奴が言ったらしい! ふざけろ! 誰だ、テメー」


 どうせ、お前の組織が中抜きするんだろ? 利権あるところ、強欲な会長現れる。


「他にも、町長殿やら子爵様が俺と会食を希望してるってさ! 袖下に忍ばせたお菓子は何色だ?」


 美味しい食事とウマい話、楽しみだなー。

 私に任せてくれれば、損はさせないよぉ~。ワイロだけ寄こせ。

 ギギギぎぃぃいいイイイ!

 俺のキラキラFIRE計画が瓦解していく音ぉ……さようなら、不労所得。


「あと、研究チーム……一方的に契約書を送ってくるな。強化パーツの仕様を開示せよだあ? ギルドもスポンサーでグルになりやがって、事業拡大で増収狙いが丸見えだ」


 一週間以内に返事をしなかった場合、合意したとみなす。みなすな。

 生前。蒲生大和は、ブラック企業で散々な目に合ってきた。

 そんな俺でさえ、連中のパワハラっぷりには度肝を抜かされるばかり。


 控えめに言って、異世界転生はクソでは?

 チートがなきゃ、辛いリアリティ重視だね。ケッ。


「大変よ、ヤマトさん!」

「もうこれ以上、大変な状況などあらず。我、泰然自若に悟るのみ」


 クリスが血相変えてやって来た。

 餅つけ。もとい落ち着け。

 今更、そんな焦る必要ないだろ。


「ウェーイ! ヤマちょ、マジやばたにえん」

「人生万事、つらたにえん」


 フィオナの楽観主義が羨ましい。

 逆に、不安になっちゃった逆に。


「おじさん、ようやく尻尾を出したわけ? アレは逮捕されて然るべきじゃない」


 ミューはいつも通り、ふんと生意気の権化。


「触手しか出せんが」

「ぬる~」

「って、おい!? ついに喋り出したぞ」


 今まで、脳に直接語りかける系だったのに。

 レベルが上がった弊害ですよ、ハアー。


「こら。勝手に触らないの」


 あいかわらず、触手は女騎士が大好きなようで。

 美人の細い腰へねっとり迫り、ねばねばな粘液をジェルから垂らす。


「ぬんっ」

「ああああああっ!? らめぇ~っ」

「ぬんぬんっ」

「ほ、ほぐされるッ!」


 びくんっ! びくんっ!

 クリスはカラダをのけ反らせるや、イスにへたり込んでしまう。

 ※腰痛が楽になっています。なんだかんだ、本人が拒否しません。


「エロマッサージ伝道師」

「ぬるっち、テクニシャンかよ」

「ところで、俺に知らせたい件とは?」

「外を見なさい。己の愚かさを実感できるじゃない」


 やれやれ、俺は傷心中だぜ。

 たとえどんな光景が映ったところで、無感動のキョムキョムプリン。

 酒場の外に出た。


 ――風車のブレードが、巨大な触手になっていた。

 じゅるんじゅるんとのたうち回る様、いと壮観なり。

 バタンッ。

 ふう、危なかった。幻覚だ。


「真実から目を離すな」


 魔女っ子がドアを開放し、俺を外へ追い出した。


「幻術だっ。外は幻術に支配されている!」


 確かに、マナコンの安定化を図るために触手を放ちましたとも。

 でも、ちゃんと成功したはずだ。失敗なら、利権絡みで気苦労せん。


「ぬる」

「え。マナを吸収しすぎて、巨大化した? もっと頑張れ、真の循環器でしょ」

「ぬる~ん」

「物事には限度があるにょ、常識的に考えて? 喋る触手が言うなっ」


 喋る触手が言うなっ。

 大事な事なので二度言いました。

 大事な事なので二度言いました。

 途方に暮れた俺。


「巨大触手が回転するのは公序良俗に反するじゃない」

「はい」

「セクハラ事案」

「【悲報】触手ヒーラーさん、やっぱりコンプラ違反だった」


 受付嬢が置いていった書類の一枚を押し付けられる。

 風評被害に関する保証金について。


 …………

 ……

 俺が払うん? 不労所得じゃなくて、不良債権やないかーいっ。


「は、ハハッ。こうしちゃいられねえ! みんな、クエスト行こうぜッ!」

「おけまるー」

「っぱ、冒険者業が最高やなって。仲間の存在、心にしみる」

「ヤマトさんはやればできる人でしょ。さぁ、今回は討伐依頼よ」


 すっかり元気になったリーダーに腕を掴まれた。

 どこにいても、何をしても、引く手あまたで困っちゃう。

 触手の手も借りたいとはこのことか。断じて違う!


 ぬるぬる~。

 ユニークスキルの熟練度稼ぎは苦行? 社畜育ちにはよゆーだね。

 俺は必ずや、スキル抽選してやると心に誓った。


「ガハハ! まったく、面白ぇ連中だわい!」


 酒場を覗かずとも、飲み友達の豪快な笑いが響き渡るのであった。


                                       《完》

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