努力する者に打席は回ってくる
「やっこさん、ドラゴンブレスで一掃してくれよ」
「それは無理だな。目下、我は本来の実力を制限されておる。契約者の力量に応じて、使い魔の召喚レベルが決まるのだ」
「じつりき不足、めんごー」
「魔力干ばつの折、竜族を不躾に呼び出すとは大した術者よ。エルフの娘、魔力枯渇で横転しても構わぬぞ」
強いモンスターは召喚コスト高い。カードゲームでもお馴染みだね。
「ギャル、大丈夫そ?」
「あーし、まだいけっから。JKコス、マジ無敵じゃん」
「年甲斐もなくはしゃいじゃって。淑女然とした立ち振る舞いできないわけ?」
「ミューっち、若さゆえのいら立ちかー? ウケるしっ」
まあまあ、お二人さんの間には渓谷より深き溝――
ジェネレーションギャップがあるわけで。
流行のスイーツが一周回って重なるくらいミルフィーユ。
「はい、喧嘩やめて。高難易度ミッションの時間だわ」
腰痛竜がバッサバッサと滞空モード。
遥か上空から下界を見下ろした、俺たち。
「ハハッ! 見ろ! ロボがゴミのようだ!」
「じゃあ、おじさんはゴミ以下じゃない」
「俺の好きなムスカ大佐の名言だぞ」
「知らない。どうせ、そいつもロリコンに決まってる」
それは否定できん。監督の性癖が随所に如実に滲み出てる。
はっはっはっは。どこへ行こうというのだね?
俺も三分間待てない性質なので、リーダーの合図を急かした。
「待って。今、魔導アーマーの動線を確認してるから」
「……校門に一、中庭に二、体育館に二、旧校舎付近に三……」
「校舎内にも潜んでるんじゃない?」
「かもしれない。けど、そちらまで哨戒するかしら?」
リコールさん曰く、最優先コマンドはマナコンの警備。
バグった結果、専守防衛という名の過剰防衛がどこまで作用するか。
「どの道、あの三体は持ち場を離れないじゃない。真面目なお勤めに感心ね」
「こっちをガン見すな。俺の場合、何もしないをして他人に迷惑をかけない高等テク」
「クリぴ、ルーチン見つけたり! 三十秒後、テウス・エクス・マキナッ」
「上出来よ、フィオナの俯瞰力は信頼できる。ドラゴンさん、降下してちょうだい」
デウスはどうした、デウスは。
手薄じゃなくて、居留守してんのかい。
どうしても、細かいボケが気になっちゃう。
癖は死んでも直らない。蒲生大和。享年25であった。
「ランディング、スタンバイッ」
「よかろう……っ! 振り落とされるでないぞッ」
ドラゴンが旋回するや、翼を折り畳んで急降下。
「風圧ぅ~っっ!?」
何かは慎むも、ジェットコースターよろしくヒュンとしたタマ。
――ただの衝突落下。
技と呼べない竜の一撃は地面を穿つ。
旧校舎前エントランスへ、衝撃波を巻き起こした。
魔導アーマーたちが想定外の不意打ちに、吹き飛ばされる。
「ファーストアタックにしては及第点ね。あたしなら、今の一撃で決着ついたじゃない」
「お前がぎゅっと目つぶってたの、しかと見届けた。っぱ、身長と年齢制限は安全管理」
「中年はぎゅっと捻り潰すに限るわけ! まずはあんたを屠ってあげる」
「二人は制御装置の確保! ミュー、操作手順はきちんと覚えてる?」
クリスがドラゴンから飛び降りて、白銀に輝く剣を抜いた。
「当然。興味ないのに、先生からしつこく聞かされたから」
「わたしとフィオナが時間を稼ぐわ。行って!」
「任せろりっ。あーしの魔力、ドラぴに全ベットするっしょ」
ギャルが翼の付け根に触れた。
「別に我が全て掃討してしまっても構わ――ハワァンッ!?」
「ドラぴぃ~? 突然、真っ白に燃え尽きやがって?」
中腰ドラゴン、腰痛再燃につき――戦力外。
ダメだこいつ、早々にリタイアしやがって。
「……うぅ」
こちらも問題発生。
ミューがトカゲの背中から降りるのに躊躇していた。
「高いとこ、ダメだったんか?」
「あたしに、苦手な事、あるわけないじゃない」
「アトラクションは乗り終わったらすぐ捌ける。後がもたついてるぞ」
「ちょっと、どこ触ってんのヘンタイ! ほんと、手慣れた痴漢ねっ」
……ぬ――
俺は、ジタバタと抵抗する魔女っ子を抱え込んだ。
睨まれたが無視。ロリコンなら顔を綻ばせただろう。
地上に舞い降りた魔法少女は俺の足を小突いて。
「おじさんが機械人形に無様を晒す間、あたしがまとめて仕留めてあげる。完璧な作戦よ」
「そもそも、俺が前線をウロチョロする時点で邪魔やん」
「安心なさい、想定内だからっ」
ミューが不敵に笑い、駆け出した。
俺も必死に走った。逃走は自信あるけど、追跡は苦手だ。
マナコンまで一直線。すぐ傍に、制御装置が備えられている。
「――侵入者検知。即刻排除」
魔導アーマーが起き上がると同時、彼我の距離を詰めていく。
両肩部から溢れるマナを推進剤に変え、ジェット音を響かせた。
あまつさえ、両手の掌底からエネルギーを一定量放出し続ける。
その造形はまるで――
「ビームソード二刀流!? かっこいい!」
失礼、つい本音が。
異世界なんでね、光の剣と呼称しよう。
「おじさん、特別に秘密を開示してあげる。感涙に咽びなさい」
「いかに?」
「あたしは自他共に認めるマジカルプリンセス。魔法は天才だし、美少女だし、性格も非の打ちどころがないわけ」
「あ、もう大丈夫でーす」
ミューが自慢話する時、専用BGM流れそう。
「本当は一人の方が強いし、気楽だし、まあクリスたちが危なっかしいからパーティーを組んであげたわけ」
「はよ、まとめてもろて」
……ぬ――
「究極! あたしは! 接近戦の方が得意よっ」
魔法のステッキもとい木製バットを黒く染め上げた。
二刀流の連撃を器用に捌いてみせると、光の剣閃を弾いた。
後で聞いたが、属性相殺というテクらしい。流石、生意気でも天才。
反動で両腕バンザイな魔導アーマー。土手っ腹ががら空きだ。
しかし、奴の真価は圧倒的防御力。あらゆる属性を封じるインチキバリア。
魔力障壁が展開された刹那。
「むしろ、遠くからちまちま魔法放つより、こっちの方が好きじゃない!」
「……それはみんな、知ってるよ」
バットを強く握り締め、大きく振りかぶったミュー。
狙うはホームランだけと強い意志を瞳に燃やして。
「いずれ最強ウィザードへ至る礎になれること、光栄に思うがいい!」
来る。
必殺が。
今までも十分オーバーキルだったのに、特訓にて引き上げられたさらなる火力が。
天才魔法少女は、温存していた体力気力魔力全てを絞り出していく。
光の剣よりも眩いオーラが迸ったバット。
「これがあたしのとっておき――天誅<ディバイン・パニッシャー>ッ!」
最大威力を込めた人の情熱が、無機質な実験成果を打ち破る――っ!
どんな攻撃も防ぐ障壁。
どんな防御も壊す殴打。
トレニーの町、矛盾対決。
決着の瞬間である。




