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回復がコンプラ違反だと追放された触手ヒーラー、もう働きたくないのに美少女パーティーから魔力をせがまれて全く休めない。  作者: うえき蜂


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ぬるぬるぬる~ん

「やったぜ! ミュー、お前がナンバーワンだ」


 やったか!? ノンッ、シャラップ!

 現在完了形はフラグの否定形って、英語の先生言ってた! 多分!


「はぁ……ハア……当然、じゃないっ。あたしに破壊できないもの、ないんだからねっ」


 無造作に金属パーツが地面に散らばる中、魔女っ子はお尻を突き出すような格好だった。

 スカートめくれてるぞ。ドロワーズだから恥ずかしくないもん。


「立てるか? リベンジマッチを制したとこ悪いが、本題はそこじゃなくてだな」

「ふん、スクラップはついでなわけ。行きがけの駄賃じゃない」

「鉄くずは業者に買い取ってもらえ。これがお小遣い大作戦。稼げる副業羨ましい」

「どうでもいいから。おじさん、魔力回復させてあげる」


 ミューが疲労を滲ませた表情で座り込む。

 ……徹夜二日目ってところか?

 俺も生前、無茶したもんだぞ。ふ、まだまだ青いな(表情)。


「触手、スルメイカくらい萎びてる。俺、スキル、封印状態」

「あんた、なんで付いてきたわけ? まごうことなく、使えないじゃない……」

「俺が教えてほしいさ。言ったよ! 言ったじゃん! 回復できないヒーラーなんて、置いていくべきだと! 見捨てるうんぬん関係なく、役割ないのだから!」


 中年の逆ギレ?

 ちゃうちゃう。純然たる事実確認。って、誰がオッサンじゃコラァーッ!


「まあ、ヤマト印の例のブツあるんですけどね」

「アイテム係、似合ってるじゃない。バックパッカーにでも転職しなさい」

「ほんと、身軽になりたいもんだ」


 面倒事を投げ捨てた荷物持ち。悪くないね、どうも。

 おのれ、触手。ユニークスキルでなければ、今生の別れを済ませたものを。

 ……ぬ――

 エリクシールを一気飲みした、ミュー。


「不味い。もう一杯」

「CMオファー来そうな渋い顔」

「エリクサーよりマシね。商売してるなら、もっと味の研究してちょうだい」

「お子様フレーバー鋭意開発中」


 子供にエナジードリンクがぶ飲みしてほしくない。

 想定購買層を増やしたい。

 これが二律背反というやつか。ギルティー。

 魔法少女がふうと深呼吸。一気に立ち上がった。


 別に、戦いはまだ終わっていない。

 クリスは、聖騎士らしく防御主体の遅延戦闘。

 フィオナは、魔力切れなのに無駄に有り余った体力で追いかけっこ。

 そして、ドラゴンは腰を痛めて悶えていた。


「……何だ、これは……何だ」

「あたしが聞きたいくらい」

「別の魔導アーマーが増援する前にやっちゃって。早く撤収しよう」


 マナコンの真下。

 ぶっといケーブルで繋がった中央制御装置。

 モニターに難しい単語多数。よくわからんボタンが並んだ鍵盤。

 カタカタカタ。タンターンッ。マックブックエアーか。


「――接続カット。ダメ。こちらの入力、受け付けない。面倒だし、破壊……運が良かったじゃない。あたし、今日はもう打ち止めよ」

「シャイニングキーボードクラッシャーやめろ」

「おじさん、そこのケーブル外しなさい。一旦、強制終了させる」


 電源プラグ引っこ抜くみたいな? 故障しそうで嫌なんだよなあ。

 残業中、節電しろとのたまった上司が延長コードを引っこ抜いた結果、データが     

飛んだ苦い経験がフラッシュバック。はい、追加で二時間サビ残確定な。


「電圧で多少頭パーになるかもね。でも、おじさんはノーリスク」

「確かに。パーが電気ショックで、脳細胞を灰色に……って、ちょ待てよ!」


 否、待ってもらえなかった。

 ジリリリィッ!

 エマージェンシーコールが響いた。


「――不正コード感知。緊急シークエンス発令。魔導アーマー、強制コンバイン開始」


 制御装置から機械音声が流れる。


「ヤマトさん!」

「ミューっち!」


 咄嗟に振り返れば、仲間たちが敵を遠方まで押し込んでくれていた。

 しかし、魔導アーマーはバリアを纏ってこちらへ猪突猛進の構え。


「――排除対象。優先順位変更」


 飛んだ! と思わせるジャンプ。

 分裂した! と思わせるパージ。


「――アップデートレベル2」


 ガチャンガチャンと、オートマタの各部位パーツが組み変わっていく。

 流線形の細身のボディが、重厚感あるメカへシフトチェンジ。


「変形合体っ!? ったく、やればじゃねーかやったーっ!」

「あんた、どっちの味方よ」

「愚問だな、かっこいい方に決まってる」


 やはり、ホビー会社が一枚噛んでいたようである。

 研究チームの中でも、派閥の主導権争いあり。

 結局、スポンサーの意向でビームソードも搭載されたのかしら?


「――脅威判定A。アンチ・ウィザードシステムオールグリーン」


 二機の魔導アーマーが合体したレベル2とやら。

 シンプルに、質量2倍。出力2倍。

 真のガーディアンはホバリングしながら、俺たちの目前で着地した。


「ふん、面白いじゃない! 一匹だけじゃ物足りなかったわけ。あたしの前に立ち塞がるならば、一切合切葬り去るのみよ!」

「よ、悪の敵!」


 とても正義の味方になれないもんで。一抹の苦しまぎれなフォロー。


「……っ」


 先手必勝とばかりに、ミューがバットをフルスイング――

 叶わず、膝をついてしまう。


「もう二発目は無理だって。お前、よくやったじゃん」

「頑張ったなんて人並以下の言い訳……過程を思い出にするなっ」

「この負けず嫌いの天才が!」


 魔導アーマーが間隙を突くようなタックル。

 本当に偶然、俺はミューを掴んだまま直撃を逃れた。

 お互い、対峙する位置が入れ替わった。

 奇しくもそれは、マナコンディショナーを背負った防衛装置に相応しいポジショニング。


「――人の希望を死守セヨ。魔導革新は未来のタメ」

「発展のためには、多少の犠牲やむなしってか。資本主義もそんなもんさ」


 世界のため、人類のためと語る悪役の常套句。


「でも不思議だよな? アニメやゲームで大局的な視点を持てとのたまう権力者、い~っつもその犠牲のうちに入ってないもん。ちゃんと自らの欲望のタメと申告しろ」


 変に善悪に葛藤しないムスカ大佐を見習いたまえ!

 魔導アーマーの両手からマナがあふれ出した。魔力障壁を展開、拡大していく。


「上から押し潰す気か……」


 逡巡。

 何か、手立てあるか? この状況を打開する手法が。

 逆転したいなど、贅沢は言わない。俺は魔女っ子と違って、負け慣れている。

 ――つん、つん。

 逆転の一手でなく、窮地を逃れる手段で構わない。


 ――つん、つん、つん。

 ……ふ、お笑い種だ。自分、チートも無双も俺TUEEEもできない転生者だろ。

 ご都合主義を引き寄せられる手腕、お前に備わっているわけないだろう?

 ――つんつんつんつんっ!


「うるせぇーっ。今、シリアスシーンだろうがぁぁあああアアアアッッ!」


 緊急事態にしつこく執拗に肩を叩いた空気の読めない輩は、はたして――

 ぬ!

 そして、ぬるぬるである。


「触手っ!? テメエ、生きとったんかワレェッ!」


 ぬ~るぬるぬるぬるんぬるん。

 なに。語れば長くなる? 要約せい。


「……レベルアップに伴い、生え変わりの時期だった? 脱皮かよ!」


 心配して損した。

 ぬりゅ~。

 いや、嘘。間違えた。ヒールが使えないのが不便なだけなんだからねっ。


「じゃれ合ってないで、次の手浮かんだの? おじさん、相手の粗探しだけは達者じゃない」

「敏腕クレーマーやめろ」


 魔力分与でロリのお口を黙らせるのが最も安パイ。

 さりとて、先方は目前で回復行為を許してくれないはず。


「いや、合体シークエンスをちゃんとお届けしたぞ? 変身中は攻撃しちゃアカンみたいな、業界暗黙のルールをだな」

「――未知のスキルを感知。ライブラリー照合。不明不明。排除受諾」

「疑わしきは罰せよ? いいさ、いいとも。俺はもちろん抵抗するで? 触手で」


 自己防衛おじさんは激怒した。

 必ずや、かの邪智暴虐の体系を取り除かねばならぬと決意した。

 おじさんには魔導が分からぬ。おじさんは町の冒険者である。


 ぬる。

 生え変りの触手はさらなる器用さを会得し、冒険者カードを勝手に更新せしめた。


<触手>レベル4。

 ・自律稼働――使用者と接続解除しても、独立した判断で能力を発動させられる。

 …………

 ……


 最近、妙に主張が強かった原因はこの前触れだったん?

 ぬーん?

 分からん? まあ、細かいこと気にしたら負けさ。


 指先でくねくねとうねったゲルに、俺は魔力を伝達していく。

 お前らの新技、披露してくださいよ!


「独り歩く触手<ドローン・テンタクル>ッ!」


 マナコンに対抗するかのごとく、十指から自動回復ポッドが射出された。

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